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<3>ポータブル・ロボット溶接システム(Portable Shipbuilding Robotics)
1994/95会計年度プロジェクト
コスト総額:1,250万ドル(民間630万ドル、TRP 620万ドル)
 米国造船業の生産性向上のためにPC、3−Dビジョン、溶接センサー等の高度ロボット技術を取り入れた軍民両用ポータブル・ロボット溶接システムの開発プロジェクトであり、主契約者はYOB Robotics、その他インガルス、バス・アイアン・ワークス、NASSCO、NSWCCD、カーネギーメロン大学、テキサス大学が参加している。
 TRPの成果についてDODはプロジェクト終了後ポトマック政策研究所(PIPS)に調査研究を依頼している。この報告書の中でPIPSはTRPが軍及び民間に大きな利益をもたらしたとしながらも、TRPで開発された技術が軍用としては必ずしも利用できない実情を報じている。TRPで開発された212の技術のうち僅か40の技術しか軍用として使用されるためのテストを受けていないのに対して、PIPSが調査した113のプロジェクトのうち37の製品あるいは技術は商用化され、さらに69件が市場に出る予定であると述べている。軍民両用民間マーケットで技術の開発ではどうしても民生用に分があることを示している。
 先端技術プログラム(ATP)は、開発リスクは大きいが比較的商業化が楽で見返りも大きい技術に適用されるプロジェクトで、NISTから出されている。ATPには2種類あり、1つは提案の課題に制限のないもの、他はNISTの方で課題を指定するものである。ATPは全て政府と民間のコスト・シェアリングで共同開発契約の形式をとっている。ATPの成果に対する権利は企業に帰属する。大学、政府機関、その他非営利研究機関とのジョイントベンチャーでATPプロジェクトを進めた場合でも成果の権利は企業側に帰属するが、その場合企業は非営利研究機関に補償する義務がある。
 海軍が民生転化の目的で進めてきたプロジェクトとしては、MARITECHプロジェクト以外に下記17プロジェクトがあげられるが、その大部分は民間企業が助成金を受けて参加し、開発完了の時点で民間にスムースに技術が移転されるように仕組まれている。予算規模は1996会計年度だけでも3億7,330万ドルに及んでいる。
 
・生産技術開発(ManTech:Manufacturing Technology)――造船業及び舶用機械工業を含む軍需産業の生産技術及び生産性の向上を指向したプロジェクトで現在もII−5章に示すように海軍の軍民転換プロジェクトとして続いている。
・国防科学プロジェクト――先進材料に関する研究、海軍力維持のために必要な新しいコンセプト、技術的オプションの開発(高温超伝導材料、セラミック応用等)。
・海軍軍民両用技術プログラム――海軍関連分野において米国産業の経済活力と競争力を高めるため軍民両用技術を開発することを目的としたプロジェクト。
・水上航行艦艇技術――低コスト/高品質の複合材船穀構造の開発、軽量複合素材デイーゼルエンジンの開発、その他艦艇に応用可能な船体、機関、電気に関する技術を民間企業、大学等を交えて開発するプロジェクト。
・ガスタービン技術開発――ガスタービンの出力を25%上昇させ、燃料消費量を平均して30〜40%減らすことの出来る復熱式ガスタービンの開発。現在ノースロップで開発最終段階に入っている。
・船上機器の改良研究――船殻、機械、電気システム(除推進システム)の改良研究で複合材使用。
・ポンプの開発――防衛環境での使用に合わせた民間機器のパッケージ化等。
・船舶の先進概念設計――船舶の製品寿命を通じてのコスト低減を図る研究、商船技術と艦艇技術の共有化研究、船上機器モジュールの研究等。
・水上航行艦艇用先進機関――水上艦艇用の推進、電気、補機要件を満たす低コストの先進機関及び補助機器の開発。
・環境保全及びロジスチック技術――非油性排水の船上処理装置、自動水中船体メインテナンス/モニター装置、自動船上給油装置等の開発。
・艦艇のエネルギー効率の向上――シリコン防汚塗料、太陽光発電装置、ロボット船体洗浄装置等の開発。
・船上廃棄物の処理――油水分離装置、プラスチック処理装置、パルプ化粉砕装置、固形廃棄物裁断装置等の開発。
・キャビテーション――水上艦及び潜水艦のキャビテーションの研究。
・シミュレーションに基づく船舶設計――先進視覚手法によるデジタル模型を使用した船舶の設計から引き渡しまでの期間を短縮する新しい設計技術の開発。
・素材技術――新しい防汚塗料、溶接時事前加熱する必要のない低合金鋼、非磁性ディーゼルエンジン用メタルマトリックス素材等の開発。
・先進技術の実証――艦艇用に即実用可能な高リスク、高収益技術の実証、例えば高速、低馬力
・SWATH船の開発。
 
 第3のNSRPプロジェクトはNSRPがASEの主役となるまでは比較的影の薄いものであった。1982年から91年の間約1,000万ドルの予算が配分されているが1992〜94年はゼロ、1995年から再び配分されているが全体で毎年3〜400万に過ぎない。プロジェクトの分野は「施設と環境」「表面処理と塗装」「設計工程と生産工程の一本化」「人的資源改革」「標準規格」「溶接」「産業工学」「職業訓練」と造船業全般に及んでいる。







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