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ヒアリングノート
【環境教育フォーラム清里ミーティング】
住所:〒160−0022 東京都新宿区新宿5−10−15 ツインズ新宿ビル4F社団法人 日本環境教育フォーラム
■特徴
 自然はさまざまな分野と密接につながっていることから、全国各地で研究・教育・行政・企業・NGO・NPOなど環境教育の現場で働く人々同士のつながり=ネットワークを大切にし、継続的に育んでいくことが大切である。そのために、お互いの活動を理解し、認め合い、共に考え、力を合わせていける場の基盤づくりを目的として開催される。
■ヒアリング実施状況
日時:2002.11.16〜18
場所:清里清泉寮ほか
■概要
 このイベントは16年続いており、参加者は北海道から沖縄まで日本各地から来ていた。しかし、今回の参加者180名のうち約半数が初参加で、昨年から急に新規参加者が増えたようである。その背景には、旧来関係者の同窓会的なイベントではなく、将来のための開かれたイベントに変えていきたいという主催者側の意向がある。この意向に従い変更された「環境教育フォーラム」というタイトルの通り、環境教育に関わる多様な参加者が訪れていた。
 その多様性ゆえに、主催者側が用意した各ワークショップや分科会の内容は、幅は広いものの環境教育に携わる者が解決しなくてはならない課題の解決策に関する議論にまで踏み込んでいない印象であった。一方で参加者は、主催者側が用意した分科会ではなく、勝手分科会を各所で開き、各々で議論を深めていた。参加者からの具体的な声として、「なぜ今回のフォーラムでは環境教育団体の具体的な経営手法やマネージメントに関する議論がされないのか?」といった意見が多かった。
 主催者側に属する環境教育団体と、一参加者として参加している環境教育団体とでは、抱えている問題や課題の内容が大きく異なり、広い議題で議論を試みても、話しが噛み合わないケースが多いと推察される。特に経済的な話題になると、「これからの環境教育を推進するにあたって」などの広いテーマでは、大企業の環境部から参加している参加者と、地方で半自給自足的な生活を送りながら活動している参加者とでは、感じている問題の根本は同じであっても、解決しなくてはならないと感じる問題へのプライオリティーは大きく異なる。
■ノート
 開催期間中には、基調講演、3分トークショー、親睦会、ワークショップ、スライドショー、ポスターセッション、分科会、情報交換会、が行われた。
□3分トークショー:
 本来は公募で話したい人を募り、3分間で話しをするというものらしいが、今年は公募が間に合わなかったため主催者から指名された9人が3分ずつ話しをした。自然学校経営者、民間企業経営者、民間企業研究者、大学教授と様々な背景のスピーカーが、各々のテーマで環境教育について話しをした。全体的に「人」にフォーカスした内容が多かった。世代交代における問題や課題、人の心に届くプログラムの在り方、環境教育に関わる人の繋げ方など。
 その中でも興味をひいたのが、三宅島より参加の海野氏(オーシャンファミリー)の講演であった。彼の結論として、「海は共生感覚を養う上で最適な場所と環境であり、環境教育のみならず色々な教育のシーンで高い教育的効果を発揮する」と述べていた。これは彼が共生感覚を養うことが環境教育の目的だと認識されていることから導き出された結論だと考えられる。
□ワークショップ:
 ワークショップは二日目の午前と午後に行われた。公募制でワークショップを開きたい組織・個人がプログラムを用意し、参加者は事前に主催者側へ参加したいワークショップを申請し、主催者側が人数調整などをして振り分ける方法がとられていた。午前の部は「環境教育指導者と研究者、カリキュラム開発者の繋がりを作ろう」、午後の部は「Environmental Education in English(3Es)〜英語で環境教育」に参加した。
午前:「環境教育指導者と研究者、カリキュラム開発者のつながりを作ろう」は約50名の参加者が集まる比較的人気の高いワークショップだった。参加者の所属も幅広く、行政関係者、大学関係者から民間企業、自然学校関係者、NPO関係者と環境教育に関わる殆どの立場が揃っていた。
プログラム:このワークショップでは海洋をトピックスとしたケーススタディーが行われた。プログラム自体はそれほど珍しいものではなく、砂を使った海岸の違いを創造するゲームや、アメリカ海洋教育の教材に沿って、りんごや紙皿を使って地球環境における食糧問題を考えるプログラムなどであった。むしろワークショップの最後に行われた、参加者自身のキーワードを頼りにチームを作り、興味の似た者同士のディスカッションの方が盛り上がった。
午後:「Environmental Education in English(3Es)〜英語で環境教育」は約20名の参加者で行われた。主旨は、環境教育を行う際、同時に英語教育的手法を用いることのメリットを体感するものであった。今回は絶滅危惧種に関する英語の文章を使い、その中から情報を探してワークシートを埋め、各参加者が担当した種に関して発表するというプログラムが行われた。また、自分達がここ数日で口にしたものを選び、食物連鎖について考え、英語で発表するというプログラムも行った。
 本質的に、英語を使うことで日本での考え方とは異なる思考方法が働き、日本語で行うのとは違う効果があることが感じられた。また英語の学習にもなるという点から、参加者側は費用対効果が高いと判断することが多いだろう。このことから集客性が高くなると予想される。実際に保護者からの満足度は高く、通常の自然体験プログラムを行う際の料金よりも高い料金を払うという点からも、一般ユーザは高い付加価値を感じているらしい。学校教育現場へ導入する際も同じことが言えるであろう。
■参加の感想:
 フォーラム全般に感じたこととして、主催者側が脱同窓会を目指してイベント名や主旨を変更し、イベント自体の変革に着手したことは評価に値すると思う。しかし、始まったばかりということもあり、まだ主催者と参加者の大多数の間には大きなギャップがある。特に自然学校などの経営は厳しい所が多く、環境教育を発展・推進していくことを考える際にも、まずは関係者の経済的安定が必要不可欠であり、この点が今回のイベントでの公の議題とならなかった点が残念であった。
 
【エコツーリズム国際大会】
住所:〒960−0005 沖縄県那覇市天久1−6−1−202
「エコツーリズム国際大会・沖縄」事務局
■特徴
 国際エコツーリズム年を記念して、新しい観光業のあり方としてエコツーリズムに注目している沖縄県において、「エコツーリズムによる地域の自立的発展と多様性の維持」をテーマに国際大会が開催される。「島嶼地域におけるエコツーリズム」をキーワードに、世界各地のエコツーリズムを推進する地域が共通に抱える課題と展望について議論される。
■ヒアリング実施状況
日時:2002.11.27〜2002.12.1 場所:沖縄コンベンションセンター
■調査項目
 エコツーリズムの現状と課題、および海洋教育の可能性を探る。
■概要
 エコツーリズムは高まる環境への関心と、旅行業会の活発化による経済開発の両面から大変注目されている旅行形態(主義と言った方が正しいかもしれない)である。実際、大会にも多くの関係者が参加し、実践報告や議論などが活発になされていた。
 環境と観光資源を持続可能にするために、旅行者自らが環境への負荷と地元への還元を考え自分の行動をコントロールすることが、エコツーリズムの主要な考え方と言えるだろう。それによって、単に観光業界が潤うだけでなく、一般市民の環境への配慮をも高め、現在人類にとって最重要課題だとも言える環境問題を解決するための第一歩になることも大いに期待できる。
 しかし、現段階では「エコツーリズム」という言葉だけが先走りしてしまっているようだ。この国際大会でも、事業主間あるいは地元との軋轢や利害関係の調整、利潤追求とマスへの対応、ユーザの視点の欠落、言葉や行為の定義・研究の不十分さなどまだまだ議論される必要があることが指摘された。また、環境教育的な側面での議論(インタープリテーション能力など)がなされなかったことや、エンドユーザと真の意味での地元住民が参加していないことは大きな問題だろう。
■ノート
 基調講演や事例報告、パネルディスカッション、フィールド視察、各種分科会などが開催された。
□基調講演
 デビット・アンダーセン氏(建築家)より、とりわけ島嶼地域において行なわれているエコツーリズムの現状と、その意義の浸透度に関して講演が行われた。エコツーリズムこそ環境持続が可能な産業であり、未来があるため、早くその指針を定めなければならないと強調された。
□事例報告「エコツーリズムによる経済効果」
 富川盛武氏(沖縄国際大学教授)より、西表島でのエコツーリズムの経済効果についての研究報告がなされた。教授によると、エコツーリズムの定義を1.環境ガイドが付いている、2.観光客が自然に親しむ、の2点のみとした場合、入客数は少ないが単価が高いため、生産誘発額はマス:エコ=3:1程度までになっているようだ。それでもまだマスが西表島の経済を牽引していると言えるが、住民のエコツーリズムヘの期待は高く、今後その需要は拡大すると考えられるため、それに向けて、ガイドラインの整備や、ゴミ問題、石垣島への経済効果の漏れ、住民との軋轢など様々な課題を解決する必要があると報告された。リサ・チョエギャル(ネパール)より、ネパールでのエコツーリズムの現状が報告された。ネパールは観光以外で外貨を獲得する手段が無く、エコツーリズムに真剣にビジネスとして取り組むべきであるとされ、政府もエコツーリズム戦略を立てているが、テロの影響もあり、今年は33%の減少が見込まれているようだ。また、その地域にあったエコツーリズムを探るべきだと報告された。
 アウトゥロ・アレジャンドリノ(フィリピン)により、フィリピンのボラカイ島での事例が報告された。ボラカイ島は常にメディアに取り上げられ数々の賞を受賞し、政府による地下水や土壌の調査を行い、地元民によるサービス改良の努力も成されている。また、観光に関わる雇用も州内から行うこととなっているようだ。島内での競合を避けるような配慮、ツーリストなどソフトインフラの整備など、観光サービスを育成し、自立を促しているということだった。
□パネルディスカッション
 西表島での開発計画を例に議論された。マスタープランの重要性や、エコツーリズムを支える主体全てが参加し議論されることが重要であり、情報公開と住民参加がこれからのキーワードとなるだろう。
□フィールド視察
 屋我地島饒平名海岸の干潟マングローブ散策に参加した。屋我地エコツーネットのガイドにより干潟に入り、オヒルギを間近で観察し、触ることも出来た。シオマネキやトビハゼなども観察した。自生のマングローブは少なく、ほとんどが植樹したものだった。まだまだ解らないことが多いようで、これから地元の住民や植樹をした中学校などにより追跡調査がなされ、同時にガイドプログラムが向上していくことが期待される。
□分科会
 「エコツアーサイトの管理・運営−ゾーニング、ライセンス、行政−」と「資源の保全と活用−地域多様性の維持−」に参加した。ここでもやはりエコツーリズムに関係する全ての人が関わって、のこされた課題を解決していくことが重要であることが話された。







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