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26. ホスピスにおけるチーム医療の組織と経営に関する研究
静岡県立静岡がんセンター 緩和医療科・部長 安達 勇
 
I 研究目的・方法
1、研究背景
 日本においては、1990年に緩和ケア病棟入院料が医療保険で定額支給されてから、緩和医療施設が急速に増え2002年12月には全国で113施設、病床数も2165床となり、数のうえでは先進国に近付きつつあるが、緩和医療の質的な面では全体として開発途上にあると認識されている。特に緩和ケアのチーム医療は保険医療面での保障がないこと、また人的資源や医療者の認識不足から未熟の段階にある。
 我々の静岡がんセンターは 2002年9月に新設され最先端の陽子線、PETなど有し、各臓器診療科以外に癌診療を多方面から支援する診療科を含めて36診療科と615の病床数を有する本邦最大の地域がん診療総合センターである。さらに地域における包括的、継続的がん医療を保障するために緩和医療科に50病床を設けた。またスタッフ面では緩和専門医師5名、がん専門看護師看護師3名、がん疼痛やホスピスケア認定看護師3名、WOC4名などの専門看護師が存在する。更に当センターでは他のがんセンターでは軽視されている精神腫瘍医や臨床心理療法士以外に、理学療法士、作業療法士、言語療法士口腔衛生技師、ボランティアコーディネーターなど専門職員を有している。このようなハードとソフト面で充実したがん診療基盤を背景にして、日本における先駆的ながん緩和医療学の開拓を目指している。
 緩和医療はWHOのpalliative careの定義でも述べられているように、がん疾患の初期段階から終末期において身体的、心理社会的そしてスピリチュアルに至るまでがん患者とその家族を包括的継続的にケアしていくことが求められている。一方厚生労働省はがん医療におけるチーム医療を育成する目的で、昨年から医療保険で「緩和ケア診療加算料」を新設した。その基準として専従緩和医療医とがん看護認定看護師、専任の腫瘍精神科医が診療チームとして最低の条件となっている。このように医療行政面でもチーム医療の重要性を認識し促進する状況下にあることから当センターが中心となり、日本の保険医療制度におけるがんチーム医療のモデルを構築する意義は極めて大きく、日本の緩和医療将来において質的向上に大いに寄与するものと考える。
 
2、研究目的
 このようなハードとソフト面で充実したがん診療基盤を背景にして、日本におけるがん緩和チーム医療のモデル構築を目的とする。具体的には、緩和ケアチーム医療の病院内における位置付けを明らかにする。多職種チームの特性と専門性(Medical Physical Care、Nursing Care、Psychological Care、Psychosocial Care)を明らかにする。即ち、チーム内コミュニケーションの形態を形成する、「勉強会」(in−service)がもたらす「チーム」内各職種の専門性の認識、チーム内リーダーシップとリーダの役割、チームによる方針決定とそのプロセス、チーム内メンバーのストレス対策も行う。
 さらに、開院当初から電子カルテが導入され全ての業務は電子媒体を介して行っているので、チーム医療における情報の共有化による協働作業の効率を検証する。







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