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●はじめに
 ゴミをめぐる問題は、日本における地域的なものにとどまらず地球的な規模での環境保全を考えなければならない時代となってきました。今までの大量生産・大量消費時代における古くなったものはどんどん捨てる時代から、ダイオキシン等の環境汚染を考え可能な限り焼却を抑え、廃棄物を分別・減容、使えるものはリサイクルという環境を考慮した循環型社会に移りつつあります。
 廃棄物処理には処理費用の外、人員もそのために割かなければならなくなり、決められたルールに基づいた処理をしなければ、各種法規制にかかり、罰則規定までかかってくることを念頭に入れなければならない時代に入ってきました。ゴミ問題をはじめとする環境関連法規は、体系が入り組んでおり頻繁に法改正と運用見直しが行われているうえ、地方自治体独自の条例等も存在するため、多忙な中小企業経営者がその全貌を把握し適正に対応するには困難な状況にあります。
 このため、社団法人日本中小型造船工業会に「廃棄物対策部会」を設けて原案作成に当たり、数多くの産業廃棄物処理関連法令を概要としてとりまとめ、廃棄物処理に当たっての注意事項を分かり易くハンドブックにとりまとめました。
 このハンドブックが、造船業における廃棄物処理の適正化のために広く活用され、経営基盤強化の一助になることを期待しております。
 最後に、本ハンドブック作成にご理解ご支援を賜った日本財団に厚く感謝の意を表します。
 
社団法人 日本中小型造船工業会
廃棄物対策部会 部会長 大内 博文
 
●第1章 廃棄物の種類と分類
 廃棄物とは、自分も他人も利用できず、有償で売却できないもので、固形に限らず液状のものも含みます。廃棄物には、大きく分けて産業廃棄物と一般廃棄物がありますが、産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、法令で定められた19種類(Annex表1参照)のものをいい、一般廃棄物とは、産業廃棄物以外のゴミで、家庭において個人が発生させるごみなどで、事業所からの紙くずなども該当します。
 また、造船所において一般的に発生する廃棄物ではありませんが、産業廃棄物の中で、爆発性、毒性、感染性など人の健康又は生活環境に被害を生ずるおそれのあるものは特別管理産業廃棄物に分類されます。
 
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法適用外の廃棄物
1. 
放射性物質及びこれによって汚染されたもの
2. 
気体状のもの
3. 
港湾、河川等の浚渫に伴って生じる土砂その他のこれに類するもの
4. 
漁業活動に伴って魚網にかかった水産動植物等であって当該漁業活動を行った現場付近において排出したもの
5. 
土砂及びもっぱら土地造成の目的となる土砂に準ずるもの
産業廃棄物の分類
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産業廃棄物の処理の流れ
 
コラム「産業廃棄物に関する廃棄者(造船所)の責任(マニフェスト制度)」廃棄物の最終処分までの確認義務など
 
 廃棄物処理法で、産業廃棄物の処理の流れを把握するための管理票をマニフェストと呼びます。
 造船事業者(排出事業者)は廃棄物を産業廃棄物運搬業者、廃棄物処理業者にマニフェストを交付し、委託した廃棄物が最終処分まで移動することを常に確認することを義務づける制度をマニフェスト制度といいます。
 わが国では改正廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)り、平成13年4月に、排出事業者が最終処理まで確認する責任が出てきています。
 
気をつけること
 
(1)廃棄物を産業廃棄物運搬業者、廃棄物処理業者に廃棄物処理を委託する場合はマニフェストを交付すること
 
違反(不交付)すると「罰則」、「措置命令」を受ける場合があります。
 
(2)許可を受けていない業者への産業廃棄物処理への委託
 
1年以上の懲役、300万円以下の罰金
 
(3)最終処分まで確認義務を行わない場合→「措置命令」を受けることがあります。
 
(4)マニフェストに虚偽記載を行った場合は→50万円以下の罰金に処されます。
 
(5)廃棄物処理業者・運搬事業者が不法投棄を行い、不適正処理があった場合は
 
原状回復のための経費負担を排出事業者にも求められる場合もあります。
 
(6)交付したマニフェスト・関係帳簿類を保管せずにいた場合(5年間の保管)
 
「罰則」「措置命令」を受けます。
 
※措置命令に違反した場合→5年以下の懲役、1,000万円以下の罰金、場合によれば両方を科されることもあります。
※なお、上記罰則は、直接の行為者を罰するほか、会杜も同内容の罰則が科せられる場合もあります。
 
トラブルに巻き込まれないように
 造船所(産業廃棄物排出者)は、産業廃棄物処理の委託契約を行うにあたり、その処理業者の処理能力、処理できる種類などを把握し、確認すること。
  







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