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5 ISO/TCの目的及びその達成のための戦略
5.1 ISO/TCの規定された目的
 
 ISO TC 8は、海事社会の規格作成における国際的に認められている専門家組織である。常に改善を行う過程の一端として、ISO/TC 8は、「要件及び規則を定める国際海事機関(IMO)」と「国際海運業界及び造船業界」との間に立ち「連係機関」としての全世界的規格団体である旨、その戦略的見方を修正した。
 我々の規格は、次の諸目的に沿うものでなければならない。
 
国際性 海事規格は、国境を越えて使用されるであろう。装置及び材料は、認められた規格に適合する限り多くの出所から出てくる。供給者は、規格がIMOの国際規則と調和している場合、多くの分野において競争するであろう。
 国際規格は、製品の規格化に拍車をかける。海洋技術における急速な変化のため、製品のライフ・サイクルは短くなってきている。船主は、その投資を保護しようとする。したがって、製品に対し、適用規格への適合により大きな力を入れる。規格は、新技術に応じて発展させなければならない。規格は、進歩した技術の利用を可能とするため、詳細設計よりも、互換性及び性能に焦点が合わせられなければならない。これは、インターフェースの規格を樹立することによっても達成することができる。
 
短かくなった設計サイクル 時宜を得た方法で、技術の進展を製品に取り込むため、船の設計サイクルは、短くされるであろう。現行規格の中核部分は、新技術が、ビルディング・ブロック式の方法で現存技術と組み合わせ得るよう要求される。
 
電子文書の配布と維持管理 オン・ライン式でのコンピュータ・システムの利用度と利用可能性が向上してくるにつれ、我々の規格は、電子的にそれなりのものとし、見直し、調整し、かつ、更新しなければならない。
 
品質及び生産性 国際規格が将来の世界にいかにうまく適合するかのビジョンの助けとするため、規格は、ISO 9000シリーズの要件に適合することができる高品質で、費用効果のある製品を決めるための最高級のものでなければならない。国際規格は、安全かつ効果的に、競争可能な価格で製造し、設置し、使用し、維持することのできる製品を定めなければならない。規格は、特定の安全面、規格運用方法、信頼性及び維持管理可能性、並びに試験及び検査の基準の規格化を通して、環境保護を含む全体的安全性の向上を定めるものでなければならない。
 
市場のニーズを満足させるべきである TC 8の各委員会は、国際海事業界が必要とする規格についての作業をしていることを旨とすべきである。すなわち、造船者・船主、運航考及び補給者からのフィードバック(反応)を探求することである。
 
全世界的受容 TC 8の各委員会の優先順位第1は、全世界的市場において競争可能な製品のための規格作成であるから、委員会活動は、この目標を反映したものでなければならない。作成される規格は、生産者及びユーザーの目に、いかなる国又はいかなる地域の作成になる規格よりむしろ「選択すべき規格」として、映るものでなければならない。
 国際規格と国内規格及び規則(法制)との間の調整は、不断の長期努力によって積極的に追い求めなければならない。
 
前向きの適合性 規格の改正は、数においては少なく、また規模においては狭小とする。このことは、規則上の要件において、IMOの採用を得る場合、重要なことである。
 
時宜を得た方法での規格の作成 審議過程を合理化し、かつ、「作成した国際規格が海洋産業において現行と新規の技術を反映すること」と、「その規格が最新化されていること」とを確保すべきである。「本格的」規格と同様に「目安」としての規格を作成する必要がある。時間と時機とは、大事なポイントであるから、ある規格に対する、詳細な提案を受け取ってから1年以内に、承認された委員会規格案を手にすることが目標と考えなければならない。
 
他の国際機関及び他のISO専門委員会との連係強化の必要 規制上の要望が国際規格において確実に達成されるよう、IMOとの連係強化をすることが必要である。他のISO専門委員会作成の国際規格において、海洋への適用に齟齬を生じないよう確保する必要がある。これは、改正、補正又は新規海洋業界の特別な規格の作成を通じて行う。
 
多くの国の参加の増加が必要 我々の活発な作業メンバーに、ヨーロッパ共同体、アジア、北アメリカ、南アメリカ、及び開発途上国を加えて拡大する必要がある。
 
5.2 ISO/TCの規定された目標を達成するための諸戦略列挙
 1994年9月にノルウェーで開催されたTC 8会議において、メンバーは、IMOと海事業界との間の連係組織となるための戦略構想を全会一致で承認した。これに続いて、この構想を共通のものとし、関連の目標地点と目的とをもって、TC 8は、新たに記述された事例を行うのにどんな変更を必要とするかを調べるため、その現在の分科委員会及び作業グループの構成の自己検討という作業を行った。結果は次のとおりである。
 
(a)分科委員会責任を機能の分野へ拡大すること、及びすべての作業部会を関係分科委員会へ配属すること(すなわちWGはTCへは報告しないでよいとする)
 
(b)対IMOの即応性を直接確保するため2つの新たな分科委員会を設立−救命及び防火分科委員会(SC1)及び海洋環境保護分科委員会(SC2)。これは、IMOとの連係強化における第一歩となる。すなわち、その1つは、IMOの海上安全委員会(MSC)に、そして他の1つはIMOの海洋環境保護委員会(MEPC)に直接関わるものである。
 
(c)2つの特定市場部門への更なる注目。すなわち内陸航行船、インターモーダル輸送及び短海上輸送。分科委員会は内陸航行船については存在していた。しかし、インターモーダル輸送及び短海上輸送が追加となった。
 
 新たにビジョンが採択され、機構がきちんと定められることにより、ISO/TC 8は、強く、即応性あり、かつ、責任ある強化した事前行動可能のIMOとの連係関係と、国際海事業界を支持するための精力的な計画とに乗り出した。
 
IMOとの「連係」
 ISOは、IMOによりオブザーバーとして諮問的立場を付与され、IMOの委員会及び小委員会の作業に出席する非政府国際機関に属する。我々は、詳細について国々の合意を得られない場合、IMOがある部分を「主管庁の判断」という手段に依存するケースがあるが、そのような事例の回避の手助けとなるため、自主的コンセンサスの規格を採用することによる確実な貢献というものがあると、我々は信ずる。通信文の交流及び頻繁に会議を行うことにより(6箇月ごと)、ISO/TC 8の指導陣は、IMOの関係事項に対しては時宜を得た技術的に正しい応答を確保するため、関係事項の進展振りを詳しく評価しているのである。将来にわたってIMOとの積極的協調を保持し、また増大さえさせることは、我々の意図するところである。
 
業界との連係
 1947年におけるTC 8の設立以来、委員会の焦点は造船に合わさってきた。1990年代前半は、委員会は、海運業部門をも含めるよう拡大の必要性を認識した。業界との「連係」を更に良好なものとするため、我々の目標地点及び目的を樹立するにあたり、TC 8は、我々の作業の中に船主及び運航者の参加を劇的に増大した。国際規格作成は、特に海運業のニーズを支援するため行われた。造船者に対し作業を定め、造船者を選び、また「お金」を持っているのは船主であることを心しておくことが大切である。
 
作業の進行
 作業の大部分は、各SC(分科委員会)へのWG(作業グループ)の報告により処理される。多くは、電子的手段、すなわちeメールとファックスを用いての通信により処理されている。各分科委員会は通常、毎年会合しているが、その頻度は、作業の進行具合その他の要因に基づいてSC議長が定めている。TC 8は、毎年会議を開催しており、諮問グループ(AG)は、議長に対するExecutive Boardの役をしているが、6箇月ごとに会議を開いている。
 
 各SC議長は、書面による「現況特別報告書」(エクセプション・レポート)をTC 8議長に6箇月ごとに提出するか、又はSC議長が必要とするときはそれ以上の頻度で提出する。
 TC 8会議では毎回、IMO、IACS及びIAPHの上級職(部長、幹事職、事務局次長)が出席し、活発な討議を行う。IMOからの部長はまた、TC 8議長に対する特別顧問であり、AG会議には出席する。多くの他の国際機関連係メンバーはTC 8会議に出席するが、IMO、IACS、IAPHの出席は通例である。
 
 IMOとの連係は、重要である。それは、IMOが通例的連係に加えて我々の対象の重要な部門を代表しているからである。ISO/TC 8は、IMO/MSC(海上安全委員会)及びIMO/MEPC(海洋環境保護委員会)との連係を、議長レベルで維持している。議長は、IMOにおけるこれらの会議にすべて出席する。議長は、委員会のため、IMO/FP(防火)小委員会との連係を保ち、ISO/TC 8/SC3議長は、IMO/DE(設計・設備)小委員会との連係を保ち、ISO/TC 8/SC6議長は、IMO/NAV(航行安全)小委員会との連係を保ち、またISO/TC 8/SC11は、IAPHとともに、IMO/FAL(船/港インターフェース・グループ)に参加する。
 
 TC 8/TC67 MOU(了解覚書)に基づき、TC67は、IMO/BLG(ばら積み液体及びガス)小委員会に代表となり、TC 8を援助する。我々は、その他のIMO小委員会への参加について、必要性と要望があれば、柔軟かつ前向きの対応を示す。
 
 IACSは、所期の目的(船級)のため船の構造上の完全さ及び機械的能力について独立の立証関係の規則及び細則を作成し、海事当局の権限の移譲の下、国際及び国内の規制文書(法定の証明関係)の関係要件に関して、証明者として奉仕する。船級の目的上、IACSは、それ自身の基準及び方法を用いる。他方、法定の証明の目的のためには、旗国政府からの権限委譲の下で通常運営される。IMOのメンバーの100を超える者(国)が、法定の作業を、IACSメンバー(国に代わりいろいろな国際条約に従って、検査を実施し、かつ、証明書を発給する者)に、委譲した。
 IAPHは、世界の港湾の長、局長、その他の港湾の管理者の組織である。IAPHは、船舶/陸岸安全、船舶密売、船舶からの空気汚染、船舶バラスト水管理並びに港湾に係る潜在的影響を有するその他の海洋安全及び環境保護に係る事項等に関係している。IAPHは、そのIAPH/IMO合同船舶港湾インターフェース・グループを通して、IMOと主要な接触を保っている。
 
 ISO/TC 8の議長は、IAPH会議においては、ISOを代表しており、IAPHではVIPの位置を与えられている。
 TC 8の各分科委員会は、その所掌範囲における作業のため、自身の連係関係を設定する。この場合、ISO/TC 8議長及び幹事国には連絡する。IMO、IAPH又はIACSとの分科委員会レベルでの連係は、議長と意見のすり合わせをしなければならない。これは、ISO/TC 8が単一の全体的なTC 8の統制のとれた状態を確保するようにとの趣旨による。
 
広がる地域的の関係
 正式な関係は、CENとISOとの問にウィーン協定を通じて存在するが、海事産業部門においては、IS/TC 8(船舶及び海洋技術)とCEN 300(造船)との間には、明確な協調の下に密接な関係が存在する。CENTC300の考えは、海事産業が真に国際的であり、地域的又は国内的規格が全世界的市場からその産業(海事産業)を締め出すとの理解により、地域的規格に代え、ISO規格作成に下駄をあずけるとの意向である。TC 8では、プロジェクト・リーダーを出すCENメンバー国の力を得て、TC 8分科委員会においていくつかのCEN主導のものが行われている。
 COPANT(パン・アメリカン規格会議)とかPASC(太平洋地域規格会議)のような他の主要地域団体と同様な関係を樹立する必要性というものが存在する。
 
1. COPANTは、23の国家規格団体(カナダからアルゼンチンまで)の代表を得ている。COPANTは、1949年にパンアメリカン規格委員会(C PANT)として設立された。1964年に、この組織は、名称をCOPANTと改めた。COPANTの大きな役目は、その多くのメンバー国の中の国の規格団体(National Standards Bodies)を推進・統合することである。地域的規格化の過程は、国際規格の使用を基としている。したがって、ISO、IEC及びCOPANTの間の関係は、極めて重要である。1994年に協力協定が、COPANTと2つの国際規格組織のそれぞれとの間に設定された。COPANTは、国際規格の使用を広げ、かつ、推進することに同意し、ISOとIECは、国際規格の仕上げの過程において、COPANTの参加の便を計らうものとする。1997年現在、1653のCOPANT Pan American Standardsは、承認されていた。ISO/TC 8にとり関係のあるCOPANTの現行規格作成の焦点は、「品質保証、防火、規格の調和、環境及び用語」の分野である。
 
2. PASCは、1973年に形成され、現在では、造船に係る市場占有率において世界のリーダーの何箇国かを含む22のメンバー国を有している。当該組織は、太平洋地区の国々及び領土が特にISOとかIECのような国際規格団体へ連絡の意見を作成するときのフォーラムとしての役を果たしている。アジア・太平洋経済協力(APEC)の規格適合分科委員会(SCSC)、すなわち、APECの貿易投資委員会(CTI)の分科委員会生成に伴い、その地域の政府は、その貿易問題への関係から、規格に目をつけはじめた。PASCは、アジア・太平洋の諸政府が貿易と商売の利便となるべく地域の規格を作成しなくても済むよう、規格化の分野において、これら諸政府のニーズに応じるため造られた組織は当機関であることを、APECISCSCに熱心に説いた。PASCのあるメンバーは、その国の規格をISO及びIECに一致させる措置をとったが、国際規格のあるものは時代遅れで旧式であることがわかった。APECの目には、「国際規格」イコールISO及びIECの規格ということなのである。
 
 同等に又は多分よりいっそう重要であることは、ISO/TC 8の規格を作成するため、出発点を確立し、又は原稿を作成するため、世界のあらゆる箇所からの国の規格及び地域の規格をわれわれが使用することである。我々は、世界のすべての規格団体からの「現有海事規格の検討」なる、継続中の作業項目(維持され更新される)を有している。この作業の仕方は、特定の部門においてすでに何を行ったかをはっきりさせるのに役立つし、またISO規格を作成するための専門家候補者についての我々の最初の一覧を手にすることができる。
 
いろいろなISO制作物の利用
 TC 8の関心事は、IS/PAS、TS又はITAにむけられるよりもむしろ、ISO規格の時宜を得た作成にある。IMOは、ISO規格を引用することに受け入れの方向をとっているが、他の種のものはあまり受け入れられていない。それは、規制要件が正式な性状のものであるからであると信じている。完全な国際規格の明確な位置付けが要求されている。IMOは、地域又は国の規格は引用しないで、その内容から選出し、IMO自身の規格を作成するであろう。これにより、規則に代え、自主的なコンセンサスで決まった業界規格を使用する方式を排除している。それはまた、我々のIMOとISOを合わせた資源(人的及び物的)の最大限利用ということでもない。以上をとりまとめると、我々の正当なコースは、完全な国際規格作成に向けての「前進原速」である。我々は、翻訳を要しない(英語のみである)。そして、我々は、資源(人的及び物的)の適当な利用をして、完全な製品を「小品」並みの素早さで作成することができるのである。







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