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英国における統合的海洋管理政策に関する基礎調査

 事業名 造船関連海外情報収集及び海外業務協力事業
 団体名 シップ・アンド・オーシャン財団  


2−3−8. MSR第八章「気候変動への取り組み」
 MSR第八章では、現在までに観測されている「気候変動の影響と将来の気候変動予測」がなされ、特に、「気候変動」が「沿岸地域と海洋生態系に及ぼす影響の予測」について、海洋漁業・養殖などの項目毎に、「起こりうるシナリオ」が具体的に紹介されている。続いてUKの「気候変動」に対する取り組みが、主に調査研究プロジェクトの側面から紹介されている。
 
(1)将来の気候変動予測
 
 本章では2001年に発表された、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第3次アセスメントレポートによる気候変動影響の予測」と、UKにおける気候変動予測として2002年4月、発表の「DEFRAの具体的な予測」が紹介されている。DEFRAの予測によると、2080年までにUKの年間平均気温は2℃〜3.5℃上昇すると予想されており、イングランド南東部では、26〜86cmの海面上昇の可能性があるとされている。
 
気候変動に関する政府間パネル:Intergovernmental Panel on Climate Change(IPCC)
 
 「国連環境計画(United Nations Environment Programme)」と「世界気象機構(World Meteorological Organisation)」によってサポートされており、1988年に設立された。
 
 IPCCは、気侯変動の全ての科学的・技術的側面をカバーする詳細な科学的評価を行うことを目的としている。
 
 IPCCの第3次アセスメントレポートの結論には以下の事項が含まれている。
 
(1)以下の大規模な影響が起こりうる。
 
●海面水温と平均海面レベルの上昇
●海面をカバーする氷層の減少
●塩分度、波の状況、海洋循環の変化
 
(2)これらの変化は、魚類の存在度や存在密度ダイナミクスに影響を与え得る。沿岸地域では、以下の影響を被る可能性がある。
 
●洪水の増加
●侵食の加速
●湿地帯とマングローブの減少
●淡水水源への海水の侵入
●暴風雨による洪水と海浜侵食の増加
  
 
(2)沿岸地域と海洋生態系への影響
 
 気候変動による沿岸地域と海洋生態系に対する全般的な影響予測が、以下の項目毎にリストされている。
 
●海洋漁業
●養殖漁業
●海氷の減少
●海洋哺乳類
●珊瑚礁
●沿岸地域湿地帯
 
 UK国内においては、イングランドの自然保全規制機関である「イングリッシュ・ネイチャー及び他の自然保全エージェンシー」によって、「MONARCHプロジェクト」と呼ばれる研究が行われている。この研究によると、気候変動による生態系への影響は、沿岸湿地帯の様な沿岸地域生息地で特に顕著に表れる可能性が高いとされている。
 
(3)UKの気候変動に対する取り組み
 
(1)京都議定書
 
 「国連気候変動枠組み条約(United Nations Framework Convention on Climate Change。UNFCCCと略記)の京都議定書」により、温室ガス排出量低減が目指されている。UKは、「京都議定書」の早期発効に注力している。またUK国内レベルの目標として、「京都議定書」の要求基準を上回り、2010年までに二酸化炭素排出量を1990年のレベルに比較して20%削減することが表明されている。
 
(2)UK気候変動と気候影響プログラム(UKCIP)
 
 UK政府は、1997年に「UK気候変動と気候影響プログラム(UK Climate Change and Climate Impacts Programme。UKCIPと略記)」を設立した。UKCIPの設立の目的は、気候変動による影響の大きさの評価をサポートすることにより、意思決定者やその他関係者による気候変動に適応するための戦略計画の立案を援助することである。
 
 2000年11月には、「UK政府と地方政府の気候変動に対するアプローチ」がUKCIPにより発表されている。
 
 また、気候変動に適応するための戦略の実施にあたっては、詳細な気侯変動予測が必要となる。このため、UKCIPは詳細な予測シナリオを2002年中に発表する予定であるとMSRでは述べられている。現在、UKCIPによるシナリオはhttp://www.ukcip.org.uk/scenarios/index.htmlで公開されている。
 
(3)UK生物多様性行動計画(UK BAP)
 
 UK BAPで設定された、塩水低湿地の保全と回復目標を達成するために、気候変動適応戦略の技術の活用が考えられる。この技術は、海洋のエネルギーに対する自然の第一次防御を復元再生すると共に、消失した沿岸湿地帯の回復を図るものである。
 
 UK BAPについては本報告書第三章で、沿岸防護については第四章で詳述する。
 
(4)海洋生物多様性と気侯変動プロジェクト(MarClim)
 
 「海洋生物多様性と気候変動プロジェクト(Marine Biodiversity and Climate Chang。MarClimと略記)」は2001年に開始された4カ年の研究プロジェクトである。MarClimはUKCIPの下で「海洋生物学協会(Marine Biological Association)」によって管理されている。この研究は、潮間帯に生息する生物を指標として、UKとアイルランドにおける気候変動が海洋生物多様性に与える影響を解明しようとするものである。DEFRA、環境エージェンシー、スコットランド政府など、複数の組織によって資金援助が行われている。
 
2−3−9. MSR第九章「海洋科学の最善利用」
 MSR全体にわたって、政策策定における科学的根拠の重要性が繰り返し強調されている。MSR第九章では、海洋環境の理解を促進し、科学的知見を政策策定に統合するためのUKの取り組みが紹介されている。
 
 まずUK政府の基本方針が説明され、続いて海洋科学研究に関連する政府系組織と、組織間調整活動が紹介されている。
 
 MSR第九章の内容の詳細、及び補足調査結果については、本報告書第六章に記述する。







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