日本財団 図書館


II−7 連邦出資研究開発センターのプロジェクト
運輸技術商用展開センター(CCDOTT:Center for Commercial Development of Transportation Technologies)
 CCDOTTはDODが資金スポンサーとなり官、企業、学会からなるコンソーシアムで、民間技術を軍事展開に利用する技術の開発のために設立されたFFRDCであり、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校内に置かれているが、管理は同校とMarAd、USTRANSCOMの共同管理である。CCDOTTに対する助成額は96会計年度280万ドル、97会計年度450万ドル、98会計年度450万ドル、2000会計年度400万ドル、2001会計年度750万ドルとなっている。
 
<1>高速シーリフト艇の開発プロジェクト
 本プロジェクトで開発される高速シーリフト艇に対する要求は軍民両用、外洋・沿岸用、速力40ノット以上、船体/コントロール・システム/推進システムは最新の高速艇技術を取り入れたものであることとなっている。
 
メキシコ湾岸地域海事技術センター(GCRMTC)
 GCRMTCはMARITECHやタイトルXIと共に米国造船奨励策の一部として造船業への技術移転を効率よく推進するために設立された研究所で、経費はONR、管理はニューオリンズ大学である。
 GCRMTCの研究成果は3ヶ月ごとにONR産業プログラム部(Industrial Program Department)に報告されている。ニューオリンズ大学は州立大学であるが米国造船業の中心が南部に移っており、またGCRMTCを抱え込んでいること等もあって造船造機学科の学生在籍者数はミシガン大学やマサチューセッツ工科大学より多く全米一となっている。GCRMTCはニューオリンズとアボンデールの2個所にセンター研究所を持ち、さらにマリン環境リソース情報センター及びシミュレーション・ベース設計センターの2つのサブ・センターを持っている。GCRMTCの研究者は積極的にNSRPのパネルに参加し、NSRP ASEその他の研究成果を造船所従業員に教育し訓練する責任を負っている。GCRMTCは年1回産業界から、また年2回大学から研究提案を募集している。研究提案が採用された場合、全ての研究は大学、造船業、その他マリン産業界との協力で実施される。2001年12月の時点での四半期報告書には19のプロジェクトの実施が報告されている。その内7つのプロジェクトは他研究所に下請けに出された。これらの研究で9つの特許が取得され、下記3件のソフトウエアが技術移転され、4件目としてクロム・フリー塗装の技術移転が進行中である。
 
・エキスパート環境マネージメント・システム
・信頼性、アベイラビリティ及び保全性/Ship NET
・船舶設計のローゼンブラット・ポートフォリオ
 
 2001年12月の四半期報告書に記載された19のプロジェクトの題名は下記であるが個々の造船所その他の企業への助成金の額は発表されていない。
 
<2>OSHA適合マネージメント・システム(OSHA Compliance Management System)
<3>滑走艇運動のアクティブ・コントロール(Active Control of Planning Hull Motions)
<4>微小カプセル技術使用減銅、長寿命防汚塗料(Reduced Copper、Long life Antifouling Coating through Microencapsulation)
<5>水上船に対する性能べース設計条件としての荷重及び抵抗因子設計諸ルール(Load ands Resistance Factor Design(LRFD)Rules as Performance−Based Design Criteria for Surface Ships)
<6>損傷モニター用大型繊維格子センサー・システム(Fiber−Bragg−Grating Sensor System for Shipboard Damage Monitoring)
<7>ドライドック・マネージメントの連続的改善(Continuous Improvement of Dry−docking Management)
<8>各種海象条件における減員された乗員数に依る作業達成の限界(Limitation of Reduced Crew Performance in Various Sea Sates)
<9>火災の熱により生ずる機械的応力に基づく複合材船体構造物の損壊(Failure of Shipboard Thick Composite Structures from Thermo−mechanical Stress of Fire)
<10>造船所における雷の探知及び距離測定(Light Detection and Ranging Application in Shipyards)
<11>軍民両用の3Mデータ・プロセッサー(3M Data Processors for Dual Use)
<12>船舶作業ロボット・ラボラトリー(Ship Works Laboratory)
<13>ベンダー造船所下請け開発契約――鋼板中の残留応力のモデリングとあらかじめプログラムされた溶接順序による部材の最適化(Modeling Residual Stress in Steel Plate and optimizing Parts Through Programmed Sequencing)
<14>KBS(knowledge Based System)社下請け開発契約――シミュレーション・ベースの作業負荷計画とヤードのスケジュール立案(Simulation Based Workload Planning and Yard Scheduling)
<15>MACSEA社下請け契約――ディーゼルエンジン運転特性の船上学習(Shipboard Learning of Diesel Engine Operating Characteristics)
<16>Gibbs and Cox下請け開発契約――商船構造基準の艦艇への応用(Adaptation of Commercial Structural Criteria for Military Use)
<17>Band、Lavis and Associates社下請け開発契約――ウォーター・ジェット吸水口、ノズル及び船体の一体化設計技術の開発(Development of Design Technology for Integrated Waterjet Inlets、Nozzles and Hull Forms)
<18>プロペラのスラスト・トルクの計測(Ship Propeller Thrust and Torque Measurement)
<19>Ashurstガバメント・サービス社下請け開発契約――高強度、防錆、溶接可能なAl−Sc合金を舶用に使うための最適化(Optimization of High Strength Corrosion Resistant Weldable Al−Sc−X Alloy for Maritime Application)
<20>エジソン溶接研究所下請け開発契約――船台組立て電子ビーム作業ツールの開発(Development of Erection Beam Fabrication Tools)
 
米国金属処理中核研究所 NCEMT(National Center for Excellence in Metal Working Technology
 NCEMTは非営利組織のコンカレント・テクノロジー・コーポレーション(CTC)に運営が任されているFFRDCである。NCEMTが実施している技術分野は鋳造、鍛造、表面処理、溶接、パウダー・インジェクション・モールド、熱延等型プレス、超塑性加工等である。NCEMTは海軍製造科学技術プログラムにより1988年に設立された研究所で、当然海軍からの資金援助が多いが、陸軍や空軍からの委託研究も実施しており、幅広い活動を実施している。過去NCEMTは海軍のManTechプロジェクトの仕事を多くこなしている。
 
<21>摩擦溶接の造船用HSLA−65鋼材への適用(Friction Stir Welding of HSLA−65 Steel for Shipbuilding)
 英国で開発された摩擦溶接FSW(Friction Stir Welding)の適用は従来高速艇のアルミニウムの接合等に限られていた。FSWはアークやヒュームを出さない環境に優しい技術であり、NCEMTでは板厚6.4mmのHSLA−65鋼材にFSWを使用し優れた溶接部機械性能を得た。
 
<22>低コスト商業用鋼材の高性能確認(Commercial Steels for Naval Surface Ships)
 NCEMTが開発した非破壊構造性能エレメント・テストがLPD−17の船体構造に適用され、市販のある種の鋼材が海軍の仕様を満たしていることが判明した。この結果海軍は強襲揚陸艦LPD−17船体主構造の鋼材をHY−80からABS EH36に切り替え、880万ドル節約した。
 
<23>最適溶接手順によるライフサイクル・コストの低減(Reducing Lifecycle Costs with Enhanced Welding Procedures)
 NCEMTは市販の溶接棒等の消耗品を使ってHSLA−65鋼材の溶接手順を最適化して高性能の溶接継手を得る研究を進めている。HSLA−65は在来の高張力鋼より優れた性能を持つ鋼材であり溶接部の性能が保証されれば艦艇のライフサイクルの低減に繋がる。空母CVN−77に全面的にHSLA−65を採用すると鋼材重量が4,300トン減少する。
 
<24>鋳造及び鍛造から溶接時余熱工程の除去(Eliminating Costly Preheat for Forgings and Castings)
 NCEMTは高張力鋳造品の水素クラックによる使用中の損傷や、高張力鋳造品や鍛造品の溶接時の余熱コストが非常に高いので、これを除去する技術を開発し造船所に供与している。現在余熱に要する費用はトン当たり1,500ドルであり海軍は年間1,100トンの高張力鋼鋳造品や鍛造品を使っているので本技術の適用によるコスト低減は165万ドルとなる。
 
大学運輸センター(UTC:University Transportation Center)
 連邦高速道路庁FHWA(Federal Highway Administration)と連邦輸送庁FTA(Federal Transit Administration)が資金を出し、米国内33の大学にUTCを設け、運輸関連の教育振興と研究開発を援助している。全体をまとめているのは運輸省(DOT)であるが個々のUTCの管理は各大学である。
 
<25>テキサス州におけるバージによるコンテナー輸送の可能性研究(Feasibility Study of Container on Barge Transportation in Texas)
 報告書提出:2001年8月、実施:西南地区UTC(テキサス大学運輸研究所)。米国におけるコンテナ貨物の輸送はトラックが主流であり、フィーダーバージによる輸送は東岸の一部を除いて一般的ではない。しかし陸上交通の過密化に伴いバージによる沿岸コンテナ輸送が見直されている。本研究はテキサス州メキシコ湾岸におけるコンテナのバージ輸送の商業性について調査したものである。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION