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6.3 結論
6つの航路の内、3つの航路、すなわちバンコクからチュンポーン、スーラト、ソンクラー(航路3、4及び5)の航路に関しては、大型のRO−RO船を使用した場合に明らかに収益が見込まれる。他の2つの航路、すなわち東海岸からスーラト(航路2)、東海岸からソンクラー(航路6)に関しては、十分な貨物量を確保できれば、小型船(1,000DWT)を使って道路輸送運賃よりも安い運賃を提供することにより運航が可能である。しかし事前調査からは、定期的に必要十分な貨物量を確保することは極めて困難なことがわかる。「沿岸輸送システム開発に関する調査」で指摘されているように、あまり小型の船を利用すると、海上における安全性の問題が懸念される。また、特に北行きの鉄鋼貨物に関しては、ベースとなる積載量を保証されれば、チュンポーン/東海岸間の小型船の運航も可能と思われる。(これについて本報告書では特に考察していないが、「タイ国におけるモーダルシフトに伴う新規造船需要に関する調査」の中で詳細に分析している)。
一般金融機関から融資を受けて中古船(船齢約10年)を購入するオプションが最も経済的と思われる。しかし、一般金融機関から融資を受けて中古船を購入する場合とODAの融資を受けて新造船を購入する場合の総オペレーションコストの差は1%未満である。両者の差がごくわずかであるため、その差は、最新技術を駆使した新造船を使用することによる信頼性の向上とサービスの質の向上によって相殺される。サービスの質が高いということは、現在の道路貨物運賃に近い料金を設定できるということを示唆する。中古船に関しては、貨物を道路輸送から海上輸送にシフトさせるためには、現在の道路貨物運賃よりも15%安い料金を設定することが必要と仮定する。この分析から、より近代的な船舶を使用することで、割引率を5%まで減らすことができれば、ODA融資を活用して日本製の新造船を購入した方が、中古船よりも収益率が高い、すなわち、運賃割増料金からの追加収入を得ることにより、船体価格の差は十分に賄えるということがわかる。
想定船舶価格によると、ODA融資を利用した場合、日本で設計・建造された船舶購入に際し、余分に必要となる資本コストを相殺して余りあることがわかる。一般市場で中古船を入手した場合と比較して競争力を維持するには、日本製船舶の購入価格は当初の試算よりも1%〜3%程度低くなくてはならない。これが可能であれば、ODA融資によって新造船を購入することが最も費用対効果に優れていることになる。
ODA融資の金利と返済期間は日本政府によって決定される。現在、ODA融資の金利は大方0.75%まで下げられ、返済期間も40年に延長された(10年の据置期間を含む)。しかし船舶の融資については、返済期間と据置期間の合計が、一般的な船の耐用年数を超えないように制限されている。従って本調査では船の耐用年数を30年と仮定し、返済期間を20年、据置期間を6年としたもしODA融資の返済期間と据置期間を延長するよう交渉できれば、このブロジェクトの実現可能性は、本報告書の結果よりも高いものとなるであろう。







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