日本財団 図書館


人口と開発に関するアジア議員フォーラム
CISおよび極東アジア諸国地域議員会議
ウランバートル宣言
1999年8月3日
モンゴル国、ウランバートル
 
序文:
1. CIS諸国と極東アジア諸国の国会議員が1999年8月1日から3日ウランバートルに集い、CISおよび極東アジア諸国地域AFPPD議員会議で人口と開発問題を討議し、以下の宣言を発表する。
 
2. 国際人口開発会議(ICPD)行動計画の目的と目標達成のために我々がコミットメントすることを再確認する。ICPD評価のための国会議員ハーグ宣言を裏書きし、完全に支持する。人口、環境、食料安全保障および持続可能な開発の間の相互関連の中で取り組まない限り、この地域の人口と開発に横たわる課題を解決することができないことを改めて確認する。
 
3. 私たちの諸国は多くの共通性を持っているが、同時に、様々な面で異なっている。持続可能な開発を達成するためには、すべての国がリプロダクティブ・ヘルス/ライツ、ジェンダー、女性に対する暴力、食料安全保障、環境、思春期の人口、青年および高齢者を含む、人口と開発における長期的展望を、地域レベルで持つことが不可欠である。また各国の事情に合わせて、これらの長期的展望を適用していくことが必要である。
 
4. 私たち、CIS諸国と極東アジア諸国の国会議員は、この地域で人口と開発問題を解決に向けるための長期戦略を開発するよう各国政府に要請し、各国政府のタイムリーな実施を完全に支持する。また、私たちのこのように困難かつ重要な事業を、国際社会が支援するよう要請する。
 
5. この地域の人口と開発に関する状況には非常に大きな差異がある。しかしながら私たちの国々の多くは、近年生じた市場経済への経済移行の問題や経済危機の結果、多くの困難に見舞われている。私たちの国々の多くでは、この大きな変革の中で国際人口開発会議行動計画が実施されている。多くの国々で人口と開発およびリプロダクティブ・ヘルスに関する制度的・法的枠組みはこの状況下で見直され、変化をこうむっている。経済体制の移行にともなう経済的な困難は、質の高いリプロダクティブ・ヘルスケアの利用可能性を増し、その質を改善する上で巨大な障壁となっている。この点からかかる経費を削減し、費用対効果の向上を果たすよう呼びかける。私たちの多くの国々における社会――経済的、政治的移行は、人口問題を開発計画の中に統合する機会でもある。
 
課題:
 それぞれの国の人口状況はそれぞれに異なっており、各国は自国の開発との関連の中で人口問題を解決しなければならない。いくつかの国では、主要な人口問題は出生力を低下させることであるが、その他の国々、出生が既に低下した国々では、死亡率の低減にその努力が向けられている。また、いくつかの国々では移民の問題が重要な課題となっており、この問題に関してはその(問題の性質・現状に関する)より一層の理解の促進と、各国開発戦略の中で検討することが必要である。更にある国々では、出生率が低下しており、高齢化問題解決の重要性が増大してきている。CISおよび極東諸国の経済環境の急速な変化において、適切な人口と開発のバランスを生み出すような長期的視野と戦略を展開することが必要とされている。
 
行動:
 私たちの前には巨大な課題が横たわっているが、同時にそれはこの変革の過程の中でICPDの手法を、社会・経済的、政治システムの改革と変容過程と統合させる好機でもある、と確信している。人口と開発、そして質の高いリプロダクティブ・ヘルスケアの利用可能性の増大と、その質の向上を関連づけるためのより一層の努力を行ない、そしてその努力を奨励する必要がある。私たちは、参加国政府ならびにその他の開発のためのパートナーに対して、リプロダクティブ・ヘルスを含む人口と開発問題を解決に向けるために包括的・長期戦略を開発し実施するために共に働くことを要請する。
 
課題:
 質の高いリプロダクティブ・ヘルス情報、カウンセリングそしてサービスが利用できるようになるためには、(すべての当事者の)一致した努力が必要である。経済移行期および、経済的な困難に見舞われている今日において、社会的に弱い立場にいる人口は、その影響を最も強く受けることが多い。これらのサービスがすべての人々に行き渡るように、注意を払うことが重要である。そうすることで貧困者、マイノリティー、そして思春期の人口を含むすべての男女が自身のリプロダクティブ・ライツを実践することができる。現在の青年は将来を担うものである。我々は、この青年たちに健康的で生産的な生活を送るための手段を与えなければならない。このためには、思春期人口の特別なニーズを確実に満たすことができるように注意を払うことが早急に必要である。多くの国において、リプロダクティブ・ヘルスの質の改善は、高い妊産婦死亡率および乳児死亡率を顕著に削減し、同様に高い妊娠中絶率および性行為感染症をも減少させ、我々国民の生活の質を向上させた。
 
行動:
 私たち国会議員は、質の高いリプロダクティブ・ヘルスサービスを思春期の人口を含むすべての人が平等に利用できるようになるよう促進し、その進展を注視する必要がある。
 
課題:
 この地域における「性行為感染症(STD)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)/後天性免疫不全症候群(AIDS)の急速な蔓延」と「この蔓延が私たちの人口と国々の構造に極めて悪い影響を与える可能性」、そして「その防止が適切にできなかった場合にかかる費用」、に大きな懸念を表明する。私たちの国々の間でその流行の程度は様々に異なっている。しかしながら私たち全員は、将来の性行為感染症(STD)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)/後天性免疫不全症候群(AIDS)蔓延を防ぐために、“今”行動することが決定的に重要であるということに同意する。
 
行動:
 私たち国会議員は、開発のためのすべてのパートナーに対し、すべてのレベルで、これ以上の性行為感染症(STD)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)/後天性免疫不全症候群(AIDS)の蔓延を防ぐための努力を、調和的かつ一致した形で、特に思春期人口や青年に注目して、“今すぐ”行なうよう奨励する。
 
課題:
 経済移行と近年の経済開発はある部分で性(ジェンダー)の不平等を拡大し、または性の平等にかかわる新しい問題を惹起した。教育や労働における機会の平等、女性に対する暴力の排除はこの分野で優先的に扱われるべき問題である。
 
行動:
 私たち国会議員は、ジェンダーの実態に対するより良い理解を促進するとともに、(女性の)完全な(社会)参加を実現するために一致した介入を促進する。そして、開発の利益を女性と男性が平等に利用できるようにする。私たちがその現状と趨勢をモニターすることが必要である。そして各国政府に対しジェンダーの平等を更に促進する法的環境の確立を含む必要な行動をとるよう促す。
 
課題:
 この地域は豊かな天然資源を持っているが、それは大きな人口規模を支える上で十分なものではない、現在しばしば持続不可能な形でこの地域の天然資源が使われている、そしてこの地域の自然環境は特に厳しいものであることを私たちは認識している。開発戦略の中には資源の適切な利用と開発活動が環境に与える影響の分析が含まれることが必要である。この地域の伝統的な食料生産、食料供給システムを維持することが重要であることを認識している。同様に適切な貯蔵と分配システムの準備が重要である。この地域の平和と安定にとって食料安全保障の問題は不可欠の重要な問題であることを強く確信するものである。
 
行動:
 私たち国会議員は、国際社会に対して、国際貿易ルールが人口と食料安全保障の長期的展望と完全な一貫性を持つよう強力に要請する。
 
公約:
 私たち、CIS諸国と極東アジア諸国の国会議員は、これまで論じてきた問題が重要であることを強く確信するものである。そして私たち自身が、草の根レベルで、自身の選挙区で、自国の最高の政治的課題としてこの問題に深くかかわり、これらの事項を擁護する。そしてそのために、すべてのレベルで、国際社会、NGOとそれぞれのコミュニティー自身を含むすべてのパートナーとともに一致協力した努力を行なう。
 
 私たち、CIS諸国と極東アジア諸国の国会議員は、平和と、リプロダクティブ・ライツを含む人権を尊重するものである。(平和を尊重し人権を尊重する)このような環境においてのみ開発を行なうことができる。各国政府に対し、人権尊重と平和を促進するためのすべての国際条約を厳守し、問題を平和的な方法で解決するよう要請する。同時に、私たちの活動はすべての人類に平和と安全保障を提供することを目的とすべきである。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION