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第4章
HIV/AIDS
―その衝撃と予防
世界的な統計と目標
 国連エイズ共同計画(UNAIDS)は、2000年に数百万以上の人々が新たにHIVに感染したと報告している。
●現在3,610万人がHIV/AIDSに感染している。
●530万の人々が新たに感染した。
●初めてのAIDS発症の報告以来、2,180万人がAIDSにより死亡した。
●2000年のAIDSによる死亡は300万例である12
 
 HIV/AIDSの感染者数は、10年前の予想を50%以上上回っている。これに対応して、HIVに関する新たな目標が、国際人口開発会議(ICPD)の5年毎の再調査により採択された。
●2005年までに、15〜24歳までの若者の少なくとも90%、2010年までに少なくとも95%がHIV/AIDSの予防と管理の手段を利用できるようにする。
●15〜24歳までのHIV感染率を、最も感染率の高い国々で2005年までに25%削減し、2010年までに全世界で25%削減する。
 
若者と女性に対する影響
 その影響が最も深刻になっている国々では、HIV/AIDSは24歳以下の若者の間で最も急速に広がっており、新規感染者の半数がその年齢層の若者である。その多くが35歳までに死亡し、おそらく彼らは自分たちの子供を、父または母のいない子供、あるいはその両方を失った子供としてこの世に残すこととなる。また、HIV陽性の母から生まれる子供は、胎内感染の危険にさらされる。
 世界中で、15〜49歳までの女性1,640万人がHIV/AIDSに感染している。生物学的にみても、文化的にみても、女性は男性よりもHIV/AIDS感染を含む性行為感染症(STD)にかかりやすい。サハラ以南のアフリカでは、女性の感染数が男性の感染数よりも200万人多い。女性はパートナーに安全なセックスについて相談することができず、レイプを含むセックスの強要や虐待を受けやすい。世界的にみて、女性差別が女性のHIV感染のリスクを増大させていると指摘されよう。
 
HIV/AIDSに結びつく暴力
 家庭内暴力・強姦・その他の性的虐待は、人権侵害のみならず、HIV/AIDSの蔓延にも深く関わっている。何百万人もの女性や少女たちは、社会で従属的な地位にあるため、自分たちをHIV/AIDSから守ることが不可能ではないにしろ、困難な状況に陥っている。彼女たちは貞操を守ることもできず、パートナーにコンドームを使うように頼んだり、セックスを拒んだりすることができない。それはパートナーがHIVに感染している疑いがあり、またすでに感染していることを知っている場合でさえも同様である。また経済力がないことから、HIV感染の危険性が高い関係から、逃れることさえできないのである。暴力を受けたり捨てられる恐怖から、彼女たちはボーイフレンドにコンドームの使用を求めたり、貞操について尋ねたりすることができない。感染が知られたり疑われたりした女性は、殺されたり家族から絶縁され、家を追い出されたり解雇されたりすることもある。
 
変革のためのパートナーとしての男性
 パートナーとして男性がエイズ撲滅に関わることは、この病気の蔓延を食い止める助けとなる。「男らしさ」についての文化的な信念や期待が、男性の危険なセックスやドラッグ乱用を助長している。こういった行為により、彼らとそのパートナーへの危険が大幅に高まる。
 
ゲーツ財団からの5,700万ドルの寄付
 アフリカ4カ国で若者をHIV/AIDSから守るための活動が行われているが、この活動がビル&メリンダ・ゲーツ財団から5,700万ドルの寄付を受け、強化された。
 ゲーツ財団は、ボツワナ、ガーナ、ウガンダ、タンザニア連邦共和国で行われている国家的キャンペーンの拡大のための当初5年の活動に対し資金援助を行った。具体的には若者に対しHIV/AIDS予防の教育を行い、自分自身を守ることができるという確信を与えようというものである。
 各国政府は、地域グループや国連人口基金(UNFPA)、米国を中心とした国際的なNGOであるPATH(Program for Appropriate Technology in Health)やPathfinder International等と協力していくつかのプログラムを実施する予定である。このプログラムは今後他の深刻な影響を受けている国々に対するモデルとなり、また国際支援活動のモデルとなるだろう。
 
HIV/AIDS感染者−成人及び子供の推定数(2000年末現在)
 国連エイズ共同計画(UNAIDS)の最新予測によると、2000年におけるHIV/AIDS感染者は世界中で3,610万入である。2000年の新規感染者は530万人、HIV/AlDSによる死亡者数は300万人であった。流行開始以来、HIV/AIDSの累積死亡者数は2,180万人。
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出所:
国連エイズ共同計画(UNAIDS)2000年12月、AIDS Epidemic Update
 
 少年や男性が、より安全なセックスをすることが、現状を変えることになる。男性がHIV/AIDS感染防止のための行動に参加することで、男女双方のためのリプロダクティブ・ヘルス、性行動に関する健康を改善していこうとする長年の努力が補完される。コンドームの使用やSTDの予防と管理により、HIV/AIDSの蔓延速度を低下させることが可能である。さらに男性がセックスに対して責任を担い、女性の権利を尊重するパートナーとしてこれらの活動に参加することによって、家族計画や子供の世話を含むあらゆる側面からリプロダクティブ・ヘルスや性行動に関する健康を進めていくことができる。
 
パートナーシップ
 国連人口基金(UNFPA)は、UNAIDSの共同スポンサーとして、20カ国以上からなる参加団体の議長を務めている。HIV/AIDS感染防止活動は、UNFPA各国支援プログラムを通じて実施される多くの活動の中で重要な位置を占めている。政府・諸機関・NGOなどと協力し、連携を保ちながら調和のとれた対策をとる手助けをしている。
 
HIV/AIDSに対するUNFPAの対策
 HIV/AIDS蔓延の速度を落とし、これ以上の広がりを食い止めるために、包括的なリプロダクティブ・ヘルス・ケアの施策が開発されなければならない。またHIV感染のリスクと感染の結果についてより効果的な啓蒙活動を行わなければならない。強いリーダーシップを発揮してHIV対策を最優先事項としている国々では結果が現れてきており、このようなリーダーシップがすべての国々で発揮されることが望まれる。
 HIV感染防止のためのUNFPAの支援活動は以下の通りである。
 
●リプロダクティブ・ヘルス・サービスの強化。
●男性・女性用コンドームの配布とその使用の奨励。
●より安全なセックスが生命を救うことになるとのメッセージを、女性、男性、若者に向けて発信する。
●STDの予防と対策。
●感染者のカウンセリングをしたり、一般の人が自発的にカウンセリングを受けたり、エイズ検査をより広い範囲で利用できるようにする。
●公共医療を行う人の訓練。
●女性に対する差別・暴力などの女性問題が、HIV/AIDS感染の危険性の増加にいかにつながっているかについての意識を高める。
●HIV感染者の人権の尊重。
●男性に対し、危険なことはせず、より責任を持つように説得する。
●コンドーム使用に関するカップルの意思疎通と話し合いの促進。
●UNAIDSを通じて、ドナー各国政府・NGO・その他のパートナー間の協力関係を強化する。
 
 リプロダクティブ・ヘルス・サービスの提供により、男女のHIV感染を予防することが可能であり、その一方で家族計画を必要とする人の要望にもこたえることができる。多くのプログラムで、HIV/AIDS感染の予防はリプロダクティブ・ヘルスと家族計画サービスに深く関わっている。
 

12 国連エイズ共同計画(UNAIDS)、2000年12月







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