日本財団 図書館


2−2−4 今後の課題
 
問題点
 イスタンブール工科大学・海事学部はトルコ国内で唯一ともいえる船舶職員の養成機関であり、その能力はEU諸国においても高く評価されている。今後自国船隊のみならず、欧州を中心とした船員供給の基地としてトルコは成長する可能性を持っている。今後は海事教育のみならず、海事産業の研究機関として機能を果たすべきであり、必要な施設と機材を整備しその体制を速やかに整備する必要がある。
 
 トルコのみならず近隣諸国の海事教育、研究の充実の必要性が極めて高い。現在、ITU・MFにおいて利用可能なものは、機関シミュレータ、レーダシミュレータ、およびGMDSSシミュレータのみであり、JICAプロジェクト方式技術協力による操船シミュレータの設置を待っている状況である。その他、荷役、電気、電子、安全、実機、各種教材等が圧倒的に不足している。また、訓練船は50年前の貨客船であり、自航できる状態にない。今後海事大学としてどのような船員育成方針をとり、また研究を行うか早急に具体案を策定し、これに見合った訓練船を含む機材の整備と技術協力が必要である。
 
今後の見通し
 STCW条約の95年の改正に伴い、世界的に海事教育機関はその訓練内容の適正化と必要な機材・施設の整備が急務である。ITU海事学部は国内外におけるその高い評価から、現在の機材・施設の更新と欧州での船員/海事教育/研究の中心となるべく計画しており、トルコ国家計画局はじめ首相府海事局もITUの能力、機能向上に期待している。
 
2−3 日本政府ODA実績
2−3−1 日本の援助実績(2000年度末まで)
(1)日本のODA実績
 
(単位:百万ドル)
  贈与 政府貸付
  無償資金協力 技術協力 支出総額 支出純額 合計
1996年 29.80 29.80 30.51 -27.10 2.70
1997年 0.82 23.09 23.91 17.94 45.60 21.69
1998年 0.01 17.05 17.06 17.33 47.42 -30.36
1999年 4.13 20.40 24.53 3.20 -70.12 45.59
2000年 0.94 19.07 20.00 221.68 124.47 144.48
累計 9.58 269.63 279.21 1945.13 1253.66 1532.88
 
(2)2000年度までの累計
・有償資金協力:4,200億9,900万円(交換公文ベース)
・無償資金協力:12億3,400万円(交換公文ベース)
・技術協力:314億6,000万円(JICA実績ベース)
−研修員受け入れ:2,256人
−専門家派遣:872人
−調査団派遣:1,625人
−機材供与:56億4,271万円
−プロジェクト技協:12件
−開発調査:40件
 
2−3−2 海事関係のODA実績
 
案件:イスタンブール海洋水産学校
 本プロジェクトは第一次5カ年計画の中でその設立を掲げられたプロジェクトで、当時、零細漁業から近代技術に基づいた合理的産業へと脱皮すべく中堅技術者を要請する水産業振興のための重要な一プログラムとして位置づけられていた。同校はトルコにおける水産教育の先駆けとなり、同校の成功に触発されて8つの4年制水産専門学校が発足したことから、同プロジェクトはトルコにおいて極めてモニュメンタルな協力事業であったといえる。
 
・援助形態:プロジェクト方式技術協力
・協力期間:1973年6月21日〜1979年6月20日
・協力金額:1億3,000万円(機材供与)
・協力の内容:
 漁業にかかわる中堅技術者育成を目的とした水産高校の設立に際し、日本政府は1967年より同校開校準備のため専門家一名を派遣し、73年からプロジェクト方式技術協力を通じて専門家の派遣、機材供与、トルコ側カウンターパートの研修受け入れを実施、協力期間を2度にわたり延長し1979年に終了した。
 
アライベイ造船所拡充計画
・援助形態:有償資金協力
・協力金額:2億3,500万円
・E/N署名日:1981年1月16日
・相手国実施期間:アライベイ造船所
・協力の内容:
 トルコ政府は過去数時の経済開発5カ年計画においてトルコ商船隊の拡充及び国内造船産業の振興を掲げ、この一環としてアライベイ造船所の拡張計画を立て、これに対する日本への協力を要請した。この要請を受けて必要となる船舶建造・修理用クレーン3基に対する有償資金協力を行った。80年から本件拡張工事が開始されたが、予想以上に難工事となり再度計画の見直しを余儀なくされ、87年10月本事業はキャンセルされることになった。
 
その他
〈1997年度〉
 マルマラ海港湾開発計画調査(第3年次)、当初契約金額:5,132万6,000円
 
〈1998年度〉
 東部黒海地域開発計画事前調査(S/W協議:Scope of work、(インフラ整備計画)、当初契約金額:288万2,000円
 
〈1999年度〉
・技術協力
−港湾水理研究センター、当初契約金額:1,162万4,000円
−黒海水域増養殖開発計画、当初契約金額:1,595万円
・開発調査
−港湾整備長期総合計画策定調査(第一年次)、当初契約金額:1,964億6,340万円
−東部黒海地域開発計画調査(第二年次)、当初契約金額:1,546億9,860万円
 
〈2000年度〉
・技術協力
−海事教育向上プロジェクト、機材供与、当初契約金額:1,696億8,000万円
・開発調査
−港湾整備長期総合計画策定調査(第二年次)、当初契約金額:274億3,230万円
−東部黒海地域開発計画調査(第三年次)、当初契約金額:188億6,955万円







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION