日本財団 図書館


4 舶用工業
4.1 舶用エンジン(2001年1月/国際船艇)
 この20年間の中国の改革開放政策の結果、中国にはMAN−B&W、Sulzer、Wiartsila等のメーカーが入ってきている。
 中国の15の中小造船所を対象に1999年と2000年の舶用ディーゼルエンジンについて調査したところ、多くの点で非常に集中度が高いことがわかった。
 
1. 2ストローク中低速エンジン
 151機の2ストローク中低速エンジンのうち、83機(55%)が中国国産機、68機(45%)が輸入であった。国産機は、全て外国メーカーのライセンスのもとに生産されているが、外国技術の導入、特許、ライセンス購入等で中国の機械メーカーもかなりの水準となっている。
 滬東重機股有限公司、大連舶用ディーゼルエンジン、滬東重機上海造機公司、宣昌船舶ディーゼルエンジンが中国での主な低速ディーゼルエンジンのメーカーであるが、前掲2社と後の2社では製造量に相当差がある。中速ディーゼルエンジンのメーカーとしては、鎮江ディーゼルが、調査対象となっているのみである。
 
2. 機械部品
 中国国産機は、外国企業のライセンスのもとで製造され主な部品も輸入されている。部品を輸入に頼ることは納期、コストの面で問題となるが、特に、クランクシャフトは、1999年8月に、165,000USDだったB&W用低速ディーゼルエンジン用輸入クランクシャフトが、2000年8月には265,000USDとなったうえ、納期も間に合わない等の問題がでてきている。クランクシャフトは、現在、日本・韓国から輸入されており、競争相手から輸入しなければならないということはアンフェアな競争環境と言える。この環境を変えるため、国内メーカーは国産化率を高めるべきであり、クランクシャフトの場合1本20万USDのクランクシャフトが、年間100本として2,000万USDの市場であり、かつ成長を続けていることに配慮する必要がある。
 
3. 高い集中度
 調査した151機のエンジンのうち92機(61%)がMAN−B&W、45機(30%)がSulzer、Wartsila、その他は、Caterpillar、Mak、MTUで、主に中低速エンジンで9%であった。
 三菱重工業の低速エンジンは、中国市場では見られなかった。
 MAN−B&Wは、世界第1位の舶用機械メーカーであり、推進機器も販売しており、又日本・韓国を含む多くのメーカーが、MAN−B&Wの技術を導入している。
 中国の工場も、MAN−B&Wのライセンスを持っており、MAN−B&Wも香港から上海に支店を移す等、中国市場の重要性を認識している。こういう戦略が、他社に差をつける結果となっている。
 Sulzer、Wartsilaは大きく遅れをとっており、MAN−B&Wに比べ、燃費は良いが製造が複雑である。営業上もSulzerの支店は、まだ香港にあり、上海には事務所のみで、交渉もMAN−B&W程スムーズではない。Sulzer、Wartsilaの45機のうち39機は、輸入、6機は大連での生産である。また、その2社の中速エンジンは32機、低速エンジンは13機のみであり、MAN−B&Wが、61機の低速エンジンを生産しているのと比較すると、出力に大きな差がある。
 
4. まとめ
 発展する中国造船業は舶用機械の需要の増大をもたらすであろうし、市場の潜在力は大きい。しかし、一方でWTO加盟は、中国市場への日本・韓国・欧州の参入を容易にすることとなり、コスト、技術力、国際競争力とともに主要部品での新たな展開が重要となる。(2001年1月/国際船艇)
 
中国の舶用エンジンの状況
 
1. 中国の舶用主機メーカー
メーカー名 台数
滬東重機股有限公司 33 22
滬東重機上海造機公司 18 12
大連舶用ディーゼルエンジン 16 11
鎮江舶用ディーゼルエンジン 12 8
その他の国産エンジン 4 2
国産エンジンの小計 83 55
輸入エンジン 68 45
総計 151 100
出所: 2001年1月/国際船艇
 
2. メーカー別に見た中国の舶用主機市場
メーカー名 台数 市場シェア(%) 国産エンジンの台数
MAN−B&W 92 61 73(80%)
Sulzer 25 17 6(24%)
Wartsila 20 13 0
その他 14 9 4(3%)
出所: 2001年1月/国際船艇
 
4.2 輸入舶用ディーゼルエンジン(2002年1月/国際船艇)
 中国造船業の発展に伴い、MAN−B&W、Wartsila、Sulzer等の有力企業が、中国に進出し、中国で建造される船舶にその機関が搭載されている。輸入舶用ディーゼル機関について中国の造船所で建造された2000DWT/grt以上の船舶を対象に行った各社シェアの調査結果は次のとおり。
 
<調査結果>
 248台の大型ディーゼル機関の調査結果は、表1のとおりである。このシェアは世界におけるシェアにほぼ対応していると思われる。MAN−B&Wが60%のシェアを占め、日本のメーカーでは、ヤンマーが3台であった。(三菱重工業の低速舶用機関は購入契約の締結前であったことから、今回の調査には入っていない。)
 2001年、「国際船艇」に公表された調査(海事通信第3号参照)では、MAN−B&Wの機関であっても滬東重機股有限公司や大連舶用柴油机廠等の中国国内メーカーで生産されていれば、中国国内生産として整理されていたが、今回の調査結果は輸入先・提携先をベースに整理されている。中国国内生産の場合でも、その技術のほとんどは外国から導入されたものか、ライセンス生産によるものであり、主要部品も輸入品である。
 
表1 企業別シェア
(台数)
Suppliers Quantity(set) Market Share(%)
MAN−B&W 151 60.9
Sulzer 32 12.9
Wartsila 26 10.5
Mak 16 6.5
Deutz 12 4.8
Caterpillar 8 3.2
Yanmar 3 1.2
Total: 248 100
出所: 2002年1月/国際船艇
 
 
 出力合計、出力別で見た各社のシェアが表2及び表3に示されている。MAN−B&Wが、出力合計で75%、20,000馬力以上の機関では80%を占めている。このようにMAN−B&Wが中国市場で高いシェアを有しているのは、世界第一位のエンジンメーカーであるほかに、次の理由があると思われる。
(1)  世界的なライセンス生産により、高い国際競争力を有していること。
 日本・韓国の他、中国の舶用機関メーカーも、MAN−B&Wのライセンスを取得している。2001年の調査によると中国で搭載されるMAN−B&Wの機関も、その80%は滬東重機股有限公司や、大連舶用柴油机廠等の中国国内メーカーで生産されている。
(2)  MAN−B&W自身も、香港から上海に事務所を移す等、中国の船主・造船所を重視した営業をしていること。
 
 Wartsila、Sulzerは、エンジンの長所を生かして2位、3位となっているが、Wartsila、Sulzerの中国担当事務所は、香港にあり、MAN−B&Wとの営業姿勢の差が競争力の差となっている可能性がある。
 
表2 企業別シェア(出力ベース)
Supples Power(1000HP) Market Share(%)
MAN-B&W 2,865 75.2
Sulzer 423 11.1
Wartsila 364 9.6
Mak 91 2.4
Others 65 1.7
Total: 3,808 100
出所: 2002年1月/国際船艇
 
 
表3 各社シェア(出力別)
Power(HP) MAN−B&W Sulzer Wartsila Others
-10000 24 14 7 39
10000-20000 75 14 17  
20000-30000 36 1 2  
30000-50000 11 3    
+50000 6      
出所: 2002年1月/国際船艇
 







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION