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アルミニウム合金製船殻工作標準LWS W 8101
付録2 アルミニウム合金材料の種類と性質 外
II 材料
1. アルミニウム合金の種類と記号
1.1 アルミニウム合金の種類
 アルミニウム合金は製造方法によって、板、形材、管、棒、線、鍛造品などの「展伸材」と、金型、砂型鋳物及びダイカストなどの「鋳物」がある。展伸材と鋳物について合金の種類を分類すると付録2表1のようになる。それぞれ主要添加元素(合金系)によって合金の性質が異なり、非熱処理型合金と熱処理型合金に分けられる。
 JISは付録2表2に示すように製品形状別に規定されており、展伸材約80種、鋳物・ダイカスト27種類が規定されている。
 
付録2表1 アルミニウム合金の区分
区分 合金系 合金呼称(2) 代表的合金
展伸材 非熱処理型 純アルミニウム 1××× 1050,1100,1200
Al-Mn 3××× 3003,3203
Al-Si 4××× 4032
Al-Mg 5××× 5052,5083,5086
熱処理型 Al-Cu-Mg 2××× 2014,2017,2024
Al-Mg-Si 6××× 6061,6063,6N01
Al-Zn-Mg 7××× 7003,7075,7N01
鋳物材 非熱処理型 Al-Si AC×× AC3A
Al-Mg AC7A
熱処理型 Al-Cu AC1A,AC1B
Al-Si-Cu AC2B,AC4B
Al-Si-Mg AC4C,AC4CH
Al-Si-Cu-Mg AC4D,AC8A,AC9A
注:
(1)アルミニウム合金ダイカスト(ADCx)は省略。
(2)展伸材は4桁の数字で示す。
 
付録2表2 アルミニウム及びアルミニウム合金の主なJIS
規格名称 記号
JIS H 4000 アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条 A××××P,PC,PS
JIS H 4040 アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線 A××××BE,BES,BD,BDS,W,WS
JIS H 4080 アルミニウム及びアルミニウム合金継目無管 A××××TE,TES,TD,TDS
JIS H 4090 アルミニウム及びアルミニウム合金溶接管 A××××TW,TWS,TWA,BA××TW,TWS
JIS H 4100 アルミニウム及びアルミニウム合金押出形材 A××××S,SS
JIS H 4140 アルミニウム及びアルミニウム合金鍛造品 A××××FD,FH
JIS H 5202 アルミニウム合金鋳物 AC
JIS H 5302 アルミニウム合金ダイカスト ADC
JIS Z 3232 アルミニウム及びアルミニウム合金溶接俸並びにワイヤ A××××−BY,−WY
 
1.2 アルミニウム合金の記号
a)展伸材
 アルミニウム合金とその種類を示すための記号がJISに規定されている。例えば、A5083P−○と表示するが、次のように合金の種類・形状・調質を表している。
 
 この表記法について説明すると、まず、頭のAはアルミニウム材料であることを示し、次に読く4桁の合金番号は次のとおりである。
(1):1から9までの数字で示され、それぞれの数字は以下のような合金系であることを示す。
1・・・99.00%以上の純度の純アルミニウム
2・・・Al−Cu系合金
3・・・Al−Mn系合金
4・・・Al−Si系合金
5・・・Al−Mg系合金
6・・・Al−Mg−Si系合金
7・・・Al−Zn−Mg系合金
8・・・上記以外の系統の合金
9・・・予備
(2):0から9までの数字とNで表され,純アルミニウムの場合、0は特別の規定がないことを示し、1から9は1種類又はそれ以上の不純物について規制があることを示している。合金の場合、0は基本合金を表し、1〜9までは合金の改良形によって用いる。日本独自の合金あるいは国際登録合金以外の規格による合金についてはNとする。
(3)(4):純アルミニウムはアルミニウムの鈍度の小数点以下2桁、合金については旧アルコアの呼び方を原則としてつける。日本独自の合金については合金系列別、制定順に01から99までの番号をつける。
例:
1100
(1)(2)(3)(4)
(1) 純アルミニウム
(2) 規制する不純物がある
(3)(4) 純度99.00%以上
5052
(1)(2)(3)(4)
(1) Al−Mg系合金
(2) 基本合金
(3)(4) 旧アルコア記号
6N01
(1)(2)(3)(4)
(1) Al−Mg−Si系合金
(2) 日本独自の合金
(3)(4) 制定の順位
 
b)鋳物
 アルミニウム合金鋳物はAC1A,AC2B,AC4C,AC7A等の記号で表される。頭のAはアルミニウム材料であることを表し、次のCは鋳物製品であることを示している。また、次の数字は1種,2種,・・・と添加元素による種別で、その後のA,B,Cなどの記号は同一合金系の中で添加元素量が異なることを表している。
c)ダイカスト
 アルミニウム合金ダイカストはADC1,ADC10等の記号で表され、アルミニウム材料のダイカストであることを示すADCと、それに続く合金の種類を区分する数字から構成される。
1.3調質とその記号
 アルミニウム合金の性質は、冷間加工や焼入れ・焼戻しなどの操作をすることによって、目的にあったものに調整することができる。その操作を調質といい、調質の種類を質別という。
 材料は金属学的に分類すると熱処理できない合金とできる合金があり、前者を非熱処理型合金、後者を熱処理型合金と称する。また、非熱処理型合金は加工硬化合金とも言われる。
 非熱処理型合金では、付録2図1に示すように圧延などの冷間加工を加えると、引張強さ(耐力)が増加して伸びは減少する。また、加工硬化した合金は温度を加えると軟化し、引張強さが低下して伸びは増加する。一方、熱処理型合金では,固溶限度以上の合金成分を与えて、高温でこの成分を母材に固溶させたのちに、急冷して合金成分を過飽和にする。この過飽和の状態は、常温や150〜200℃の低い温度に保持すると、時間の経過につれて合金成分を含む析出物が現れて硬化する。
 
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付録2図1 冷間加工と焼鈍による機械的性質の変化
 
 このように非熱処理型・熱処理型合金の性質を利用して、希望する引張強さ(耐力)、伸びなどの特性が得られる。この調質を区分するため質別記号が決められており、その詳細はJIS H 0001に規定されている。ここでは碁本的な質別記号について簡単に説明する。
a)基本記号
 基本となる質別記号は以下の4種である。
F:加工硬化又は熟処理について特に調質の指定がなく製造されたもの.例:押出のまま,鋳放しのままなど。
O:焼なましによって完全に再結晶して最も軟らかい状態になったもの。
H:加工硬化によって強さを増加したもの。
T:熱処理によってF,O,H以外の安定な質別にしたもの。
b)非熱処理型合金
 非熱処理型合金の調質は、例えばH32のように基本記号のHとその後にxyの二つの数字が続く。
Hの後に続くxは1から3の数字で麦される。
H1:加工硬化だけ行って所定の機械的性質を得たもの。
H2:加工硬化させたのちに,適度の熱処理によって所定の強さを得たもの。同一の強ささのH1タイプより若干伸びがある。
H3:加工硬化したのちに、低温加熱によって安定化処理を行ったもの。このH3タィプは常温で徐々に軟化するMgを含む合金に適用される。
 Hxに続くyは1から9までの数字で表されるが、十分に冷間加工されたHx8を高質材、O材を軟質材の基準として、その間に1から7までの段階を設ける。また、Hx8よりさらに加工の程度が大きいものをHx9としている。
 なお,H112という調質記号があるが、展伸材において積極的に加工硬化を加えずに、製造されたままの状態で機械的性質が保証されたものであることを示している。
c)熱処理合金
 熱処理型合金には基本記号Tと、それに読く基本的な熱処理を示す1から10までの細分記号としての数字がTxと表示される。この意味を付録2表3に示す。なお、さらにTxyのようにxの後に1文字から3文字の数字yをつけて特定の処理や機械的性質を表す記号もあるが、ここでは省略する。
1.4 形状記号
 アルミニウム材料は板、形、棒などさまざまな形状で使用される。その形状に対して付録2表4のように記号がつけられている。この記号は主として形状を表す英語の頭の一文字がつけられている。例えば、板のPはplate、押出形材のSはshapeの頭文字である。
 
付録2表3 Txの細分記号及びその意味
細分記号 意味
T1 高温加工から冷却後に自然時効させたもの
T2 高温加工から冷却後に冷間加工を行い、さらに自然時効させたもの
T3 溶体化処理後に冷間加工を行い、さらに自然時効させたもの
T4 液体化処理後に自然時効させたもの
T5 高温加工から冷却後に人工時効硬化処理したもの
T6 溶体化処理後に人工時劫硬化処理したもの
T7 溶体化処理後に安定化処理したもの
T8 溶体化処理後に冷間加工を行い、さらに人工時効硬化処理したもの
T9 溶体化処理後に人工時効硬化処理を行い、さらに冷間加工したもの
T10 高温加工から冷却後に冷問加工を行い、さらに人工時効硬化処理したもの
 
付録2表4 製品形状製造条件を示す主なJIS記号
記号 意味 記号 意味
P 板、条、円板 TW 溶接管
PC 合せ板 TWA アーク溶接管
H はく S 押出形材
BE 押出棒 FD 型打鍛造品
BD 引抜棒 FH 自由鍛造品
W 引抜線 PB 圧延板導体
TE 押出継目無管 SB 押出板導体
TD 引抜継目無管 TB 管導体
 
 形材のSはshapeの頭文字である。







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