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1.4 船舶における損傷
 船体構造に生ずる損傷には、凹損、座屈(肋骨、桁板、防撓材の倒れ)、亀裂、部材の切断、船体の切断など種々の程度がある。その原因には衝突、座礁、荒天時の高速航行によるスラミングなどによるものが多い。しかし普通の運用によって生ずる損傷については、材料、構造設計、工作、防食対策のいずれかに悪いところがあり、その原因をつきとめなければならない。
 凹損というのは、船首船底の平坦に近い部分が波の衝撃によって凹むことをいい、主機馬力の大きい船が荒天のときに空荷に近い状態で船尾トリムで高速航行したときに起こりやすい。外板が助板と桁板の間で仕切られたその間で凹むものから、大きく隔壁間が凹み、助板、桁板が横倒れしてしまったものまである。構造設計上の対策としては、外板を厚めにし、実体助板の数を増し、側桁板、外板縦防撓材の増設をする。喫水が深く、船首が波に突込むような状況下では逆に青波衝撃といって水の塊りが船首楼、甲板、上甲板前部に落下し、甲板の陥没、倉口蓋の破損、船橋楼前壁の窓の破損、積荷のコンテナの破損などを起すことがある。
 船首の側外板が波にたたかれたり、岸壁との接触によって凹み、肋骨が横倒れすることがある。肋骨はなるべく平鋼を避け、球平形鋼、逆山形鋼を利用する方が横倒れは少なく、平鋼では深さに比べて厚さの薄いものは避けた方がよい。
 肋骨、上甲板、外板、内底板などの肘板取合い部分、縦横部材の交叉部、機関室口、倉口その他の開口の四隅など構造の不連続箇所は応力の集中があり、ぜい性破壊の発生点となったり、疲れ亀裂の入ることがある。ここに溶接の不良個所があると危険である。ぜい性破壊は瞬時にして船が真二つに切断することがある危険なもので、全溶接船で材料、設計、工作の不良なものに起こっている。溶接構造用のじん性の大なる鋼材を使用するとか、開口部の四隅に丸味をつけたり補強したり、交叉部材の端末の拘束をゆるくしたり(フソトトーという)、リベットシームを設けるとか、溶接部の検査を厳重にするとかの対策が必要である。
 疲れによる亀裂は局部的に応力集中の大きな部分に生じ、検査の際に発見補修されることが多い。しかし、ただ溶接で亀裂を肉盛りするだけでは根本的な解決とはならない。その附近の構造を検討し、不連続部の応力集中を緩和できるよう、ソフトトーの採用、丸みの採用、二重張りで、厚くする。スチフナを入れて応力を散らす、などの対策を必要とする。疲れ亀裂の発生と対策の一例を第1.7図に示す。
 (イ)は肋骨肘板の下端と内底板の取り合い部に発生したもので、(1)の立て防撓材により応力集中を逃がす。
 (ロ)は船底縦通材を通すために助板に明けた切欠きの隅部に発生するもので、(2)の立て防撓材により応力集中を逃がす。(ハ)は肋骨のウエブと肘板の接続部に発生するもので、(3)の水平防撓材により応力集中を逃がす。いずれも部材不連続部の応力集中を追加の部材を補うことにより連続構造とし、疲れ亀裂を防止するものである。
 
第1.7図 疲れ亀裂とその対策







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