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ISO9943:XXXX
造船―調理室及び調理器具を備えた配膳室の通風及び空気処理
(改正案)
1 適用範囲
 この国際規格は、海洋を航行する商船の調理室及び調理器具を備えた配膳室の通風及び空気処理について、船主が指定する場合の設計要件及び全般的に考慮すべき点について規定する。
 この規格は、極端低温又は高温の気候(すなわち、第2節に述べる温度より低いか又は高い温度の気候)で出会う条件を除き、全ての海域の通常の条件の場合に適用する。
 この国際規格の適用上、上記の調理器具を備えた配膳室とは、コーヒー沸かし器、食料保温用ホットプレート、電気湯沸かし器その他が必要とする少量電力以上に電力を消費する器具を備えている配膳室を言う。
 
備考1 この規格の利用者は、この規格の条件を守ると同時に、対象となる個々の船舶が該当する可能性のある法規・規則類に確実に従わなければならないことに留意する必要がある。
 
2 設計要件
 
2.1 全般
 
 調理室には、独立した給気装置を設けなければならない。
 この給気装置は外気のみを取り込まなければならない。
 調理室には、独立した排気装置を設け、調理室に給気される全空気量を大気中に排出しなければならない。
 給気及び排気用のファンは、冬季の少ない風量で運転することができるように、全速と同様低速でも運転ができなければならない。
 この装置は、2.3及び2.4に示す条件並びに第3節で要求する空気量に基づいて設計しなければならない。
 比較的小さい調理室の場合には、給気装置は他の場所を含む空調装置に結合することができる。
 その場合、風量を減らすには、ファンを減速させる以外の方法によらなければならない。
 他の場所からの空気を再循環させることは認められる。
 このような計画について適切な機関の承認を得ておくことは必要条件である。
 
2.2 発注に関する情報
 
 購入者は製作者に対して次のものを提供しなければならない。
a)空冷圧縮機その他を含む器具類を記入した調理室の配置図面
b)調理器具ごとの、定格出力、加熱方法、熱及び湿度の損失量、及びフードの詳細(もしあれば)
c)各器具の同時使用率(3.1.1参照)
 
2.3 夏季
 
 冷却能力は、給気を+35℃、相対湿度70%の外気を10℃下げることができなければならない。
 
2.4 冬季
 
 加熱能力は、外気温度が−20℃のとき、給気を+20℃まで加熱することができなければならない。
 給気の温度上昇は、ファンの低速時に得られなければならない。
 
3 空気量の計算
 
3.1 給気量
 
 調理室への給気量は3.1.1と3.1.2の計算のうち大きい値を示す方を使って計算しなければならない。
 
3.1.1 顕熱に基づく計算
 
 器具から放出される顕熱を排除するための空気量VqS(m3/sec)は、次式によって計算しなければならない。
 
 
ただし
Lは同時率(備考2参照)
φqSは器具から放出される顕熱(kW)(備考3参照)
cは空気の比熱で、1.10kj/kgKに等しい
ρは+35℃、70% RH101.3kPaの空気の密度、すなわち1.2kg/m3
Δtは平均室内温度と給気温度の差、すなわち10K
 
備考
2 同時率Lとは、調理室内に装備されている全器具数と作動中の器具数との比をいう。
 この係数は0.5以上でなければならない。
 特定のデータが得られない場合には、次の係数を計算に使用することができる。
 
L=1 配膳室庸
L=0.8 1日当り250食までを供給する調理室用
L=0.7 1日当り250食を越えて供給する調理室用
 
3 放出熱量について特定のデータが得られない場合には附属書B、表B1、第2及び4欄の値を計算に使用することができる。
 
3.1.2 潜熱に基づく計算
 
 器具から放出される潜熱を排出するための空気量の合計Vql(m3/sec)は、次式によって計算しなければならない。
 
 
ただし
φqlは器具から放出される潜熱(kW)(備考4参照)
L、c、ρ、Δtの意味は、3.1.1と同じ。
 
備考4 放出熱量について特定のデータが得られない場合には、附属書B、表B1、第3及び5欄による値を計算に使用することができる。
 
3.2 排気
 
 排気の量は給気の量より大きくしなければならない(A2.3も参照のこと)。
 
4. 設計要件に関する手引き
 
 附属書Aに、調理室の通風を設計する際の手引き及び優れた方法を示す。
 
附属書A
(参考)
設計要件に関する手引き
 
A.1 全般
 
 ドラフトには特別の注意を払う必要がある。
 調理室の計画及び給排気端末金物の配置は、対象とする場所における空気の動きが、できるだけ0.5m/s以下となるようにする必要がある。
 調理室に放出される潜熱が130W/m2より大きいと、作業環境が悪くなるのが普通である。
 
A.2 空気の分配及び装置
 
A.2.1 排気流の分配
 
 高温で汚れた空気を放出する 器具(調理器具、グリルプレート、フライパン)には、フード形の排気端末金物を設ける。
 これらのフードには、グリース受け及び掃除や交換が簡単なグリースフィルターを設け、かつ、フードは汚れた空気が拡散する前に集めて吸い出すように設計する。
 その他の排気端末金物も簡単に掃除できるようなものとする。
 排気端末金物全てに関する清掃指示を書いた銘板を、フード及びその他の排気端末の近くに掲示する。
 
A.2.2 給気流の分配
 
 給気流は、調理員の作業場所を考慮して分配する。給気金物は、調理員に不都合を与えずに作動できる種類とする。
 給気流は、排気に影響を与えず、また給気端末と排気端末の間で混合が起きないように計画する。
 この装置は、暖房期間中、室内の温度を制御できるように設計しなければならない。
 
A.2.3 圧力の問題
 
 調理室内の圧力を隣接する居住区域より低くすることが目的である。
 給気ダクト及び排気ダクトには、それぞれ調理室と隣接する区域との間の空気のバランスを適切にするための調整機能をもったダンパーを設ける必要がある。
 場合によっては空気移送金物を取りつけても良い。例えばサービスハッチに取りつける等。
 空気を過剰に流すとフィルターの能力を低下させ、ダクト内の汚れを助長することになるので注意する必要がある。
 
A.3 ファン及び外気フィルター
 
 給気ファンを単独で、又は排気ファンより大きい容量で運転できないようにする必要がある。
 給気ファンと排気ファンとは、同時に運転・停止を行う。
 排気ファンのモーターはグリースが堆積しないように、また火災の危険を避けるために空気流の外に置く。
 排気ファンのケーシングには検査用カバーを設け、排水口を最低部に設ける。
 外部から供給される空気は、適当なフィルター例えばEUROVENTのEU-3級によるフィルターでろ過する。
 粉末状の貨物を積む船舶では、一層効率の良いフィルターを使用する必要がある。
 
4.4 排気ダクト
 
 排気ダクトはできる限り、居住区域の外に配置すべきである。
 これができない場合には、適切な防火基準による防火構造とし、負圧とする必要がある。
 水平のダクトは、検査用カバーを設け、できるだけ長さを短く、かつ最低部に排水口を設ける。
 排気ダクトが船の冷凍区画を通る場合には、ダクト内で凝縮するおそれをなくすために防熱を施工する。
 直接排気方式の皿洗い機にも排気ダクトが必要である。
 排出口の高さと位置及び居住区と機関室の空気取り入れ口の高さと位置は混合のおそれの無いようにする。
 種々の風の影響による環境の汚染を考慮する必要がある。
 
A.5 音響
 
 空気の端末金物から1m離れた場所で測定した空気分配装置のA特性音圧レベルは75db(A)を超えないようにする。
 
附属書B
(参考)
調理室の各器具からの室内に放出される顕熱及び潜熱
 
 調理室の各器具からの顕熱及び潜熱の放出量は、表B1の2、3、4及び5欄の該当する値2)に器具の定格出力を掛けて求める。
 
器具の種類 電熱器具 蒸気又は温水加熱気
顕熱放出量 潜熱放出量 顕熱放出量 潜熱放出量
1 2 3 4 5
調理釜(取り外し式ふた) 0.041 0.07 0.026 0.044
調理釜 0.05 0.029 0.038 0.02
スチーマ 0.029 0.052 0.017 0.029
圧カステーマ 0.046 0.07 0.029 0.041
0.041 0.052 0.029 0.033
熱気スチーマ 0.058 0.267 0.035 0.162
無圧スチーマ 0.105 0.302    
傾斜フライパン 0.377 0.337    
焼盤(レンジ) 0.377 0.337
グリル装置 0.732 0.174
ぺ一キング・オーステイングオーブン 0.383 0.157
対流オーブン 0.105 0.302
連続ボイルオーブン 0.256 0.232
0.198 0.035
機械式攪拌器つき調理釜 0.18 0.163
0.093 0.715
0.041 0.523
レンジ 0.418 0.081    
0.418 0.081
電子レンジ 0.279 0.012
連続電子レンジ 0.116 0.024
二重なべ 0.106 0.314
高温食分配カウンター 0.562 - 0.343
保温キャビネット 0.349 -  
冷蔵庫 0.726 -
調理場機械 0.174 -
コンベアー 1 -
カフェテリア高温食分配装置 0.075 02.15    
カフェテリア低温食分配装置 0.726 -
0.296 -
高温飲み物沸し器 0.099 0.099
 

1)この情報は、この国際規格の利用者の便宜のために示すもので、ここに記載した製品をISOが保証するものではない。
他にも同じ結果を得られることを示す製品があれば、それを利用することができる。
2)これらの値は調理時間中の平均値であり、調理開始時の値ではない。







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