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ISO/TC8
(船舶及び海洋技術)
NEWSLETTER
JMSA NO.7
(ISO/TC8 NO.10)
2002年12月
 
幹事国だより
財団法人 日本船舶標準協会
ISO/TC8 Secretary
国際部長 小郷一郎
 今回のニュースレターは、2002年10月23〜25日大韓民国の釜山(Busan)で開催されました第35回ISO/TC8本会議及び諮問グループ会議の概要報告を中心に、ISO/TC8の動向についてご紹介いたします。
 
●第35回 TC8本会議及び諮問会議(Advisory Group)の概要
 2002年10月23〜26日大韓民国釜山の日本海に面した釜山のリゾート地海雲台にあるThe Westin Chosun Beach Hotelで、二日間の本会議と一日の諮問会議が開かれ、これに先立ち、21日にはTC8/SC4(甲板機械とぎ装品・議長国中国)、TC8/SC6(航海・議長国日本)、TC8/SC8(構造・議長国大韓民国)の各本会議とWorking Groupが開催され、22日には、現代重工業造船所の見学会と「ISO/TC8セミナー」が開催されました。TC8本会議には、8ヶ国22名とIMOなど関係者6名合計28名が参加しました。
 一週間の短期間に、多くの内容とたくさんの専門家の出席をいただき、全て成功裏に終了できましたことは、出席者の熱意と共に、ホスト役を務められた韓国技術標準院及び韓国造船工業会の絶大なる御協力によるものです。今回のTC8本会議及び同諮問会議の主な内容は、次のとおりです。
 
1. TC8の現議長であるCapt. Piersallの任期延長(2006年まで有効)が承認され、今後しばらく現議長の方針、戦略の下で、TC8活動が継続されることとなった。
2. TC8議長が高い優先度をとっているテロ対策関連国際規格の開発が、進行しつつあること。
 IMO(コンテナ貨物の識別関係)、ILO(船員の識別関係)、WCO(国際税関機構)等と共同歩調をとり、TC8としてテロ対策に関連する必要な国際規格の開発を急ぐ方向で、具体的な動きがでている。
 (例;PAS 16917−Data transfer---規格の制定など)
3. Intermodal(複合輸送)に関する分科委員会(Subcommittee-Intermodal and short-sea shipping)の議長がスペインに代わったのを機会に、この分野の国際標準化に積極的に参入する姿勢が承認された。
4. メガヨット(船体の長さ24メートル以上の個人用プレジャーボート)関係国際規格の開発が始まることとなった。
5. TC8/SC5(船橋配置分科委員会)議長及び幹事国(過去デンマーク)をアメリカが引き受けることとなり、新たにスペリーマリン(Sperry Marine)株式会社のMr. Jack Roeberが幹事に、Mr. Scott McCroryが議長に就任することとなった。
 また、SC3(機関及び配管)、SC10(コンピュータアプリケーション)及びSC11(複合輸送及び短距離海上輸送)の議長も交代した。
6. TC8の今後の新作業項目について、項目の選定、優先度の決定などを実施するためのAd−hocグループが新設された。国際規格の必要な分野についての議論がおこなわれた。
[新作業項目となる可能性のある分野の例]
・安全関係―大形客船の安全(特に防火関係)
・環境保全関係―シップリサイクリング、バラストウォータマネジメント、有害物の排出など
・保安(Security)と安全―設計方法(新形式船への適用)
・インターモーダル(複合輸送)―港湾設備との互換性確保、荷物の継ぎ目なしの輸送に貢献するなど
・新分野―メガヨット、高速船艇など
 
 今後のAd−hocグループの活動成果が期待される。また、ISO/TC8活動をより広く理解していただくための教育の一環として、「ISOガイドブック」を作成することとなり、このためのAd−hocグループも新設された。
 
●ISO/TC8セミナーの概要
 慣例となった、ISOセミナーには、TC8関係会議出席者のみならず、地元造船関係者など多数が参加された。ISOセミナーでの発表者は、次のとおり。
 
TC8 議長:
ISO/TC8-Ships and Technology-ISO Initiatives on Maritime Security

Mr. Palomares(IMO):
The need for uniform maritime safety and security regulations world wide

Prof. Lee(SC8 議長):
Korean Shipbuilding against Global shipbuilding Outlook

The Korean shipbuilder's Association:
Korean Shipbuilding against Global shipbuilding Outlook
 
●TC8 議長からのお知らせ
 今日、ISO/TC8にとって「挑戦」とその「機会」は、かつてなく大きなものとなっている。
 我々は活動的であり、十分そなえている。我々は、なお改善の余地はあるものの、全体的なISOの平均レベルよりも速く規格を提供しています。今日の市場環境では、ただ単に今までどおりのやり方を踏襲して行くわけにはいきません。我々の規格は、市場に適合したものでなければならず、業界とIMOのニーズに迅速に対応するため、新たなPAS(公開仕様書−TC8内における技術上のコンセンサスを示す規範文書で、ISO規格になる前のCDレベルでの合意したもの)の発行という利点を活用しています。我々の盟友Ad Van Dijk(デンマーク)がいつも言っていた「タイミング(Timing)を得たものであることと同時に、必要に応じた早期処理(Timeliness)がすべてである」という言葉が思い起こされます。
 2000年9月11日に、ISO史上では初めてとなるTC議長間でのMOUをTC67(石油及び天然ガス工業)と締結いたしました。更に最近では、貨物コンテナ中の貨物の移動における保安(Security)に最重点を置き、私は2002年6月20日に、貨物のシームレス且つ確実な移動を確保するため、TC104(貨物コンテナ)議長のCapt. Mike Bohlmen(CSXラインズ)とMOUを締結しました。これら2つの「Executive MOU」(実務覚書)は、海事産業界全体に対し、質の高い調和したISO製品を提供する上で役立つはずです。
 2002年9月25日におけるストックホルムでのISO総会に出されたISO事務総長代行の報告の中で、ISO/TC8を、「IMOとの強力な関係樹立に当たり主導的役割を果たした」、また「IMOと国際海事産業を支援して海上保安・海運に対するテロ防止の新イニシャチブの先端となっている」として賞賛しています。同代行はIMOの規制制定を支援するに当たり、国際的産業規格を提供する面でIMOに対する連携を深め、ISO/TC8が保安と環境保護に係る分野で強力な活動を展開していると評価しています。
 最後に、我々は、目標をはっきりと定めつつ、コースに沿って速やかに進んでおり、我々の船は十分な力を備えています。そのようなすばらしい能力と支持のおかげを受けながら舵をとることは、私の名誉とするところです。全てのTC8ファミリー(メンバー及びその配偶者)に感謝いたします。
ISO/TC8議長
Capts H. Piersall
 
●ISO/TC8、ISO/TC104間の戦略的提携について
 ISO/TC8(船舶及び海洋技術専門委員会)とISO/TC104(コンテナ専門委員会)は、貨物コンテナ中の貨物の移動に係る、海上及び複合輸送(インターモーダル)の保安(Security)に対し、共同対応を諮ることとなりました。
 前ISO事務局長Larry Eicher博士は、我々全てに、ISOの専門委員会とシステムの完全性を損なうことなく、市場のニーズに呼応するよう、また要求される時間内でかかるニーズに対応する柔軟性を持つよう説いていました。2000年、ISO/TC8とTC67は、「戦略的提携」のMOUを締結しましたが、これは、ISOの歴史の上で、専門委員会間におけるこの種の措置としては最初のことでした。(ISO会報、2001年3月、第32巻第3号)同様の「戦略的提携」が、2002年6月20日、TC104「貨物コンテナ」のCapt. Michael Boniman議長及びTC8「船舶及び海洋技術」のCapt. Charles Piersall議長により結ばれました。
 当該協定は、両専門委員会の既存の承認済み所掌範囲を変えたり、分科委員会(SC)レベルでの既存のリエゾン(連携関係)に変更をもたらすというものではなく、実施レベルにおいて、両委員会間の、長期にわたる運営上の手法及び協力に係わる了解を正式なものとしてとりまとめたものです。これは、貨物コンテナ中の貨物のシームレスな複合輸送(船舶間及び船舶/港湾間)移動を図るため、規格の作成に当たっては、お互いの間に活発な協力と参画を確保することを目的とするものです。IMO(国際海事機関)では、SOLAS(海上における人命の安全のための国際条約)、MARPOL(船舶からの汚染の防止に関する国際条約)及びSTCW(船員の訓練、証書及び当直に関する国際条約)を含む国際的な要求及び規則が制定されていますが、このIMOに対しては、TC8が、引き続き唯一のISOインターフェイスとしての役割を果たします。
 米国における2001年9月11日のテロ攻撃は、港湾・海運部門が保安の脅威に対し脆弱であることを浮き立たせました。また、同時に、保安上の脅威への弱点に対し国際的な行動を取る必要性を指摘することとなりました。主な課題の1つは、通商上の効率に対し妥協をせずに、全世界的に適用する方策を開発する必要があるということです。この課題に対応し、2001年11月に開催されたIMO(国際海事機関)の第22回総会は、決議A.924(22)を採択し、旅客及び乗組員の保安と船舶の安全を脅かすテロ行為を防止する方法及び手段を検討することとしました。ISOは海上保安のニーズに直ちに反応しました。ISOは、IMO第22回総会に、いくつかの提案をし、ISO/TC8議長が、積極的にIMO Intersessional Maritime Safety Committee Working Group on Maritime Security(ISWG)にその発端から参加しています。
 毎年2億個を越す貨物コンテナが主要港間を移動しています。ロッテルダムは、世界最大の港のひとつですが、毎年3億トン超の貨物と100万個超のコンテナとを取り扱っています。シンガポールは、世界最繁忙の積替え港です。昨年シンガポールで扱ったコンテナの80%超が積替えでした。貨物コンテナの保安確保は、海上保安に向けられた最重要問題の1つとなっています。
 IMO第22回総会に提出されたISO提案とは、(1)貨物コンテナ中の貨物の海上移動中の保安確保に必要な現行の方法とその改善策を評価するための「パイロットプログラム」、(2)海上及びインタモーダルの運送のためのデータ規格及びデータ辞書の確立、並びに(3)コンテナに係る電子封印及び機械的封印についてです。
 「パイロットプログラム」は、貨物運送に対する保安の向上と生産性の上昇に焦点をあてています。これから得られた情報を基としてつくる規格は、ISO/TC8議長、ISO/TC104議長、JTC1SCの議長数名(JTC1/SC17、SC31、SC34及びあと数名の予定)、TC8及びTC104の分科委員会のSC議長数名、並びに道路関係(サーフェス運送)のTC204及びTC22から成る国際規格グループの指導のもとで作成される予定です。
 両TCは、相互支援努力の継続と委員会へのお互いの代表派遣による相互関係維持の継続を図ることにしています。国際業界及びWTOは、規制当局と調整のとれた相互関係を確保することができることになり、これにより、貨物コンテナ中の貨物の移動における海上安全に対する費用の節減、また、効率的かつ良好な商業活動を保ちながら保安が一層高まることが期待されます。
 
●ISO/IEC/ITU会長のメッセージ
世界規格の日 2002年10月14日
 
ONE STANDARD、 一つの規格、
ONE TEST、 一つの試験、
ACCEPTED EVERY WHERE どの地域でも
 
 規格と試験は相携えて存在するものであり、全世界的市場育成の鍵となるものです。
 規格は、製品、サービス、システム、プロセス、及び材料に対する仕様書ないし要求事項を明示します。そして、試験は、かかる規格が一定期間にわたり確実に満足され得ることを立証するものです。
 ひとたびかかる規格が国際レベルで広く受けいれられると、当該規格は、品物又はサービスの世界市場(すなわち、一定の品質と消費者にとっての安心感に立脚した市場)への拡大を可能にします。
 規格は、世界中のビジネスが品物、サービス及びシステムを創造するために利用する「技術言語」です。どこでもビジネス界は、その言語を理解しているから、この「言語」に基づき製造される品物やサービスは、どこで造られようと同一品質をもっている筈です。規格は、安全と性能を確保する等いろいろな目的を達成するために生じます。しかし、その基本にある本質的な性格は、ある指標をうち立てることにより、それをもって製品、サービス及びシステムを各所でつくり出す上で、共通の技術上の基盤を提供することにあります。
 IEC、ISO及びITUは、産業界及び政府と対話を継続して規格を作成することを大事にしています。このようにして開発された規格や試験は、世界市場のいろいろな意見を反映することになり、また、技術的革新を妨げることなしに市場の発展を助長するのです。そのようなシステムがあって、買い手と売り手は、市場で販売される製品及びサービスの価値について、容易に納得出来るのです。この3つの組織は、世界的通商システムの一部の効率化を支援することにより、市場全体の効率化を支援することが出来るのです。結局、効率的な市場は、製造者、消費者、政府、試験機関、その他市場関係者すべての者を益することになります。
 
●TC8 韓国会議への日本からの出席者
・TC8/SC4(甲板機械とぎ装品・議長国中国)―時繁船体部会長(NK)、有川専務理事、富永(JMSA)
・TC8/SC6(航海・議長国日本)―飯島SC6議長、鈴木主査、片山主査、大泉委員(横河電子機器)、山下委員(古野電気)、山本委員(トキメック)、嘉納(JMSA)、セクレタリ:小林、長谷川(アシスタントセクレタリ)
・TC8/SC8(構造・議長国大韓民国)―時繁船体部会長(NK)、有川専務理事、嘉納、富永(JMSA)
・TC8 本会議―有川専務理事、飯島SC6議長、クロケット真美(JMSA通訳)、セクレタリ:小郷、嘉納(アシスタントセクレタリ)
・TC8/諮問会議―有川専務理事、飯島SC6議長、クロケット真美(JMSA通訳)、セクレタリ:小郷
 
●韓国でのISOセミナー
TC8 議長を囲んで(中央に座っている人)

TC8 議長夫人を囲んで(各国代表夫人等)

日本の福岡が見えそうな釜山の景勝地







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