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運輪施設整備事業団、政策目的別建造の技術基準を制定
 
 運輸施設整備事業団は平成14年4月、共有建造条件を従来の「船種別建造」から「政策目的別建造」に変更したことに伴い、建造船舶と同事業団の分担割合の上限を改正するとともに、政策目的別建造の技術基準を次のとおり制定した。
 これまでの共有建造制度においては、同事業団の共有比率は一般貨物船や油送船など船種毎に定められていたが、これをモーダルシフトやバリアフリー化などの海運政策別に改めたものである。また、船舶使用料の軽減という方法で行われていたエコシップやバリアフリー化船の建造促進策は、環境対策や少子高齢化対策としてこれら海運政策に盛り込まれることとなった。
○建造船舶と事業団の分担割合の上限
 
【国内旅客船】
海運政策 対象船舶 事業団の分担割合の上限
離島航路の整備に資する船舶 離島航路整備法弟2条第1項に規定する離島航路に就航する船舶 90%
少子高齢化対策に資する船舶 バリアフリー化の高度化・多様化に資する船舶(別に定める基準に適合していると事業団が認めたもの) 80%
(バリアフリー化船) 法令基準に準じてバリアフリー化するもの 70%
環境対策に資する船舶 モーダルシフトの向上に寄与する船舶(別に定める基準に適合していると事業団が認めたもの) 80%
(モーダルシフト船) 長・中距離フェリー・その他モーダルシフトに資すると事業団が認めた船舶 70%
 
【内航船】
海運政策 対象船舶 事業団の分担割合の上限
環境対策に資する船舶 モーダルシフトの向上に寄与する船舶(別に定める基準に適合していると事業団が認めたもの) 80%
(モーダルシフト船) RORO船・自動車専用船・コンテナ船・その他モーダルシフトに資すると事業団が認めた船舶 70%
環境対策に資する船舶 C02排出量が事業団が定める量に比して10%以上下回る船舶 80%
(e−シップ) 2重船体構造(2重船殻・2重底構造)を有する油送船又は特殊タンク船
物流の効率化・高度化に資する船舶 イ.物流の効率化・高度化に資する船舶として以下のいずれかの設備又は構造を有するもの 70%
  貨物積載能力が被代替船に比して10%以上増加する船舶
速力が被代替船に比して10%以上増加する船舶
IT技術を用いた高度管理船舶(別に定める基準に適合していると事業団が認めたもの)
ロ.物流の効率化・高度化に資する船舶として船員の作業省力化又は労働環境の改善を図る以下のいずれかの設備又は構造を有するもの 70%
  荷役・運行に関し高度な航海機器等を導入した船舶(別に定める基準に適合していると事業団が認めたもの)
労働環境改善に資する構造を有するもの(別に定める基準に適合していると事業団が認めたもの)
上記イのいずれかを満たし、かつロのいずれかを満たす船舶 75%
海運の集約・協業化に資する船舶 内航海運業者のうち、協業組合(その組合員を含む。)若しくは合併により設立された法人が建造する船舶(設立・合併が船舶の建造決定と同年度に限る。) 70%
建造船舶の隻数を上回る隻数の船舶を被代替船とする場合
 
○政策目的別建造の技術基準
I. バリアフリー化船関係
i. バリアフリー高度化船基準
1. 総則
 バリアフリー化の高度化・多様化に資する船舶の構造及び設備については、移動円滑化のために必要な旅客施設及び車両等の構造及び設備に関する基準(平成12年11月1日、運輸省、建設省令第10号)(以下「移動円滑化基準」という。)によるほか、本基準の定めるところによる。ただし、一般定期航路事業を営む者が事業の用に供する旅客船について、移動円滑化基準第55条第2項に基づき、地方運輸局長が別段の指定をした場合は、その指定するところによる。
2. 乗降用設備
 移動円滑化基準第42条第2号中「80センチメートル」とあるのは「90センチメートル」と読み替えるものとする。
3. 出入口
 移動円滑化基準第43条第1項第1号中「80センチメートル」とあるのは「90センチメートル」と読み替えるものとする。
4. 客席
 移動円滑化基準第44条におけるいす席は、次に掲げる基準に適合するものとする。
(1)眺望が確保できる席を設けること。
(2)通路側の肘掛けは跳ね上げ式とすること。
(3)バリアフリー客席であることを明示すること。
5. 通路
(1)移動円滑化基準第46条第1項第1号「80センチメートル」とあるのは「90センチメートル」と読み替えるものとする。
(2)移動円滑化基準第46条第1項の通路に戸を設ける場合は、同条第3項第1号にかかわらず、有効幅は90センチメートル以上であること。
(3)移動円滑化基準第46条第2項の通路に戸を設ける場合は、同条第3項第1号にかかわらず、有効幅は120センチメートル以上であること。
(4)移動円滑化基準第46条第2項の通路のスロープ板等の勾配は、1/12以下とすること。
6. 階段
(1)移動円滑化基準第46条第1項及び第2項の通路に設置される階段の蹴上げの高さは16センチメートル以下並びに踏み面の奥行きは30センチメートル以上とすること。
(2)移動円滑化基準第46条第1項及び第2項の通路に設置される階段の手すりは、階段の端部から60センチメートル以上延長されていること。
7. 昇降機
 移動円滑化基準第48条第1項中「エレベーター、エスカレーターその他の昇降機であって車いす利用者その他の高齢者、身体障害者等の円滑な利用に適した構造のもの」を「エレベーター又はエスカレーター」と読み替えるものとする。ただし、総トン数3000トン未満の船舶にあっては、この限りでない。
8. 便所
 移動円滑基準第49条第3項で準用する第12条第2項第1号の便房は、次に掲げる基準に適合するものでなければならない。
(1)直径150センチメートル以上の空間を確保すること。
(2)便座の両側に手すりを設置すること。
(3)水洗装置は、便座に腰かけたまま使用できる位置に設置すること。
(4)通報装置は、便座に腰かけたまま操作のできる位置並びに床に転倒したときに操作できる位置に設置すること。
(5)手を洗うための水洗器具は、光センサー、押しボタン又はレバー等により容易に操作ができること。
9. 食堂
(1)移動円滑化基準第50条第1号中「80センチメートル」とあるのは「120センチメートル」と読み替えるものとする。
(2)移動円滑化基準第50条第4号により設置するテーブルは、次に掲げる基準に適合すること。
(3)テーブルの下に高さ65センチメートル以上、有効奥行45センチメートル以上の空間が確保されること。
(4)テーブルの上面は床面から70センチメートル程度であること。
10. 遊歩甲板
(1)移動円滑化基準第51条第1号及び第3号イ中「80センチメートル」とあるのは「90センチメートル」と読み替えるものとする。
(2)移動円滑化基準第51条の遊歩甲板のスロープ板の勾配は、1/12以下とすること。
11. 基準適合客席、車いすスペース、昇降機、船内旅客用設備及び非常口の配置の案内
(1)移動円滑化基準第54条第2項の規定により設けられる案内設備は、触知図案内板とすること。
(2)身体障害者等の利用に対する配慮がなされている主要な設備には、国際シンボルマーク等を表示すること。
12. 適用
 本基準は、移動円滑化基準に適合する旅客船の隻数が海上運送法による一般定期航路運送事業の用に供する旅客船の隻数の50%を下回る間に限り適用する。
 
II. 環境対策船関係
i. 二酸化炭素低減化船基準
1. 総則
(1)二酸化炭素低減化船とは、船舶の設計が本基準に適合するものをいう。
(2)航行により排出される二酸化炭素の量は、次式により算出された量の燃料が燃焼した場合に発生する二酸化炭素の量と比較するものとする。
(1)搭載される主機の連続最大出力が5,000KW以下の場合
331.65X0.930510-3(kg/時間)
X:建造船に搭載される主機の連続最大出力(KW)
(2)搭載される主機の連続最大出力が5,000KWを越える場合
198.01X0.990210-3(kg/時間)
X:建造船に搭載される主機の連続最大出力(KW)
2. 二酸化炭素低減船の要件
 以下の(1)〜(4)の各低減率(%)を加算した合計が10%以上であること。
(1)主機関燃料消費率(g/KW・時間)の低減率
(1)5,000KW以下の機関:
{1−建造船連続最大出力燃料消費率÷(331.65X-0.0695)}×100
X:建造船の連続最大出力(KW)
(2)5,000KWを超える機関:
{1−建造船連続最大出力燃料消費率÷(198.01X-0.0098)}×100
X:建造船の連続最大出力(KW)
(3)上記(1)(2)によらない場合:事業団が認める低減率
(2)推進効率軽減設備
 次の設備等を設置した場合は、それぞれ次の低減率とする。(ただし、(1)と(2)は加算しない。)
(1)推進効率向上型のプロペラ(ボスキャップフィン等):3%
(2)大直径プロペラ:3%
(3)その他(低抵抗船型等):事業団が認める低減率
(3)運行改善設備
 次の設備を1以上設置した場合、低減率を2%とする。
(1)サイドスラスタ
(2)特殊舵
(3)可変ピッチプロペラ装置
(4)その他:事業団が認める設備
(4)廃熱等回収設備
 主機関の廃熱等(排気ガス等)の再利用機器設備による低減率は、設備機器の回収出力(軸発電装置は最大出力の20%、その他は100%)と主機関の連続最大出力(100%)との比により算出する。
(1)排気ガスエコノマイザ(ただし、算出した低減率が5.0%を超える場合は船内の必要熱量を勘案して事業団の認める低減率とする。)
(2)軸発電機装置
(3)冷却清水利用
(4)その他:事業団が認める低減率
ii. 海洋汚染防止対策船基準
1. 総則
 海洋汚染防止対策船とは、貨物槽の構造が本基準に適合する油送船並びに有害液体物質を運搬する特殊タンク船をいう。
2. 貨物槽の構造基準
(1)油送船
(1)載貨重量トン数600トン未満のタンカーは、海洋汚染防止設備及び油濁防止緊急措置手引書に関する技術上の基準を定める省令(以下「技術基準省令」という)第17条第5号及び第7号による。
(2)載貨重量トン数600トン以上のタンカーは、技術基準省令第17条第5号から第8号まで及び第11号による。
(2)特殊タンク船
(1)タイプ1船(危険物船舶運送及び貯蔵規則(以下「危規則」という)第308条第1号に規定されているもの)及びタイプ1G船(危規則第241条第1号に規定されているもの)は、技術基準省令第32条第1号及び第2号による。
(2)タイプ2船(危規則第308条第2号に規定されているもの)及びタイプ2G船(危規則第241条第2号に規定されているもの)は、技術基準第32条第1号(イを除く)及び第2号による。
(3)タイプ3船(危規則第308条第3号に規定されているもの)及びタイプ3G船(危規則第241条第3号に規定されているもの)は技術基準第32条第1号(イ、ロを除く)及び第2号による。







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