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タイ国におけるモーダルシフトに伴う新規造船需要に関する調査?実現に向けて?

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


8 RO−RO船沿岸輸送導入プロジェクト
 沿岸輸送は、ユーザ及び政府の双方にコスト節減のメリットがある。RO−RO船の貨物運賃は、航路2(束海岸−スーラト)では136バーツ/トン、航路5(バンコク−ソンクラー)では173バーツ/トン、航路6(東海岸−ソンクラ)では119バーツ/トンとなり、潜在ユーザが想定する最高運賃よりも低くなると考えられる。ユーザーは運賃の節減により、1年あたり約4億バーツの利益を得ることになる(表35参照)。一方、政府は、道路維持費の節減から利益が得ることができる。例えば、航路1(東海岸−チュンポーン)では平均54.4バーツ/トンの節減、年換算すると約3億2000万バーツの節減が図れる。また、沿岸輸送にシフトすることによって、渋滞コストと道路事故コストがそれぞれ、13バーツ/トンと31バーツ/トン減少することになる。これをRO−RO船の運航が可能な各航路における達成可能な最大市場シェアに適用すると、1年に合計2億5,800万バーツの節減が図れることになる。
 
 RO−RO船は道路輸送よりエネルギー効率が高く、大気中への汚染物質の放出が少ないため、コスト節減のみでなく、環境保護にも大きな効果がある。
 エネルギーについては、国連アジア太平洋経済社会委員会の報告によると、道路輸送の平均燃料効率が1リットルあたり25トン・キロメートルであるのに対し、海上輸送の場合は217.6トン・キロメートルであり、道路輸送のおよそ8.7倍の燃料効率となる。タイにおけるRO−RO船を導入した場合の省エネルギーの量的算出には、この数字が使用されている。RO−RO船にシフトした場合の貨物1トンあたりの燃料節約量はおよそ26リットル、1年あたり1億5,733万リットルとなる。
 更にRO−RO船による沿岸輸送を導入した場合、汚染物質排出量は、貨物1,000トンにつき平均して炭化水素が100kg以上、一酸化炭素が300kg以上、各窒素酸化物が1,800kg以上減少する。これは、年間では、炭化水素は610トン、一酸化炭素は1,900トン、各窒素酸化物は1万500トンの減少になる。モーダルシフトの実現により、これだけの量の汚染物質が減少することとなれば、タイの環境保全への貢献が十分期待できる。
 
 タイにRO−RO船による沿岸輸送を導入するため、新造船を使ってのモーダルシフトに関する分析を行った。本分析では、対象となる主要市場の中で、6つの航路が想定された。これらの航路はチュンポーン(南部のプラチュアップキリカンを含む)、スラータニーソンクラーと、バンコクレムチャバンを繋ぐものである。沿岸輸送市場は、バラ積み貨物と一般貨物市場の2つの主要市場に分類できる。目標市場における現在の道路輸送量のおよそ22%がバラ積貨物、78%が一般貨物グループに分類できる。外洋航行用の引船およびバージによる運航は、バラ積貨物については競争力のある海洋技術であり、一方RO−RO船は一般貨物の輸送において主要な位置を占めることになると仮定した。
 一般にRO−RO船は、短距離の航路で高頻度かつ取扱いに注意が必要な一般貨物の輸送に適した代替輸送手段であり、価値の高い小包入り貨物の輸送に適している。タイ市場には、トラック輸送設備をもつ1,000DWTから4,000DWTの貨物輸送専用RO−RO船が適している。本調査では、大型船よりも2,000DWTの船舶の方が、より有利であると分析された。また設計喫水値は4メートル以下である必要がある。
 タイでは、クロントイやレムチャバン、及びマブ・タ・プッドの各国際貿易港において、バンコクやチョンブリ及びラヨーンの各県に対してRO−RO船による沿岸輸送を実施することが可能である。ソンクラー、チュンポーンとスーラトには、現在適当な港湾設備がないため、これらの県向けの沿岸輸送はあまり活発ではない。しかし、チュンポーンのオイルターミナルは水深が3.5メートルあり、約2,000DWTまでのRO−RO船を対象とした港湾施設の建設が可能である。スラータニーでは、タピ川に主要港を開発することによって、1,500DWTまでの船舶の入港が可能となる。タイにRO−RO船による沿岸輸送を導入させるための予備調査の他、現在タイの国内市場で利用可能な融資オプションと比較する形で、ODA融資の長所に関する比較分析も行った。
 
 RO−RO船運航の可能性を実証する予備調査では、以下の変数が使用された。
 
航続時間変数
ビジネス計画:30年
船舶の耐用年数:25年
課税期間:10年
 
ファイナンス変数
最初の8年間の法人税:0%、9年目以降:30%
年間物価上昇率:3%
貨物量:2年毎に5%増加
船舶価格におけるローンの割合:80%
運転資金の金利:5%
運転資金:現金支出の20%
売却価格:船の膨張資本コストの5%
目標とする最低収益率:税引き後10%
 
オペレーション変数
維持可能な最大積載率:90%
年間運航週数:50週間
貨物取扱量:1時間当たり1,000トン
寄港1回あたりの予測デッドタイム:1.5時間
複合一貫輸送による陸上輸送距離:30km
 
燃料消費に関する方程式 燃料(トン/日)=A*dwt^B*speed^C
場所A=0.000844,B=0.447264,C=2.215504
維持費=(A+B*船齢)*船舶価格
場所A=0.00682,B=0.00050
補修工事 維持費の10%
対バース乗組員比率 1.5
平均積載荷重 トラック1台あたり15トン
車体重量 6トン
 
為替レート
43バーツ/1USD、36バーツ/100円
 
燃料コスト
IFO=140USドル/トン 密度=0.95kg
IMO=300USドル/トン 密度=0.92kg/L
 
価格とコスト変数
幹部職給与:月3万バーツ
乗組員給与:月1万バーツ
保険:船体価格の1%
代理店手数料:収入の3%
一般管理費:収入の10%
 
港のコスト変数
1GRTあたりの港税:10バーツ
頻繁寄港割引率:50%
バース利用:1時間8バーツ/100GRT
貨物コスト:50バーツ/トン
 
船体価格
RO−RO船の大きさ DWT 速力 日本での価格 一般市場価格 幹部職 評価
1. 小型 1,000 14 1,200,000,000円 8,300,000USD 6 10
2. 中型 2,000 15 1,600,000,000円 11,000,000USD 7 13
3. 大型 4,000 16 2,400,000,000円 16,500,000USD 9 15
 
融資条件
  据置期間 期限 貨物運賃 船齢
一般市場:新造船 0年 7年 7.75% 0
一般市場:中古船 0年 7年 7.75% 10
ODA(新造船) 6年 20年 0.75% 0
 
航路の特性
航路 発地 着地 距離 陸上貨物輸送経費 積載率 目標市場規模(1000トン)
海上 陸上 全行程 港から/港まで 往路 復路 往路 復路
航路1 東海岸 チュンポーン 350 650 603 171 90% 35% 880 341
航路2 東海岸 スーラト 430 823 730 171 86% 90% 163 171
航路3 バンコク チュンポーン 450 550 530 171 24% 90% 6,297 23,625
航路4 バンコク スーラト 540 644 599 171 90% 33% 3,375 1,256
航路5 バンコク ソンクラー 730 950 823 171 90% 33% 3,375 1,256
航路6 東海岸 ソンクラー 620 1,129 954 171 54% 90% 163 271
 
減価償却と資本価値
 減価償却は、二重定率法によって試算した。
 
表39: 6つの航路におけるRO−RO船の運航に必要な最低貨物運賃
  航路1 航路2 航路3 航路4 航路5 航路6
ODA、小型 432/360 334/470 486/284 468/341 652/540 552/671
ODA、中型     357/284 345/341 470/540  
ODA、大型     283/284 350/341 367/540  
新規、小型 551/360 418/470 615/284 587/341 831/540 705/671
新規、中型     441/284 423/341 588/540  
新規、大型     346/284 438/341 455/540  
中古、小型 431/300 333/397 484/231 466/282 649/457 549/575
中古、中型     354/231 343/282 467/457  
中古、大型     281/231 348/282 364/457  
 
備考:航路の定義
航路1 東海岸〜チュンポーン
航路2 東海岸〜スーラト(不可能)
航路3 バンコク〜チュンポーン
航路4 バンコク〜スーラト
航路5 バンコク〜ソンクラー
航路6 東海岸〜ソンクラー(不可能)
 
 上記の貨物運賃から、6つの航路におけるRO−RO船運航の実行可能性を以下にまとめる。
 
航路1: 東海岸〜チュンポーン。中型あるいは大型船を使用した場合、十分な貨物を確保することは困難と思われる。また、必要とされる最低貨物運賃は小型船が達成できる貨物運賃を超えている。従って、運航は不可能と思われる。
航路2: 東海岸〜スーラト。小型船の運航は可能と思われるものの、十分な貨物量を確保することは困難と思われる。
航路3: バンコク〜チュンポーン(または、プラチュアブ)。3隻の大型船舶の運航が可能と思われる。
航路4: バンコク〜スーラト。わずかな可能性あり。この航路が実現すれば、8隻の中型RO−RO船運航の需要が創出される。
航路5: バンコク〜ソンクラー。明らかに中型船6隻の及び大型船3隻の運航が可能である。
航路6: 東海岸〜ソンクラー。小型船の運航は可能と思われるものの、十分な貨物量を確保することは困難と思われる。
 
船舶価格が概算料金よりも低い場合に有利なODA融資
 いずれの場合にも、ODA融資を利用した場合に必要となる最低貨物運賃は、一般市場で中古船を購入する場合の運賃をわずかに上回るが(1%未満の違い)、一般金融機関の融資を受けて一般市場から新造船を購入する場合よりも格段に低い。小型船の場合、貨物船積載能力1ユニットあたりの資本費用が高いため、価格差は今回検討対象とした中で最大となる。この違いは、想定される新船の建造費が一般市場における予想船舶価格よりも若干高いことによって生じているが、ODAの有利な融資条件によって、この価格差を埋め合わせる以上の利益がある。日本の新造船の価格が今回検討対象としたものより約1%〜3%安くなれば(船舶の大きさによって異なるが)、ODA融資で購入した新造船で運航する場合のコストの方が、一般市場から購入した船齢10年の中古船を運航する場合のコストより低くなる。
 これをうけ、タイのThai Maritime Navigation社(TMN)が沿岸輸送事業の開始にあたり、ODA融資への申し込みを検討する可能性が生まれる。
 同社による申請は、日本政府が既定する以下の条件を満たすものと思われる。
・日本企業の優れた技術を駆使すること。
・環境関連のプロジェクトであること。
・プロジェクトが財政的に健全であること。







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