日本財団 図書館


平成十四年度国際人口問題議員懇談会総会開く
 国際人口問題議員懇談会(JPFP)総会が六月二十五日(火)参議院議員会館第四会議室で開かれた。中山太郎会長挨拶を鹿野道彦会長代行が代読し、清水嘉与子事務総長が進行を務めた。
 会長挨拶では、(1)日本の出生率が一・三三になったことで二〇五〇年には人口構造が逆ピラミッドになり、この問題に対する緊急の対策が必要(2)本年十月、北京で開催されるAFPPD大会に向け、日本の国会議員が積極的に関わりを持っていくことが必要(3)十一月二十日〜二十一日にカナダ・オタワで「国際人口開発会議行動計画実施のための二〇〇二年国際国会議員会議」が開催されるが、この会議がICPD行動計画目標を達成するための重要なポイントになるという点が強調された。
 
熱心に審議する人口懇総会風景
 
平成十三年度収支活動報告・平成十四年度活動計画について
 事務局から、平成十三年度収支決算・活動報告が行われ、二〇〇一年五月にニュージーランド・オークランドで開催された「第十七回人口と開発に関するアジア国会議員代表者会議」、八月の韓国訪日議員団、九月にキルギスのビシュケクで開催された「AFPPD CIS地域セミナー」、二〇〇二年一月に実施されたタンザニア・ウガンダ・ケニアのアフリカ三カ国人口・開発事情視察派遣、二〇〇二年三月に東京で開催された「第十八回人口と開発に関するアジア国会議員代表者会議」など、平成十三年度事業活動報告が行われた。
 また、平成十四年度の予算・活動計画として、七月に「ラオス国会議員の訪日・スタディーツアー」、十月のAFPPD大会と中国への日本議員団派遣事業などの計画を報告し、本年五月〜六月にインドネシアのバリで開催された「持続可能な開発に関する世界首脳会合(WSSD)準備会合」についての報告書を配布した。
 
福田官房長官を表敬するインガー・ブリュッゲマン―IPPF事務局長(右から3人目)とスティーブン・シンディング次期IPPF事務局長(右から2人目)
 
狩野厚生労働副大臣を表敬するインガー・ブリュッゲマン(右から3人目)とスティーブン・シンディング次期IPPF事務局長(右から4人目)
 
AFPPD活動報告・活動計画について
 谷津義男AFPPD議長・JPFP幹事長が、四月にニューヨークで開催された「国際人口開発会議行動計画実施のための二〇〇二年国際国会議員会議」運営委員会と本年五月にカザフスタンのアルマティで開催された「第二回AFPPD CIS地域セミナー」の参加報告を行ない、本年十月に中国・北京の北京飯店で開催予定のAFPPD大会について説明を行った。
 最後に、一九九五年九月の就任以来、日本と密接な関係を保ちつつ積極的な活動を世界規模で続けてきたインガー・ブリュッゲマン―PPF事務局長が八月に退任することになり、退任挨拶と後任のスティーブン・シンディング氏の紹介と懇談が行われた。
 
 以下(次頁)にインガー・ブリュッゲマン事務局長の退任の挨拶全文を掲載して、その功績をたたえたい。
 
インガー・ブリュッゲマン―IPPF事務局長の退任挨拶
ODAの削減が貧しい女性の命を直撃
●日本の貢献が頼みの綱●
 IPPF事務局長として七年間その職にありましたが、この八月をもって退職することになりました。いろいろとお世話になりありがとうございました。次期事務局長のスティーブン・シンディング氏は、コロンビア大学の教授で、ロックフェラー財団の人口分野の専門家としても活躍され、アジアやアフリカの国々で数多くの現場を経験してこられた、人口・経済開発問題の専門家です。
 IPPFは長い間にわたって日本の議員の先生方と良き友人関係を築いてまいりました。これまでのご支援に感謝申し上げ、現在のIPPFの資金状況についてこの機会にお願い申し上げたいと思います。
 現在、IPPFの資金状況は大変厳しく困難な状況におかれています。IPPFが直面する資金難の問題は、世界の潮流すなわちODAに逆風が吹いていることに起因します。ブッシュ米大統領の就任後、アメリカ合衆国はIPPFへの拠出を削減しました。それにより長年IPPFが行ってきた、避妊に関する情報やサービスの提供ができなくなり、貧しい人の生命が脅かされています。女性の権利の推進や、法的に許されている医学的に適切な処置のとられた中絶、HIV/AIDSの感染予防等の活動ができなくなってきたのです。
 ヨーロッパでも政治の変化が起こってきてきます。デンマークやオランダはこれまでIPPFを強力に支援してくださいましたが、昨年度はIPPFへの拠出金額が三八%削減となりました。ドイツやフランスも同様の潮流になるでしょう。
 その意味で、日本が苦しい財政・経済状況の中でODAの一〇%削減を決め、一律削減されているにもかかわらず、谷津先生を始めとする国際人口問題議員懇談会の先生方ご尽力で、IPPFへの拠出金削減を一〇%以下に抑えて下さったことに深く感謝いたしております。過去十年にわたって日本はIPPFへのトップドナーであり続けました。二〇〇一年ではIPPF活動資金総額のうち日本の拠出金額が二八%を占めております。
 IPPFに対する日本からの拠出金の使われ方は様々です。しかし共通していえることは、高い質のリプロダクティブ・ヘルスに関するサービスの提供をしているということです。そして女性や若者のHIV/AIDSに関する情報を提供し、予防に関するサービスを提供しています。
 昨今ODAの削減が世界的な潮流となっており、IPPFもその影響を受け大変苦慮していますが、アフガニスタンの再建の問題、アフリカのHIV/AIDSの問題など、私たちが取りくまなければならない問題は増加しつつあります。その意味で困難な状況の中でも人口問題に対する取り組みを支援していただいている日本の貢献に深く感謝しております。
 私たちの目指すのは均衡のとれた人口ですが、昨今は国際的な協議の場で、環境、水や食料安全保障など多数の問題がその議題として討議されている一方、人口問題に関する関心は薄れてきています。
 IPPFが苦しい財政状況にあり課題が山積している中で退職し、事務局長の職をスティーブン・シンディング氏に引き継いで戴くことになり、非常に心苦しく思っておりますが、今後とも何卒よろしくお願いいたします。
 
退任挨拶をするインガー・ブリュッゲマン―IPPF事務局長(左)とスティーブン・シンディング次期IPPF事務局長(右)
 
次期事務局長スティーブン・シンディング氏が指摘
カイロ会議の採択目標がミレニアム・サミットで消える?
 私には大きな挑戦が課されているとつくづくと感じております。
 人口と開発へ対する世界の潮流がとても厳しいものなっております。ICPD行動計画もその実施のための財政・資源が不足しているため、その目標の達成が難しくなってきています。先進国は、カイロで合意された目標のうち、資金面では二分の一以下しか達成していません。国連で開催されたミレニアム・サミットで採択されたミレニアム・ゴールの中に、カイロ会議で国際社会が合意し採択された目標が取り込まれていません。つまり世界人口の趨勢を見れば、再生産年齢人口が歴史上かつてない規模に増加しているにもかかわらず、人口分野にリプロダクティブ・ヘルスやライツに関する目標が外されているのです。
 十一月にカナダのオタワで開催される「国際人口開発会議行動計画実施のための二〇〇二年国際国会議員会議」は人口問題を見直す重要な機会です。
 日本の国会議員の皆様のIPPFへの長年のご理解とご支援に対し深く感謝し、今後とも引き続きよろしくご支援くださいますようお願い申し上げます。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION