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2.1.14 形鋼フレームとスロットの切断
 形鋼特有の切断に[図2.1.30 イキナリ度]がある。形鋼端を斜に削ぐ切り口である。図の(空間形状)で、ABC3点を含む傾斜面との倣い開先切断となる。開先角は一元的に決まるので、これを「行き成り」と称している。形鋼のマーキン面については、あと改めて説明するが、ここでは(腹マーキン)の例を示しておく。フランジ側が、おかしな「反マーキン面出し切り」表示になっている。
 
(空間形状)
 
(腹マーキン)
図2.1.30 イキナリ度
 
演習題:−
 このイキナリ切断は、どのような要領で行われているのだろうか。
  
 
 イキナリ度のように形鋼のフレームやスティフナーが、傾斜した取合いで全周クリップ端となる場面は少ない。しかし同じ事情が生じている貫通スロットは、数多くある。縦肋骨方式での船体中心線:に平行でないロンジフレームのスロット、横肋骨方式でもシヤのあるストリンガーのスロットは、全てそうなるのである。
 つまり[図2.1.31 傾斜貫通フレームの断面]は、まさしくイキナリの切断面そのものなのである。この理由は、別書『造船現図展開』でも、羊羮を斜に切った面・・・の譬えで示し、さらに、この図での形鋼断面形状における:−
●ウェブとフランジのなす角:θ
●ウェブ長:Wθ>形鋼ウェブ深さ:W
●フランジ長:Fθ>形鋼フランジ幅:F
の求め方の例が説明してある。
 
図2.1.31 傾斜貫通フレームの断面
 
 形鋼断面での現図線:は脊側ウェブ線とフランジトップ線である。
 この傾斜貫通位置のスロットは、これらの2本の線を基準に、先の半自動切断で説明した倣い(治具)型を当てがうのである。
 その様子を[図2.1.32 スロット倣い型の適用]に示そう。
 図は極端に描いてあるが、角θが「すぼみ度/開き度」に変化しても、ウェブ/フランジ長が「伸び」ても、ウェブ足元のスキャロップさえスライドすれば、適合できるのが解る。
 
図2.1.32 スロット倣い型の適用
 
 さて次に、このスロットの切り方で、困る問題を考えてみよう。
 一つは、形鋼とスロット部が取り合うウェブ線位置の倣度である。倣い開先を取るには、型倣い切断でスロット全周を直切後の二次加工になる。また「出し切り」指示はできないから場合によっては、ウェブ線を出し切り量だけずらさねばならない。
 二つ目は、フランジトップの問題である。このトップ線は、スロット部で形鋼と取り合うF.BやBKT.など小骨の止まり位置の合いマークに兼用する。この部分で合わせるのが、最も確実だからである。したがってスロットを抜いた後も、差金などで線位置が再現できるように、スロット外まで延長してマーキンしておくのである。
 このフランジトップ線位置は、スロットを抜いた板の表面と裏面では、同じでない。マーキン面を変えると、貫通する形鋼の傾斜の板厚分だけの差が出る。
 これらの状況を説明するのが[図2.1.33 スロットの位置補正]である。
 
図2.1.33 スロットの位置補正
 
 実は、このような(オープン)スロット部の倣い開先は、形鋼の深さ程度であれば、取らないことにしたい。ウェブ取合い溶接長が極めて短く、開先切りの手間より増し脚長の方が得策だからである。ただし、図の(平)断面に示すように直切スロットと形鋼の当たりが反面のときは、補正:w分だけウェブ線をそのからずらすのである。
 また図の(側)断面に見るように、スロットが反面マーキンのときは、フランジトップ位置を、そのから補正:fだけずらさねばならない。
 
 水密部材の刑鋼貫通部を水密スロット、またはスリットというが、このスリットは傾斜貫通のとき倣い型切断ができない。[図2.1.34 スリット貫通部]に示すように複雑であり、裏表の実形を重ねて描いた一部型を渡して、切断の工夫をしてもらうほかないであろう。図のCは最小クリアランス、Sは切抜き最先端位置。NC切断ならSの直切スリットを抜いて、あと手作業で開先をつけることになる。
 
図2.1.34 スリット貫通部
 
2.2 曲加工
 曲加工には、面外/面内の曲げ、振れ、およびその複合がある。
 ここで、面外曲げとは、ビルジ外板の曲げや、内部構造Fc.PLのR曲げのような板厚方向の曲げ、面内曲げとは、フレームの曲げのようにウェブ面が平面のまま曲がる場合を指している。また曲加工は、折れと曲げにも分けられるが、折れは曲げRの小さい曲げととらえることができる。
 そして曲げ加工の記号は、最も一般的な面外折れ/曲げで代表させて、どちらの面からの折れ/曲げか・・・を指示するのが、基本となっている。
 [図2.2.1 曲加工の記号]参照。
 上面とは、マーキン面側のことで、通常プレス押し面となる。下面曲げの場合は、曲加工時に反転される。
 この4種の記号の中で、上面曲げ記号は曲加工の全般を代表し、その他の曲加工:面内曲げ、捩れ、曲げの複合・・・にも延用している。
 
図2.2.1 曲加工の記号
 
 [図2.2.2 曲加工の用語]に、記号と用語の対応を示した。
 図中の定義の欄、下方に「条材」とあるのは、フレームやスティフナーなどに使う定断面材のことで、圧延形鋼:ロールドセクションの寸法を超えた組立断面:ビルトアップセクションが用いられるようになったことから、これらの総称となったものである。
 
折れ用語の定義
(拡大画面:10KB)
 
曲げ用語の定義
(拡大画面:26KB)
図2.2.2 曲加工の用語
 
 曲げの種類の欄「平面曲げ」の項に[平曲げ]を併記してあるが、「平面曲げ」が条材においては「側面曲げ」と複合した3次元の曲げであるに対し、[平曲げ]は条材に限らず2次元の曲げとして定義した。
 
 曲げ記号は曲げ範囲の中央近くに、折れ記号は折れ線の中央近く、上下の字の柱の位置が折れ線に重なるように、やや大きめに表示する。この記号には、次工程「撓鉄へ送付」の指示を兼ねているからである。
 [図2.2.3 曲加工記号の表示位置]
に例を示す。
●BKTの折れ:上折れ記号の近くの角度表示は、折れ実角。
●Fc.PLのR曲げ:600Rは下曲げで、→位置が曲げ止まり。
 
●BTKの折れ
 
●Fc.PLのR曲げ
図2.2.3 曲加工記号の表示位置







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