日本財団 図書館


第1編 欧州における船舶からの排出ガス削減対策に関する動向
第1章 船舶からの排出ガス問題に係る背景
1−0 【概要】
 1990年当時には、ヨーロッパ全体で排出される硫黄酸化物の7%及び窒素酸化物の15%が船舶に起因するといわれていた。その一方で、陸上からのこれら酸化物の排出量は技術改良はじめ各種取組みにより著しく減少してきた。この結果、船舶に起因するこうした酸化物の総排出量は相対的に増加することとなり、2010年までにはそれぞれ17%と23%になると見込まれている。さらに、船舶からの有害な酸化物排出量の削減は、今や、陸上からの有害酸化物のさらなる排出削減に係る費用よりもかなり少ないコストで達成できると見込まれていることから、今後、ますます海事分野における有害排気ガスの削減努力に対する関心の的が集まってくるものと考えられる。
 
1−1 【現在排出ガス総量の推測】
 ヨーロッパ周辺の海域―バルト海、北海、大西洋東北部、地中海及び黒海―で国際貿易に携わる船舶から排出された大気汚染物質は、1990年の1年間で280万トンの亜硫酸ガス(Sox)と400万トンの窒素酸化物(NOxとして表示)と見積もられている。これはヨーロッパ全体で排出される亜硫酸ガス(SOx)の7%、窒素酸化物(NOx)の15%に相当することを意味している。
 
1−2 【船舶からの排出ガスの割合の増加】
 欧州連合(EU)加盟国では陸上施設からの排出規制につき、EU指令2001/80(大型燃焼プラント)及び2001/81(国の排出上限)に基づく削減対策を既に実施に移している。EU加盟15ヶ国が同指令に基づく削減規制を完全に実施した場合に予測される2010年には、船舶からの硫黄酸化物と窒素酸化物の排出量は、海上分野において何らの対応もせず1990年レベルのままであることを前提とすれば、ヨーロッパ全体の総排出量に占める割合は各々17%と23%まで上昇すると見込まれる。1
 
 さらに、この数値が国際航路に従事する船舶のみを対象とするものであり、各国内の内水航路や領海内を航行する船舶からの排出は含まれていないことに注意する必要がある。また、1990年から1999年までの10年間にEU域内の海上貨物輸送量の増加は273百万トン・キロメートルと30%も増加しており、これに伴う排出量の増加についても当該数値に含まれていないことから、実際には船舶からの有害な排出ガスの占める割合はこれら数値よりも大きくなることに留意する必要がある。
 
表1:欧州域内のSOx及びNOx排出量の推移(2010年の予測)
  1990年(百万トン) 2010年(百万トン)
  SO2 NOx SO2 NOx
EU15ケ国 16.3 13.2 3.81 6.51
EU以外の国 21.6 10.2 9.92 7.32
外航海運 2.8 4 2.83 4.03
ヨーロッパの合計 40.7 27.4 16.5 17.8
1.
国別排ガス制限に関するEU指令(2001/81/EC)に沿って予測。
2.
長距離越境大気汚染条約に基づき酸性化、富栄養化、地表オゾン削減に関して規定した1999年イエーテボリ議定書に沿って予測。
3.
1990年の排ガス量レベル
 
1−3 【排出ガス削減対策の焦点が陸上から舶用に移る】
 欧州委員会(EC)では、現時点において、SOx削減をコスト面から見た場合、既に対策を実施している船舶以外の分野と比較して、船舶を対象とした削減対策の方がより経済性に優れていると考えている。具体的な事例として、北海、バルト海を航行する船舶の燃料中の硫黄含有量を国際海事機関(IM0)のMARPOL条約附属書VIに規定する1.5%まで制限するために要するコストは年間87百万ユーロであるのに対し、陸上施設から同量のSOx発生源を削減するために係る費用は年間11億5千万ユーロになると欧州委員会では推計している。なお、現在の船舶用燃料には平均2.7%程度の硫黄分が含まれている。
 
1−4 【大気汚染物質削減計画の目標】
 2002年11月21日、欧州委員会(EC)は船舶からの大気汚染物質の削減に関する計画を発表した。それには、欧州域内で使用される舶用燃料中の硫黄含有率を2010年までを目標に以下の主要な3項目に基づいて削減していくとするEU指令を提案するとされている。
 
1. MARPOL条約附属書VI(未発効)に沿って、北海、イギリス海峡、バルト海を航行する全船舶が使用する船舶用燃料油の硫黄含有率を1.5%以下とする(MARPOL条約附属書VIあるいは本EU指令発劫より12ヶ月後から規制)。
2. EU域内を定期航路とする旅客フェリーが使用する船舶用燃料油の硫黄含有率も2007年7月1日以降は1.5%以下とする。
3. EU域内の港に停泊する船舶(内水航行船舶を含む)が使用する舶用燃料の硫黄含有率を0.2%以下とする(本EU指令発効より12ヶ月後から規制)。
 
 なお、欧州指令案が発効されるまでは2年を要するであろうが、発令されるEC規則は、IMOが現在検討中の硫黄酸化物の排出に対する単純な上限値を設けることでIMOと歩調を合わせることになると思われる。
 

1
EU指令による削減目標値及び現在の統計データの値を基に今後の経済成長率を1.5%/年と仮定して推計。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION