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司会者挨拶
広瀬 次雄
財団法人アジア人口・開発協会(APDA)
常務理事・事務局長
 
 本日は財団法人アジア人口・開発協会設立20周年公開フォーラム「人口問題を考える−人類生存の条件と人類社会の未来−」にご参集いただきありがとうございました。
 日本は少子高齢化が進み、その少子・高齢化が年金をはじめとする社会保障、さらには日本社会全体に与える影響の大きさが憂慮されています。日本の人口はまもなく減少を始めると予測され、その対策が緊急の課題となっています。しかし、世界の人口は刻一刻と増え続け、私達の地球がどこまでこの人口を支えることができるのか、日々その問題は深刻さを増しています。
 人間社会の基礎であり、根本である人口問題はこれまで非常に矮小化されてとらえられてきたように思います。ダイレクトに言うと、他人のベッドの中の問題にどうして手を突っ込まなければならないのだ、という疑問です。しかしながらこの地球で人類がどのように生きていくかを考えるときに人口問題は最も重要な問題です。
 “地球という惑星で人間という哺乳類が生きていくためにはどうしたらよいのか”という問題から、“どのように食料を生産し、人間を扶養し生きていくのか”、さらには“社会の活力をどう維持するか”、また“この国際社会の中でいかに協力してこの課題を解決していくのか”、さらに“ヒトがこれからどのような価値観をもって生きていかなければならないのか”という問題まで、ありとあらゆる問題が人口と持続可能な開発の中に含まれます。
 これまで人口問題はそれぞれの専門家がそれぞれの立場から扱ってきました。しかしながら、その全体像を議論し考えることはあまりなかったように思います。これら人口にまつわる問題は複雑に関わり合いながら、場合によってはその解決は矛盾し、1つの問題の解決が別の問題をさらに複雑にすることもあります。
 今回の公開フォーラムは、皆様に地球という惑星を考える地球物理学の視野から、ヒトの内面=価値観を考える倫理学という視点まで、人口問題の多様な側面を示すことで、人口問題が持つ意義を改めて考えていただきたいと思って企画いたしました。
 各分野で世界的に名高い権威ある先生方には、今回私どもの趣旨に快く賛同され、ご講演をお引き受けいただきました。この席をお借りして衷心よりありがたくお礼申し上げます。今回のフォーラムでは、プログラムにありますこれだけの内容をご発表いただくためには、あまりにも時間が短過ぎ、大変な冒険であることは十分承知いたしています。
 この点につきましては、先生方にご迷惑をおかけしましたことを深くお詫び申し上げます。
 松井孝典・東京大学教授には基調講演として「地球学の視点からみた−人口問題−」と題し、地球という惑星にとって人口問題がどのような意味を持つのか、についてご講演いただきます。
 
 その後、第1部では「人口問題とは何か−環境、生物学、食料の視点から−人類生存の条件」のセッションを行います。このセッションのモデレーターは本協会理事であり、文化功労者である川野重任・東京大学名誉教授にお務めいただきます。
 このセッションでは;
 「地球の生命圏の視点から」星元紀・慶應義塾大学教授、
 「環境の立場から」原剛・早稲田大学教授、
 「食料および食料生産の基盤としての農業気象などの視点から」内嶋善兵衛・宮崎公立大学学長にご講演をお願いいたしています。
 
 午後、第2部として「人口問題とは何か−医学、社会構造、生命倫理の視点から−人類社会の未来」のセッションを開催いたします。
 このセッションのモデレーターは本協会理事であり、国連人口賞受賞者である黒田俊夫・JOICPF理事長にお務めいただきます。
 このセッションでは;
 「医学・公衆衛生の立場から」村上正孝・茨城産業保健推進センター所長
 「少子・高齢化が社会に与える影響」小川直宏・日本大学人口研究所次長
 「生命倫理の立場から」坂本百大・青山学院大学名誉教授
 に講演をお願いいたしています。
 非常に限られた時間ではありますが、この講演会が人口問題に対する関心を再び呼び起こす契機となることを切に念願いたしています。最後までご参加くださいますようお願い申し上げます。







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