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人類の未来のために 地球の未来のために
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The Asian Population and Development Association
財団法人 アジア人口・開発協会
 
人口と開発
春・APRIL/2003・No.82
 
扉・スケッチ 天王寺公園のお花見パフォーマンス
杉本雄三・画〈元・関西電力病院長〉
 
 
巻頭言
国際協力―人口・保健医療
国際協力事業国理事 隅田栄亮
 二〇〇一年九月の国連総会でミレニアム開発目標(MDGs)が発表され、国際社会が協調して取り組むべき目標が定められた。MDGsには極度な貧困と飢餓の撲滅、ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上、乳幼児死亡率の削減、妊産婦の健康の改善、HIV/AIDSの蔓延阻止など、一九九四年の国際人口開発会議とその後に続く会議で合意された目標の大部分が含まれている。
 この事は広範にわたる開発の問題を取り上げる際には、多様な人口関連課題を取り込む必要があることを端的に示している。
 人口問題は所謂「クロスカッティングイッシュー(分野横断的課題)」である。その取り組みには保健医療分野にとどまらず経済・社会開発、教育、貧困問題、女性とジェンダーの不平等などセクターの壁を超えた多岐な分野にわたり、総合的・長期的な対応が求められる。我が国は平和を愛する国際国家として、これまでODA(政府開発援助)により人口関連分野の協力において、多年にわたり世界最大の援助国として国際社会に貢献してきた。
 そしてその成果として人口関連指標の改善に大きく寄与したのみならず、多くの友好国をつくり、また国際社会における我が国の発言力の増大に繋がった事実がある。今我が国においては経済・財政苦境に鑑み、ODAの大幅削減を求める声があるが、そうなれば人口分野協力にも影響が及び、これまでの成果が水泡に帰す恐れもなしとしない。
 地球上にはアフガニスタンのように人造り・国造りの途上にある国もある。同国では乳幼児死亡率が高く、厳しい自然界の猿の赤ちゃんとほぼ同じの二百/千人と言われており、また、妊産婦死亡率も千七百/十万人で六十件の出産で一人の女性が死亡していることになる。同じ地球号の乗組員として到底看過しえるものではない。このような状況の下でODAの大幅削減は妥当とは言えず、逆に、グローバル化の中での大幅削減は日本が孤立することとなり、日本の自滅を選ぶことに通じかねないと危倶している。
 人口関連分野の国際協力は、いまや世界一の「健康大国」となった我が国の国際責務であり、その経験を活かして比較優位の中で国際社会に貢献できる数少ないアプローチの一つである。
 私は二十一世紀こそすべての人に優しい世紀であって欲しいと願っているが、世界の平和と安定、そして日本に対する国際社会の信頼はその先に必ず見えてくると信じている。







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