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ILO東京支局がフォーラム
発言者(正面)の意見に聞き入る参加者
 
 ILO本部の国際労働力移動部部長を務めるマロノ・アベラ氏の来日を機に、東京支局(堀内光子駐日代表)が二月五日、「グローバル化の時代における国際労働力移動」と題したフォーラムを国連大学本部ビルで開いた。
 冒頭、アベラ氏は「合法・非合法を問わず、自国以外の地で働く労働者の数は世界全体で六千万人から六千五百万人と推定されている。百ヵ国以上の国が、移民労働者の受入れや送出国として関わり、どの国もかつてない人口圧力を受けている」と説明した。また、アベラ氏は「最近の国際労働問題はこうした傾向が顕著でますます多様な様相を見せてきている。二〇〇四年の総会では移民・外国人労働者の問題を一般討議のテーマとして取り上げることになっている」と強調した。
 これを受ける形で一橋大の小井土彰宏助教授が特別講演として、移民の規制と権利保護などについて語り、企業の生産活動との兼ね合いから見た国際労働移動の現状と課題をさまざまな形で問題提起した。
 続いて厚生労働省外国人雇用対策課長の勝田智明氏、連合総合労働力総合局長の龍井葉二氏、日本経団連雇用・労務管理グループ副長の樋渡智子氏の、いわゆる“政・労・使”の三者からコメントが寄せられた。
 この日、フォーラムには約百人の市民が参加。各発言者との質疑も活発に行われ、国際化の一途をたどる労働力移動の関心の高さをうかがわせた。
 
AFPPD食料安全保障常任委員会会議開催
 
日本からの参加者
国会議員
桜井 新
参議院議員(自民)
AFPPD食料安全保障常任委員会委員長
松岡 利勝
衆議院議員(自民)
金田 英行
衆議院議員(自民)
柏村 武昭
参議院議員(自民)
椎名 一保
参議院議員(自民)
事務局
広瀬 次雄
APDA常務理事・事務局長
楠本 修
APDA事務局長補佐・主任研究員
 
 食料安全保障、水、グローバリゼーションをテーマとしてAFPPDの食料安全保障常任委員会会議が二月七日と八日、タイのバンコクで開かれた。参加国は、バングラデシュ、フィジー、インド、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの九カ国。UNESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会)、FAO(国連食糧農業機関)の国際機関も参加した。
 この会議は、昨年十月に中国・北京で開催されたAFPPD第七回大会の席で設立が決まったもので、本年二月十四日に東京で開催されたWTO閣僚級非公式協議およびWTOの食料貿易に関する各国の意見提出期限が本年三月に迫っていることから開催されたものである。
 AFPPDは一九九四年の国際人口・開発議員会議(ICPPD)以来、増加する人口に食料をどのように確保するかが最も重要な問題であるとの視点から、数多くの訴えかけを行ってきた。これらの活動は国際的にも大きな影響力を発揮し、一九九九年には国連総会決議の中に、“行動計画に述べられている人口関連の目標や政策が、環境や通商などの分野における国際合意(協定)に適切な形で反映される必要がある”と決議された。しかし、残念なことにこれらの国際的な合意はほとんど無視され、食料とは人が生きるために不可欠なものであるという当然の視点もまた失われている。この食料安全保障や人口を無視した考え方は、人間の生死よりも利益追求が優先してしまう社会を作り出してしまうことになる。
 また一度拘束力のある国際的な合意や制度が出来上がれば、それが基準となり、あとあとまで影響力を発揮する。従って、この制度自体を人間が尊厳を持って生活できる社会を作るものとしなければならない。今回の食料安全保障常任委員会会議はその意味で重要性を持っていた。
 また、このような制度構築の重要な時期に開かれただけでなく、食料貿易の自由化が始まってある程度の年月が経ち、その弊害もまたはっきりしてきたことがこの会議の背景としてあげられる。食料貿易の自由化によって途上国の食料輸出国は利益を得ることができると信じられてきた。しかし、ガット=ウルグアイ・ラウンド合意以降、食料貿易が先進国による補助金つき食料輸出によって寡占化される状況を生んだ。
 このような状況の中で、アジア太平洋諸国にはガット=ウルグアイ・ラウンドを引き継いだWTO、特に食料貿易に対する懸念が広がっている。
 今回の会議は、このような背景の中で開かれ、食料を単なる商品として考えるWTOをはじめとする国際的な貿易制度や、それを支持する西欧の論理に対し、各国の政策に責任を持つ立場の国会議員たちから、人口の長期的趨勢、および食料安全保障を確保するという点から深刻な疑問が提出され、熱気溢れる討論が行われた。
 
会議について
 会議は、マレニー・スカヴェジョヴォラキットAFPPD事務総長(タイ)の挨拶で開会した。マレニー事務総長は会議設立の経緯を説明し、桜井新AFPPD食料安全保障委員会委員長が挨拶を行った。
 桜井新・同委員長は、食料は単なる商品ではなく、人が生きるために不可欠なものであり、食料安全保障の点からも人口の視点を十分に考慮する必要がある。またAFPPDの創設者で初代議長を務めた、佐藤隆元農水大臣の“ただ飢えて死ぬためだけに生まれてくる子供があってはならない”という言葉を引用し、AFPPDがその設立の精神に立ち返って、人口問題を解決しながら人間が尊厳を持って持続的にこの地球で生きて行くための活動を行なうべきであると述べた。
 続いてラクシュマン・シン(インド)AFPPD副議長が、AFPPD議長の代理として挨拶を述べ、AFPPD第六回新潟大会での宣言文から“世界を変えるということは途方もないことに思える。しかし、一人一人が変われば世界は変わる”。ここでの一人一人の努力が重要であると述べた。
 
AFPPDステイツメント
食料安全保障常任委員会
二〇〇三年二月八日/タイ、バンコク
 
飢えて死ぬためだけに生まれてくる子供があってはならない
故 佐藤隆 AFPPD初代議長の言葉
 
 人口と開発に関するアジア議員フォーラムは二〇〇三年二月七日と八日バンコクに集い、食料安全保障常任委員会会議を開催し、人口の将来的な増加およびグローバリゼーションの発達のなかで食料安全保障を圧迫する問題について突っ込んだ提言を行なった。
 
はじめに:
 国会議員としての私達の使命は人間の尊厳を守ることのできる社会を構築し、維持することである。この目的を達成するためにAFPPDは二十年以上にわたって人口と開発分野で活動してきた。
 これまでの活動のなかでアジアのみならず世界の国会議員たちとともに数多くの宣言文を採択し、公表してきた。今後も人口増加が不可避的であるという事実を、WTO交渉を始めとする国際条約、合意、協定に明確に反映させるべきである。
 ここに、ICPD検討のための国会議員(IFP)ハーグ宣言、特に“国際貿易ルールは食料安全保障の長期的な視点と完全な一貫性をもたなければならない”(IFPハーグ宣言第十九パラグラフ)、また国連総会文書“行動計画の骨子となる人口関連の目標や政策が適切な形で環境や貿易のような国際合意に反映される必要がある”(国連総会文書A/S−21/5/Add.1、パラグラフ16)、をここに改めて確認する。
 残念なことに現在の国際貿易における議論で人口問題の視点は失われている。人口、食料生産、およびその分配・流通が食料安全保障の基本的な要素である。
 食料は人間の生存にとって不可欠なものである。これが意味するものは食料は単なる商品ではなく、それ以上の、すべての存在にとって非常に重要なものであるということである。
 現在の国際貿易に関する協議は物の余った社会を前提として行なわれているが、長期的な人口の趨勢を考えるとまったく異なったシナリオが浮かんでくる。
 
事実:
*二〇五〇年には世界人口は九十億人を超えると推計されている。現在の消費水準ですら地球環境の再生可能な限界を超えている。
*十三億人が一日一US$以下の収入で生活している。
*八億人の子供が栄養失調状態にある。
*二十億ヘクタール、世界の陸地の一/六が過放牧や不適切な収奪的農業、および急激な都市化によって劣化してきている。
*新規耕地および淡水資源の不足ならびに灌漑農地における塩害の進展などから、現在のような過剰な食料供給を長期間にわたって持続することは不可能である。
 
したがって:
 AFPPD食料安全保障常任委員会会議に集まったアジア太平洋の国会議員はWTO合意を含む国際貿易の考え方に対して、この地域の食料安全保障のための以下の行動をとるよう求める。私達は人口の将来推計は国際社会と国際貿易に対して以下の行動をとるように求めていると確信する。
 
各国政府ならびに国際社会に対して:
1 各国で最低賃金制度を明確にし、施行する:
2 各国雇用を創出するために適切な国内社会政策を実施するよう努力しなければならない。持続可能な食料生産による適切な食料供給システムを維持することで、それが可能なところでは食料自給を維持する:
3 各国の開発計画を、資金の準備およびその実現のためのタイムスケジュールを含めた形で作り、アジア通貨基金(AMF)等の設立を通じて、国際間での相互協力のフレームワーク構築を図る:
4 土地制度の見直しと再組織化、およびバングラデシュのグラミン銀行のような金融制度の見直しと再構築を行なうことで、貧困層が土地、水、そして遺伝資源を利用できるように手助けすることで、貧困層の自立を促進する:
5 各国国民が資源および国家資産を管理できるようにする:
6 各国の開発目標を達成するために各国の協力の下に国際協力を推進する。
 
WTOを含む国際貿易機関に対して:
1 安全で栄養価の高い食料を得ることは基本的人権であるということを認識する。
2 国内の主食生産に関して自給を維持する権利を保持することは欠くべからざるものである。
3 各国が食料安全保障を達成する上で、今後五十年にわたって、人口が大幅に増加しつづけ、農業生産物の生産性の減少、淡水資源の枯渇と汚染、土壌流出およびに環境劣化が食料安全保障の脅威となることを深刻に受け止め、十分な注意を払う。
4 現在の推計に基づけば、世界の人口扶養力は既にその持続可能な限界を超えている現状を理解する。
5 適切な貯蔵(食料銀行のような)や公正な分配システムを準備する。
6 比較優位の原則は食料が過剰である社会でおもに有用な原理であり、(人口に対して)食料が不足した社会では比較優位原則はその価格が高騰することで適用できなくなる。
7 補助金による輸出は食料生産基盤を破壊するのみならず環境にも害を与えるため、様々な形態の補助金による輸出を防止する制度を作る。







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