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はじめに
 本報告書は、競艇公益資金による日本財団の支援を受けて実施した「海洋ビジョンに関する調査研究」の成果を取りまとめたものです。
 地球表面の70%を占める海洋は、大気や陸域との相互作用を通じて地球環境の調和を図り、人間をはじめとする地球上のすべての生命を維持する上で必要不可欠なものです。この海洋は、海上交通や観光、レジャーなどの場として利用されるほか、漁業資源やエネルギー資源、鉱物資源など様々な資源を提供しています。
 1960年代に政治的独立を達成した新興諸国などの間から資源ナショナリズムが台頭し、より広い領海やより広い漁業水域を求める声が高まり、海洋自由の原則から海洋分割へと世界の流れが変わろうとしていました。
 このように利害が複雑に交錯する中で、海洋の法的秩序を包括的に定める「海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)」が1982年に採択され、1994年に発効しました。国連海洋法条約では、沿岸国の領海を12海里に拡大し、200海里排他的経済水域および大陸棚における生物・非生物資源に対して沿岸国の主権的権利を認める一方、沿岸国に対して資源の管理、海洋環境の保全などの義務を定めています。
 1996年に国連海洋法条約を批准した我が国は、我が国周辺海域の管理を委任されたことになり、各国と協力して生物資源の保護育成や環境保全などに取り組むことが義務付けられたことになります。また、国連海洋法条約の前文では「海洋の諸問題は相互に密接に関連を有し、全体として検討される必要がある」と述べていますが、我が国の海洋行政は多数の省庁に細分化されており、海洋問題を総合的に取り組むための仕組も、また総合的な政策を策定する基本法もないのが現状であります。
 そこで、平成13年度には、海洋を総合的な観点から捉え、今後重点的に取り組むべき問題点について審議し、「海上交通と安全保障」「海洋横断輸送システム」「船舶起因の環境問題」「次世代海洋構造物」「海洋エネルギーの利用と将来展望」「水産資源の総合管理」「沿岸域の総合管理」「海洋・環境教育の現状と今後のあり方」について、取りまとめました。
 本年度は、昨年度に引き続き、利害が複雑に交錯する沿岸域での問題事例とその対応をとりあげる「沿岸域総合管理」の問題、海洋日本といわれながら海洋への関心が総じて低い我が国の「海洋教育」の問題、および不審船問題や拉致・密入国の問題などを抱える我が国の海上における「安全保障」問題について取りまとめました。
 本事業は、横浜国立大学来生新教授を委員長とする「海洋ビジョンに関する検討委員会」の各委員の熱心なご指導とご審議・ご協力によるものであり、これらの方々に対して厚くお礼申し上げます。
 
平成15年3月
シップ・アンド・オーシャン財団
会長 秋山昌廣
 
海洋ビジョンに関する検討委員会 名簿
(敬称略)
 
委員長 来生 新 横浜国立大学大学院国際社会科学研究科教授
委員 鈴木 英之 東京大学大学院工学系研究科環境海洋工学専攻助教授  
  中原 裕幸 (社)海洋産業研究会常務理事・東海大学講師  
  馬場 浩 東京水産大学水産学部資源管理学科助教授  
  真山 全 防衛大学校国際関係学科教授  
  横内 憲久 日本大学理工学部海洋建築工学科教授  
  渡辺 豊 東京商船大学商船学部助教授  
事務局 工藤 栄介 シップ・アンド・オーシャン財団 常務理事
  玉眞 洋
海洋政策研究所
  仙頭 達也
菊地由美子







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