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海外事務所活動レポート
亜州海事情報
ジェトロ・シンガポール・センター船舶部 山暗壽久駐在員
 
1. シンガポール
<STエンジニア、米造船会社を取得>
 シンガポール政府系兵器メーカーのシンガポール・テクノロジーズ(ST)エンジニアリングは、米国の造船会社ホルター・マリンを競売で落札した。落札額は6,600万米ドル(1億1,600万Sドル(シンガポールドル))。
 ホルター・マリンはメキシコ湾など7カ所に造船・修繕施設を有している。STエンジニアリングは今月23日、米子会社ビジョン・テクノロジーズ・キネティクスを通じて応札。落札額は6,600万米ドル(1億1,600万Sドル)だった。落札が承認されれば、ルイジアナ、ミシシッピ両州の沿岸にある7造船・修繕施設を取得する。
 今回の落札には、入札に参加した米造船会社ボリンジャー・シップヤードが異議を申し立てた。同時テロの発生で国家非常事態が宣言されている以上、外国企業はホルター・マリンを買収できないというのがその理由で、ミシシッピー州の破産裁判所が申し立てを審査する。同裁判所は8月末までに判断を下すとみられている。
 ホルター・マリンは、米国で中規模の船舶を造る会社として定評があり、これまで50年間に2,700隻以上の建造実績がある。米軍への兵器納入を目指すSTエンジニアリングは、ホルター・マリンを米国進出の足がかりとするもよう。
《25 Ju1 2002, The Straits Times, The Business Times, Singapore》
<ケッペル、蘭船舶修繕企業を買収>
 ケッペル・コープは、子会社のケッペルフェルズを通じ、オランダの船舶修繕企業ベロルム・ボトレクの株式85%を取得することで合意したと発表した。買収額は1,830万ユーロ(3,200万Sドル)で、北海での事業拡張を目指す。
《18 Jul 2002, The Business Times, Singapore》
<ケッペル・シップヤード、FPSO改造工事を受注>
 ケッペル・シップヤードは、タンカー3隻の浮体式石油生産貯蔵施設(FPSO)への改造工事を3社から契約総額は1億6,000万Sドルで受注した。受注先は、シングル・ブイ・モーリングス(SBM)、プロセーフ・プロダクション、フォーバンガード・サービコス・エナベガカオルダの3社。
 SBMはタンカー「アマゾンイーグル」(30万7,431トン)をFPSOに改造する。来年第2四半期に完工予定で、完成後は赤道ギニア沖に移送される予定。プロセーフのタンカー「グレー・ウォーリアー」(13万2,500トン)もFPSOに今年末までに改造し、ナイジェリア沖に移送される予定。フォー・バンガードのタンカー「フォーレークス」(9万4,225トン)の改造は今年末に完了予定で、豪州西部沖に移送予定。
《10 Jul 2002, The Business Times, Singapore》
<ジュロン・シップヤード、ケーブル敷設船引渡し>
 ジュロン・シップヤードは、海底ケーブル敷設会社ASEANケーブルシップ(ACPL)とシンガポール・テレコム(シングテル)の合弁会社ACPLマリーンに海底ケーブル敷設船「ASEANエクスプローラー」を引き渡した。建造費は6,700万Sドル。同船は、本年9月からフィリピンで始まる光ファイバーケーブル敷設事業に向け、出航する。
 ACPLは東南アジアからインド洋にかけて海底ケーブルを敷設・管理するため、アジアの通信各社による出資で設立された特殊目的会社で、今回敷設船を発注したACPLマリーンに対する出資比率は、ACPL70%、シングテル30%となっている。
《25 Jul 2002, Shipping Times, Singapore》
<ケッペルコープ、純利益1億8,200万Sドル>
 ケッペル・コープの2002年6月期中間決算は、税引き後利益が前年同期比31%増の1億8,200万Sドルであった。造船・オフショア部門が好調であり、通期の目標である15〜20%の増益になるとの予想を示した。
 部門別で最も増益に貢献したのは、造船・オフショア部門で、純利益全体の53%、9,600万Sドルの純利益をあげた。これは、前年同期比24%増、額にして1,800万Sドルの増であった。
《26 Jul 2002, The Business Times, Singapore》
<セムコープ、純利益大幅増益見込み>
 シンガポール第2の造船会社であるセムコープの2002年6月期中間決算は、船舶改造オフショア部門の好調さを反映し、純利益が5,200〜5,900万Sドルに上ると見込まれている。前年同期の純利益は、3,920万Sドル。今後の見通しとして、修繕部門は伸びを期待できないが、船舶改造、オフショア部門は引き続き好調と予測している。
《30 Jul 2002, The Business Times, Singapore》
<韓進海運、PSAとの契約更新>
 港湾公社(PSAコープ)が韓国の韓進海運から10年間の契約更新で合意、来週契約に調印するもよう。
 韓進海運はマレーシア・ジョホール州のタンジュンプルパス港(PTP)と業務移管について話し合いを進めていたため、デンマークのマースク・シーランドや台湾のエバーグリーン・マリン(長栄海運)と同様、PTPに移転するのではとのうわさが広がっていた。
 消息筋によると、PTPは抗えない内容の料金パックを韓進などシンガポール港に積み替え拠点を置く海運会社に提案していたため、PSAはPTP提案を上回るサービス・料金パックを韓進海運に提示したと推測される。契約内容は調印時に発表される。
 PSAは7月1日から1年間、すべての空コンテナの取扱料を50%引き下げるとともに、貨物ターミナル利用の際に発生するすべての費用を10%割り戻している。
《17,18 Jul 2002, The Business Times, Singapore》
 
2. マレーシア
<MISC、インド海運公社への出資計画中止>
 マレーシア国際海運(MISC)は、インドの海運公社シッピング・コープの株式を取得する応札を取りやめたと発表した。
 シッピング・コープはインド最大の海運会社で、輸送量は国内全体の40%を占める。インド政府は同社株の51%を売却し、25億米ドルを調達する計画になっており、MISCは、シッピング・コープヘの出資に関心を持っていたが、最終的には同社の総合的プランに合致しないと判断したとのこと。
《11 Jul 2002, Shipping Times, Singapore》
<海運業界、STCW条約の実施延期を要請>
 国際海事機関(IMO)の条約に基づき、海技認定のない船員を乗船させている船舶が8月1日から拘留されることについて、依然として加盟国相互の認証が進んでいないなどを理由に、マレーシア国内の海運会社から施行の延期を求める声が相次いでいる。
 1995年改正「船員の訓練・資格証明・当直基準条約」(STCW条約)の施行日は本年2月1日であるが、IMOは、海技試験の相互認証作業の遅れに配慮して、非認定船員を乗船させている船舶に対して行われる拘留措置について、6カ月間の猶予期間を与え、警告のみにとどめると加盟各国に対して通知している。
 一方、マレーシア海事局が相互認証を行えるのは、現在のところシンガポール、インドネシア、ブルネイ、ミャンマーの4カ国にとどまっており、その他の国とは合意作業を進めている段階だとのこと。
 海運業界関係者は、国内海運会社は多数の外国人船員を雇用しており、認証済みの4力国の船員より認証を得てない国籍の船員の方が多いことを指摘し、条約違反を盾に船舶の拘留を実施した場合、海運会社だけでなく経済全体に影響を及ぼすと警告している。
《24 Jul 2002, New Straits Times, Malaysia》
<海技資格の相互認証は進んでいる>
 マレーシア海事局は、国際海事機関(IMO)の条約に基づく海技認定を受けていない船員を乗船させている船舶拘留の猶予期間が本年7月で終了することに関して、マレーシアとの相互認証をしている国が16カ国であることを明らかにし、影響が軽微であると強調した。
 既に相互承認を行った国は、シンガポール、インドネシア、ブルネイ、ミャンマー、パキスタン、フィリピン、パナマ、スリランカ、ポーランド、豪州等。中国とも近く相互認証を結ぶ見込みだとして、外国人雇用に頼る海運会社の不安を打ち消した。ただ8月1日より施行される非認定船員の乗船している船舶に対する拘留措置については、国家の信義にかかわる問題だとして、厳格に実施する方針を強調した。
《25 Jul 2002, New Straits Times, Malaysia》
 
3. インドネシア
<タンカー建造入札、イ・中の舌戦活発に>
 石油公社プルタミナが発注するタンカー建造で、落札に自信を見せる国内造船と中国造船の両コンソーシアムの間でけん制合戦が白熱している。7月上旬に約束されている国際入札の結果公表を前に、国のメンツをかけた戦いの様相が濃くなってきた。
 石油公社プルタミナは今年12隻(総額4億米ドル相当)のタンカーを建造する計画で、先月、国際入札を実施。同社イブラヒム船舶局長によると、入札には外国企業十数社を含む39社が参加。このうち国内でも建造可能な3,500〜3万載貨重量トン(DWT)のタンカー受注をめぐり、PALインドネシア、ドック・ダン・プルカパラン・コジャ・バハリ、ドック・ダン・プルカパラン・スラバヤの国営造船3社と国営海運バフテラ・アディグナからなる「国内造船コンソーシアム」と、中国のコンソーシアム「中国造船工業コーポ」(CSIC)の2陣営が火花を散らしている。
 CSICはこのほど国内代理店を通じ、入札結果に不公平な扱いや不透明性があれば国際裁判所への提訴を行うとけん制。他国からのソフトローンを受け国際入札に臨むのは認められないと、コンソーシアムがドイツの金融機関KFW(ドイツ復興金融公庫)と融資を利用して参加したとみられているバフテラ・アディグナを非難した。CSICは、建造費が国際価格の半値程度であること、中国銀行団が7%以下の低利融資を行うことをアピールし、同陣営の入札価格を下回る応札企業はないだろうと述べた。
 一方、国内造船コンソーシアムの1社ドック・ダン・プルカパラン・コジャ・バハリのスヨト副社長(操業担当)は、金融条件での不利を認めた上、価格と品質では十分な競争力があると反発した。なお、アグム運輸相は先に、国内造船コンソーシアムが落札できるよう政府関係機関は共同して後押しをすると示唆している。
《09 Jul 2002, The Daily NNA》
<8造船所がコンソーシアム構成、競争力改善が目的>
 インドネシアの有力造船所8カ所は10日、競争力強化を目的としてコンソーシアムを結成し、国営石油会社プルタミナ向けのタンカー受注に全力を挙げることにした。コンソーシアムは現在、プルタミナから2008年までにタンカー38隻を建造する大型受注について協議している。当初は10〜12隻、4億米ドル相当の受注を目指す。
 コンソーシアムに参加したのは、PALスラバヤ、ドク・スラバヤ、コジャ・バハナ・ジャカルタ、ドゥマス・スラバヤ、INGGIMジャカルタ、ドゥタ・マリナ・インダー、インタン・スクンイット・パレンバン、IKIウジュンパンダンの8造船所。
 今回のコンソーシアム結成は、単独では規模が小さいインドネシアの造船会社が、海外の大手造船会社と競合していくための生き残り策と言える。
《11 Jul 2002, Pananews》
<船舶部品事業、香港への売却難航>
 リニ商工相は、国営海運ジャカルタ・ロイドの造船プロジェクト「チャラカ・ジャヤ」所有の船舶部品10隻分の購入に意欲を示している香港インターナショナル・インフォメーション・フィナンシャル・コンサルタントの提案を拒否した。商工省のヌグラハ金属機械電子産業局長(同プロジェクト代表)が明らかにした。
 同局長によると、商工相は購入した部品を使い中国で7隻、国内で3隻を建造するというコンサルタントの提案に難色を示し、10隻すべての建造が国内で行われなければならないと主張。しかし同局長は、インドネシア側は今後も交渉を継続し、中国・国内ともに5隻ずつ建造するという案で妥協する可能性を示唆している。
 「チャラカ・ジャヤ」は1994年に開始された24隻のコンテナ船建造計画だが、9隻の建造後、経済危機で財政難に陥ったためとん挫。残り15隻分の船舶部品のうち、5隻分については先に国営企業や地方政府への売却・寄贈が決まっている。
《24 Jul 2002, The Daily NNA》







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