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第1章 わが国中小型造船業における雇用流動化状況
(1)中小造船業従事者の推移
 我が国中小型造船所の従事者数は漸減傾向にあるが、比較的規模の大きな造船所では協力工が増加していて、あわせると全従事者数は漸増している。特筆すべきことは、図1.1〜図1.3でわかるように、造船所の構内従事者に占める割合では協力工の比率が著しくあがっていることである。後述するように、艤装関係作業の外注率が上がっていることを考えると、造船の全従事者にしめる造船会社本工比率は、年々低下し、今や20%を割っているのは確実である。
 造船業の大きな特徴の一つに、職種、時期により必要人員が大きく変動することがある。このため、固定常傭社員を最小限に抑えて非社員(協力工)に依存する施策が経営の重要施策となりつつある。確かに、「必要なとき」に、「必要な職種」を、「必要な期間」だけ採用できれば、経営の安定に寄与しよう。この施策が一般化した結果、協力工の比率が増大しつつある(図1.1〜図1.3およびH13年度報告書参照)。
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図1.1 1社あたり従事者数の推移(普通会員)
 
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図1.2 1社あたり従事者数の推移(賛助会員)
 
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図1.3 本工比率の推移
 
(2)職種別人員
 新造船・修繕船別、職種別に人員、本工比率をみると表1.1、表1.2のとおりである((社)日本中小型造船工業会 H13年12月調べ)。新造船、修繕船別に特徴を述べると、
(1)新造船
・ 本工比率が50%を超える職種は、現図、ショットブラスト、NC切断、位置決め、機関仕上げ、船具、クレーン運転、検査、倉庫、治工具整備、動力・保全、安全衛生である。
 逆に本工比率が30%を割っている職種は、小組立溶接、大組立(鉄工、溶接)、ハツリ・ガウジング、船台取付(鉄工)、歪取、切断(外業)、外業溶接、鉄艤品製作、塗装、配管取付、木艤装、製缶、電装、掃除、足場である。
・ 特に、塗装、木艤装、掃除は10%を割っていて、完全に協力工依存である。
・ 総じて、直接作業は協力工に依存し、本工はクレーン運転や動力・保全など間接作業が中心になっている。
・ なお、鉄艤装品や管加工など艤装品製作の加工外注化が進みつつあるので、艤装品製作関連職種の本工比率は、今後も低下していくものと思われる。
(2)修繕船
・ 本工比率が50%を超える職種は、現図、圧力テスト・給水、甲板仕上げ、船具、クレーン運転、船渠、安全・保全と、一部を除き新造船同様、間接作業が中心になりつつある。
・ 逆に本工比率が10%を割っている職種は、塗装、保温・防熱、左官、足場で、いずれも陸上と共通する職種である。
 
表1.1 新造船職種別人員(36社)
職種区分 本工 協力工 本工比率
現図 89 82 52%
ショットブラスト 19 15 56%
マーキング 30 55 35%
NC切断 113 40 74%
ガス切断(内業) 46 75 38%
鉄機・プレス 37 42 47%
撓鉄 62 105 37%
小組立 105 275 28%
小組立溶接 51 313 14%
配材 39 57 41%
大組立 155 480 24%
大組立溶接 89 592 13%
板継ぎ溶接 46 62 43%
ハツリ・ガウジング 9 94 9%
船台木工 22 45 33%
位置決め 82 49 63%
船台取付 81 205 28%
歪取り 16 61 21%
ガス切断(外業) 22 88 20%
電気溶接(外業) 129 462 22%
鉄艤装品製作 56 158 26%
鉄艤装品取付 133 207 39%
甲板仕上げ 30 51 37%
塗装 23 1151 2%
配管取付 185 634 23%
木艤装 25 271 8%
機関仕上げ 195 191 51%
製缶 24 87 22%
機械加工 23 35 40%
電気艤装 70 284 20%
船具 19 16 54%
掃除 2 73 3%
クレーン運転 174 95 65%
運搬 48 105 31%
足場 34 162 17%
検査 58 32 64%
倉庫 66 13 84%
治工具整備 10 4 71%
動力・保全 45 31 59%
安全衛生 29 13 69%
合 計 2491 6810 27%
 
表1.2 修繕船職種別人員(8社)
職種区分 本工 協力工 本工比率
現図 7 6 54%
鉄工 93 153 38%
マーキング 5 6 45%
ガス切断 7 40 15%
曲げ加工 3 11 21%
電気溶接 23 62 27%
塗装 10 228 4%
圧カテスト・給水 9 2 82%
甲板仕上げ 14 8 64%
機関仕上げ 156 317 33%
機械加工 17 26 40%
配管(銅工) 31 130 19%
木工 25 75 25%
保温・防熱 0 19 0%
左官 1 9 10%
船具 22 7 76%
電気 21 48 30%
掃除 14 112 11%
クレーン運転 44 9 83%
運搬 17 38 31%
足場 6 55 10%
船渠 86 49 64%
安全・保全 22 11 67%
合 計 633 1421 31%
 
 図1.4、図1.5は、新造船、修繕船の本工、協力工人員をそれぞれ職種別に図示したものである。
 
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図1.4 職種別、本工・協力工別人員(新造船)
 
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図1.5 職種別、本工・協力工別人員(修繕船)







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