われら地域市民
サラリーマンよ街へ出よう!
仕事とボランティアの両立を実践
井上 忠志さん(茨城県北相馬郡藤代町)
「会社・家庭・地域という3つのステージをバランス良く楽しむのが私の生き方」と言う日本電気株式会社社会貢献部勤務の井上忠志さん(49歳=写真)。仕事一途に頑張っているサラリーマンの皆さん、井上さんの実践するこの生活スタイルをちょっと試してみませんか。
「これは自分がやる仕事」と志願したとか。
1991年、会社に社会貢献部という組織ができました。その通知を見た時、これは間違いなく自分が行くべきところだと思ったんです。早速会社の自己申告制度を利用して異動を希望しました。希望通り92年から10年間、フィランソロピーエキスパートとして、主に社員が社会福祉活動とボランティア活動に参加するための支援をしています。
仕事は思い通りにできましたか?
会社からは社員のボランタリーな心をもっともっと広げ熱くしてほしいと言われ、いろいろな提言をしてきました。しかし会社の仕事は経済活動が中心、私のやってきた活動は違う価値観で動く世界です。大勢の社員を集めてボランティア活動をやる時、会社の意図と異なる考えを持った社員に煽動されたらどうするか、活動の最中に事故が起きたら会社としてどう対処するのか、外の団体とつき合っているけど信頼できる団体なのか、といった難題が多々ありましたが、話し合いや自分の経験を頼りに一つずつ克服してきました。
阪神・淡路大震災あたりを転機としてボランティア活動に対する社会の目が変わってきましたね。と同時に私のやってきたことも会社の中で評価されるようになり現在に至っています。
「3つの生活ステージ」をそれぞれ大切にしている生き方ということですが。
私の生活のステージは、会社・家庭・地域の3つです。多くの人は会社という3分の1のステージしか考えていない。豊かな生活を営むためには、この3つをバランス良く持っていなければいけないと思います。家庭や地域社会との関係が上手くいかなければ仕事をやるエネルギーなんて湧いてきませんよ。
仕事は、すればいいというのではなく“いい仕事”をしなくてはいけない、“いい仕事”をする道具、それは情報だと思うんです。外に出て社会のことを知り、より良い情報を仕入れることが必要です。その環境をつくる要素こそ家庭であり地域です。ボランティアをやる意義もここにあると思います。仕事とボランティアは両立するものです。
ボランティアを始めたきっかけは?
会社に入ってすぐ労働組合青年婦人部のレクリエーションなどでリーダーをやったことがきっかけでしょうか。多くの人をまとめ楽しませる技術が必要と感じ興味を持ち勉強をしました。勉強の成果を発揮できる場を求めて職場から地域へと活動の場を広げていったのです。自己実現の喜びと職場、年齢を超越した友人が多く得られるのが楽しくて。
地域のボランティアグループの仕掛け人。
私の住む藤代町は宅地造成が行われてから約30年、定年退職者やこれから定年を迎える方が大勢います。その中には地域の会合など公の場に出てこない“地域引きこもり”の方も多い。そんな現状なら、自分が呼びかけ皆で友だちづくりから始めたら、きっとその人たちが集まってくるはずだと思っていたところ、町の社会福祉協議会が「お父さんボランティア講座」を企画しているのを聞きました。
ボランティア講座は私の得意な分野、私に幹事役をやらせてくださいと企画からこの講座に参加したんです。定年退職者と現役の人が、半々位30人集まりました。
3回の講座終了後「このまま解散してしまうのは寂しいですね、来月飲み会でもやりませんか」と提案したところ、23名が賛同し「藤代町お父さんの会」ができました。今年4年目で今34名のメンバーがいます。
年間を通じて行う行事はさつまいもの栽培。地元の知的障害者とその家族も招いて5月に苗を植えます。11月の収穫祭はバーベキューパーティー。皆で歌を歌ったりして楽しい1日を過ごします。女性のボランティアグループと共同で「料理教室」を開催し、男女のボランティアグループの交流も。知的障害者やボランティアグループ同士の交流といったプラスアルファの要素を取り入れることが単なる“お楽しみ”の会ではなく意義ある会として長続きするコツですよ。
これからボランティアを志す後輩サラリーマンにアドバイスを。
時間がない、きっかけがない、情報がないというのは理由になりません。自分を違った世界に身を置いて覗いてみよう、という冒険心みたいなものが欲しい。地域社会にはいろいろなタイプの人がいます。そんな人たちと付き合う楽しさを、何かのきっかけを見つけて味わってみては。
(取材・文/三上 彬)
|
「藤代町おとうさん友の会」活動から。おとうさんの料理教室で、女性のボランティア団体の皆さんと楽しく交流 |
|
年2回の町の障害者のつどいで「ちゅうさんとうたおう」コーナー担当。ギターで大盛り上がり! |
コラム
週末の時間を自分の時間・家庭との時間・地域社会のための時間・自由な時間の4つに分け、次々と目標を達成していく井上さん。健康管理にも熱心だ。19年間完走を続けているフルマラソンのため、競技日前の5か月間の休日には早朝20〜23kmは走り込む。7年前には地域でスクエアダンスクラブを設立、38人のメンバーに指示を出すコーラー役を務め、本場アメリカの大会にも2回参加した。
|