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4.3 廃棄物巡回破砕システム提案
 産業廃棄物の処理を効率よく行う方法として、近隣の事業所と共同して処理を行うシステムを検討することは価値があると思われる。個々の造船所のみでは、対費用効果が発生しなくとも、複数の事業所でシステムを共用すれば効果が増大する。
 以下に、(株)日立プラント建設ソフトが提案した、造船所で多く発生する廃木材等を破砕機の巡回サービスを利用してペレット状に破砕し減容化を行うシステム案を紹介する。
1. 減容化処理による廃棄物処理フロー
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2. 廃材減容化処理によるメリット
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3. レンタル破砕機の特徴
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4. 破砕機の巡回サービス
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5. 破砕機巡回化によるメリット
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 1.1で触れたとおり、舶用機器メーカーから造船所への製品の納入には現在段ボール、木枠、緩衝材等が使われており、製品を取りだした後のこれら梱包材は廃棄物として処理されているのが現状である。舶用機器メーカーでは、製品への瑕疵を防止するために1回限りの梱包に多くの経費を掛けており、一方造船所では梱包材の廃棄物処理に経費を掛けている訳で、双方にとって不利益であるばかりか、地球資源保護の見地からも改善が望まれるところである。
 近年通い箱については優れた素材、容器が登場するとともに、所謂静脈物流としての回収インフラの整備が進んでいる状況を踏まえ、当会は社団法人日本舶用工業会と共同で梱包問題研究会を開催し、舶用機器の納入に際し「通い箱」の導入を提言し、その有効性を訴え幅広い導入を要請した。今後、通い箱の取り扱い協力や、同種製品メーカー間で共通の通い箱を採用するなど、海事産業ぐるみで通い箱の制度を確立していきたい。
 個別造船所においても、納入機器メーカーに対し制度の導入を働きかけられたい。
 
 地球資源保護の見地から、廃棄物のリユース(再使用)、リデュース(削減)、リサイクル(再資源化)は今後益々重要となる。前述の「通い箱」等は、リユースの一列であるが、ここではリサイクルについて述べる。
 造船業は従来から鋼材のスクラップ等リサイクルに努めてきており、下地は出来ていると言える。今後廃棄物排出量に応じた課徴金制度等の導入に対応するためにも、リサイクルの推進は造船業界全体として検討すべき課題である。本事業では前項の破砕処理を前提にリサイクルのルート確立について検討した。
 第1に、梱包材、輸送パレット等の木材については、前処理として破砕・チップ化することで炭化プラント処理により土質改良材や製鉄原料としての利用が可能となる。ただし、これには安定的に一定量のチップを供給できるかどうかがポイントとなる。また、チップに釘等が混入していた場合は引受先で処理機械破損等のトラブルを引き起こす可能性があるため磁力により選別するなどの対策が必要である。
 第2に、古くなったポリプロピレンロープ(いわゆるPPロープ)については、やはり破砕処理することで火力発電用燃料としての活用が考えられている。この場合、ロープに含まれる塩分が炉を傷める恐れがあるため、雨ざらしにするなどして塩分を除くことが必要となる。いずれも前処理のコスト、リサイクル材ロットの安定供給確保(一定量をまとめる)等を考慮すると、リサイクルのルート確立は容易でないといえる。
 リサイクルの重要性が叫ばれて久しい。しかしながら現実的にはリサイクルの受け皿は殆ど整備されていない。近隣に製紙工場があるため、汚れていない木材は原料として無料で引き取ってもらえるなどの地域的な特殊事例はあるものの普遍的なものではない。
 今後、地域におけるリサイクル事業者へのルートを確保するとともに、地域の造船業が協力して一定量のリサイクル原料を提供する枠組み作り等の対応を図ることが必要であり、その意味からも巡回破砕システムの早期稼働が期待される。
 現状においてリサイクルは新規の生産よりコスト高になる傾向があり、リサイクル技術そのものの高度化が期待される。また、リサイクルが定着してもリサイクル製品の供給が過剰になれば再生システムの維持運営に支障を来すことになる。
 こうした問題の解決は、循環型社会を形成するうえで今後の課題であり、産業界全体で取り組んでいかなければならない。







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