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The Fishery: Lessons Learnt from the Japanese Experience
by Yoshiaki Matsuda
Kagoshima University, Japan
Introduction
1. The Post-war History
1) Democratization in the fishery
2) From coastal fishery to offshore fishery and to distant-water fishery
3) Economic growth
4) Oil crises, trade liberation, and UNCLOS III development
5) 3K (Hard, Dirty, and Dangerous) jobs
6) The Code of Conduct for Fisheries 2001
 
2. The Failures: Mis-management of the opportunities
1) The 1962 revision of the Fisheries Law
2) Public investment
3) Fisheries Cooperative Associations (FCAs)
4) Responsible fisheries
 
3. The Success Story: Hokkaido Scallop Fishery
1) Hokkaido fisheries in the 1960s
2) Hokkaido Fisheries Cooperative Associations
3) Fisheries resource enhancement
4) Development of the scallop fishery
5) The scallop fishery today
 
4. Roles of the Fishery in the Society and the Marine Development
1) Contribution to the society as an in-between land and sea
2) Contribution to the food security
3) Contribution to the environmental security
4) Contribution to the rural economy
5) Contribution to the national security
6) Contribution to the marine development
7) Newly developed NPO marine forest project
 
5. Conclusions
1) Responsible fisheries
2) Accountability
3) Roles of fisheries in the marine development in the 21st century
 
(座長Dr.Williams)おはようございます。私はメリー・ウイリアムズです。私はICLARM(世界漁業センター)の所長です。私の同僚のゲレロ氏が現在は事務局長を務めています。フィリピンの海洋及び水産資源開発研究機関の事務局長です。私と一緒に最初のセッションの議長を務めます。2番目のセッションではゲレロ氏が議長を努めることになっております。
 
(座長Dr.Guerrero)みなさんおはようございます。今日、議長をメリー・ウイリアムズ博士と共にできることを栄誉に存じます。皆様方と非常に実り多い議論が出来ることを楽しみにしています。
 
(座長Dr.Williams)それでは時間をなるべく有効に使いたいと思いますのでこのプレゼンテーションでも、議論の前にプレゼンテーションをしていただきますが、議論を行って何らかの結果や皆様方の意見を出していただきたいと思います。将来的な行動や問題をこれから検討していくためです。今朝聞いたところでは、いかにこのPACONが実際に将来の仕事や会議が、またこの調査研究が政策に適したものになるかという話がありました。このPACONインターナショナルの新会長を務める堀田健治教授のビジョンは、その社会的、経済的そして政策に関連した部分の海洋調査の技術を太平洋地域で進めていきたいということだと思います。
 今朝マーガレット・ライネンさんが基調講演を行い、そして今日のディスカッションの一部にも参加してくださるのですが、そのトピックのいくつかの中の一つが漁業の課題ということです。海洋生物学者や技術者、工学者に対しての課題ということで、この中で漁業を複雑なやり方にしていかなければならないということです。漁業の資源は大変大きな影響を様々なものから受けています。そしてまた注意深くどのように広く、どのくらい細かくそれぞれの問題点を検討するかという事にも注意を喚起されました。非常に細かい点で漁業資源についてどのような影響があるか、漁師の家族、住宅状況、特に熱帯地域の小さな島嶼国家には非常に貧困な漁業家庭が多々あります。気象変動の影響を漁業については考えるべきであります。また、世界貿易も大変大きな影響を漁業にもたらしています。漁業問題のスケールは非常に大切な部分があり、どのように検討していくかが大事です。基調講演の中で話がありましたが、教育啓蒙活動が必要です。科学者やエンジニアだけでなく新たな世代の政策担当者についても作っていくべきであるということです。この漁業の課題にどのように向かいあっていくべきか、このセッションの結果は大変大切であると考えています。いくつかのメッセージを政策担当者に対して渡し、それを全体の開会の辞としていかに政策が漁業に関連するか、今朝のセッションでは4人の方に話してもらいます。
 では、最初のスピカーを紹介します。日本はもっとも進んだ漁業手法を持っています。また日本は世界でも一人あたりの水産物消費量が最も高い国の一つであります。まず、最初は松里寿彦先生にお願いします。それから山本正昭先生、松田恵明先生という順番でお話を賜ります。それからスリランカのシンサ・ペレラ先生に4番目のスピーカーとしてお願いします。後半はゲレロ先生に議長を務めていただき、2人は午後のスピーカーとなっていただきたいと思います。
 松里先生はすでに傑出したキャリアをお持ちです。現在は独立行政法人水産総合研究センター養殖研究所の所長をしていらっしゃいますが、その前は国際的な開発計画の担当もしていらっしやいました。日本の他の機関の水産研究センター、あるいは農水産関係やFAO(ローマの食糧機関)にも努めていらした経験もあります。それでは松里先生お願いします。
 
(松里)おはようございます。まず、最初に大変丁寧なご紹介をいただきました座長にお礼を申しあげます。それからこのような席にお呼びいただいた事務局の皆様に感謝いたします。時間が約lO分足らずということですので少し急いで説明します。私の演題は日本の漁業水産業の現状と問題点に絞らせていただきます。ただし私自身の専門は水産増養殖であり、ディスカッションで何か質問がございましたらお答えさせていただきます。まずは我が国の水産業の現状をお話いたします。
 
「日本の水産業の現状と問題点」
 日本の場合、1960年から1998年迄の最新のということになりますが、日本の漁獲組成は「ま鰯」にかなり依存しています。それから「鯖」、「鯵」、この3つの魚種の影響が大きいということはお分かりいただけると思います。あとはそれほど大きな変動はありません。この3つは浮魚資源といい大変動を起こしています。特に「ま鰯」に関しては、江戸時代の前から記録にある限り数十年周期で資源量が変わっていて、今が資源の一番少ない時期にあたっています。一気に落ち込んで、どんどん減っています。我が国の資源学は比較的進んでいる方ですが、それぞれの魚種について総資源量の試算値を出しています。例えば「ま鰯」が「全部でどれくらいいるか」ということです。これが総資源量です。これが実際の漁獲量です。当時の約3,000万tから我が国周辺の総資源量が落ちていることが重要です。例えば漁民が27万人位しかいませんが、その中で沿岸漁業と沖合漁業に分けると沿岸漁師がなんと23万人、遠洋の漁師が3万9,000人くらい従事し、船の数が実に23万隻あるとしています。さらにこれをもう少し小分けすると5t未満の船から、数十t、数百t、数千tの船と分かれています。それで総漁獲量は大体このくらいの桁で、お金に換算するとこうなるし、ton数ではこうなります。668万tということになります。そのうち海の割合と内水面の割合がこれくらいで、日本は内水面の漁獲量が非常に小さいという事が分かります。それからもう一つ養殖が弱々しく、他に比べると小さいのです。金額ではこの中のランクでは沿岸漁業と並んで大きいのですが総額が数兆円単位ですので、養殖はその中のこのくらいのレベルだという絵です。これは日本の漁業全体を説明する絵です。これまでに話したのは漁獲高についてです。
 次は魚介類の需給です。一見同じように見えますが違います。これは元魚換算という漁獲高に直結しています。そのため例えば輸入したりしているもの、魚粉で輸入する場合、それに元魚換算の操作を加えた数字です。
 国内生産量574万t、輸入量588万tと数量がすでに逆転しているのがお分かりだと思います。実際に鮮魚換算すると違うのですが、この場合、魚粉等に加工されたものが入ってきているのでこうなります。輸出がこれくらいで非食用がこれくらいです。これは魚の需給を考えると非常に重要な数字です。問題点としては、日本の漁業従事者がどんどん減っている傾向があきらかです。60歳以上の年齢構成が増加し、30%を超えています。
 日本沿岸の魚種別の漁獲傾向トレンドです。ぱっと見てお分かりのとおり増えているのは「ごま鯖」が増えています。このようにわずか何種類かの魚が増えているだけです。あとは横ばいか下を向いているかで、これが日本の沿岸の資源のトレンドなのです。そのことをうけて、日本国内では自国で供給する量がどんどん落ちています。1960年〜1998年までのデータではトレンドとしてはかなり下がっています。最近になっても、98年から更に下がっています。日本の自給率が下がることによって海外からの輸入のチャンスが増えるということが言えますが、価格の問題も関係してきます。後で松田先生からご発表があるので何か触れて頂けるかもしれませんが、要するに魚が異常に高いという事がこれを見ればわかっていただけると思います。日本の場合、魚は需要が非常に高く、価格が1960年位を「1」とするとこのように上がっていきます。ですから魚は高いものだという感じがします。世界全体でも伸びていますが、中国の漁獲の増加をどうとらえるかが難しいのです。特にこの中では内水面の養殖が非常に大きな伸びを示しています。こちらでは漁業国で有名な国以外の他の国の漁獲が伸びているのが明らかです。
 我が国では実は漁業従事者が最近減っており、漁獲と総資源量も減っています。漁民の減り方に比べると総資源量の減る割合はそう大きくはないですが、それにしてもこれはどういうことかと言うと、総資源量の中で人間が漁獲している割合が問題なのです。平成12年では天然魚の漁獲率が50%を超える魚がいるという事です。信じられないことで、これは釣り堀でも50%の魚を釣るということは難しいことで、ここでは系、群ごとに書いてあるので同じ魚種が向度もでてきます。資源学的には系、群で分けた方が正確で、普通常識的には20%、25%くらいが妥当だろうとされ、天然資源の25%というのは非常にすごい量なのです。これくらいが妥当な量なのではないかといわれているのですが、それよりもかなり多い量をとっています。理由として漁獲のための漁具、漁法等が発達したことがあげられます。漁船の馬力だけでなく、一方では漁民が減りつつある、高齢化しつつあります。しかしながらそれを上回るように漁獲能力が上がっているということです。
 私が提案したいのは、この現状を変えるために何よりもまず、科学的な根拠に基づく漁獲資源管理が大切なのです。これ以外にはありません。もう一つは魚の利用の仕方ですが、日本はかなりいろいろな種類を使っています。世界的にみると、例えば「タラだけ欲しい」「サケだけ食べたい」というように漁獲物の対象がかなり限られたところもあり、まず世界的には科学に基づいた漁獲管理をしなければならないということです。もう一つはなるべく生態的利用と呼ぶような一つの魚種に偏ることなく、まんべんなく世界中の水産資源を利用すべきではないかを申しあげたいと思います。以上です。
 
(座長Dr.Williams)大変包括的で重要な日本の漁業を総括して下さいましてありがとうございました。今お話があったご発表について松里先生に何かこういう点を聞きたい、あるいはこういう点をもう少し伺いたいということがございましたら、どうぞおっしゃってください。
 
(質問)松里先生は先程特定の魚種ではなく全体的な生態系の中での漁獲を考えるべきだということをおっしゃいましたが、それでは日本の科学者が全体的な生態系と漁獲量について計算量をどのようにみているのかを伺います。
 
(松里)日本では伝統的に一つの魚種に限ってもかなりいろいろな段階で魚を利用しています。例えば有名なのは「ま鰯」です。「ま鰯」は小さいサイズの「しらす」、少し大きい稚魚のサイズの「かえし」、さらにはもう少し大きいサイズ、さらに成魚と一種類の魚でもいろいろな段階で利用しています。それから我が国ではもともと魚食の国だったせいか、食べられるものは何でも利用するというところがあります。やや特異な例ですが、すでに日本はFAOと共同で今から十数年前、京都で大きな漁業に関する国際会議を開いて京都ストラテジーを発表しました。その中で生態的漁業を提唱して皆様方の賛同を得たところです。その中には当然クジラからアミまでが含まれているということです。私自身もきちんと科学的に知見をチェツクし管理しながら、あらゆる水産資源を利用していくのが正しいのではないかと思っていす。
 
(質問)先程世界の漁獲量のグラフがありましたが、世界の漁獲量が増えているのは養殖が増えているからなのでしょうか。また、日本で漁獲量が増えているのは養殖が増えたせいもあったのでしょうか。
 
(松里)区分がやや問題となっています。ご存知と思いますが、日本はサケ、マスの放流事業をやっていて、日本では「シロザケ」だけでも16万tぐらいの生産をあげる力があります。実はそれは漁業に入っていまして、いわゆる天然資源扱いされているのですが、これは養殖資源にカウントすべきだというFAOの考え方もあって養殖に入れている国もあります。多少そこら辺が混乱しています。日本の場合はシロザケの漁獲は養殖に加えられていないということです。したがって1960年以降あまり養殖漁業の生産が伸びていないのです。
 
(質問)先程、漁獲量の減少という話がありました。20年前の京都会議の時にはそのような話は出ていなかったのではないかと思いますが、その後、全体的に漁獲量が落ちています。本当の科学的な問題点とはどのようなことなのか、ほんとうにどのような科学的な課題があるのか、漁獲量について、そして日本でまた世界でどのようなことが一番科学的な問題なのか。京都会議以降対応できていない点についてお伺いしたいと思います。
 
(松里)大変ありがたいご質問でして、本来私はポリティカルなこういうものを説明するよりは、研究所の代表ですので研究の問題点を話した方がよろしかったかもしれません。私たちの一番大きな問題は資源の推定学、漁業資源がどのように変動していくかであり、その科学的解明が非常に難しいのです。これに全力をあげて取り組んでいます。一方、これは我が国の沿岸の話ですが、最近の日本の沿岸の生産力が多少変動していると思われます。そのことの科学的解明が必要だということです。増養殖については、今まで30年に亘る長い間我が国では、海洋牧場の技術開発を行っていました。しかしながら本当に海洋牧場によって漁業資源を増やすまでにはまだ至っていません。これはシロザケの例を除いてということです。私たち増養殖の研究者は、ほんとうに資源を増やすことへの技術をきちんと作っていくことをしなければいけないのです。しかも早急にしなければいけないと考えています。研究上、科学上何が問題かというと、増養殖に限って話すと、海産魚類は帰巣性という性質を持っているように思われます。これらを科学的に解明しない限り本当の意味でも海洋牧場の技術は出来ないと考えています。
 
(質問)先程、日本の水産業の養殖についての話がありました。養殖について日本はリーダーだと目していますが、「うなぎ」「サケ」等食用のものについて、特に開発途上国は魚粉を輸入する上で問題があります。それをどのように養殖に関して考えていったらよいのでしょうか。
 
(松里)たくさん取れる魚もありますが、多獲魚をどのように利用するかということに尽きると思います。私たちは養殖ということを一つの加工利用と思っています。日本では加工技術以上に、生の新鮮な例えば「イエローテール」であるとか「カレイ」であるとかが非常に高価なのです。それだけ市場価値があるということです。一種の加工というふうに考えていただけないかと思います。フィッシュミールは人間も食べられるし、それを養殖魚にやって魚を作るという批判は常にありますが、増養殖は一種の加工利用技術であると我々は考えています。







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