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7. 出産と新生児の管理
7.1 出産前期
・出産の前8〜24時間になると体温(直腸温)が1.1度程下がり36.5〜37度になる。
・餌を食べなくなった時は出産が近づいている場合が多い。
・排便排尿をしたがる。
 
7.2 出産中期
・さかんに床をかき、巣づくりを始める。
・落ち着きがなくなり、うろうろする。
・陣痛が始まる。
・破水が起こる。
・陣痛が始まってから30分〜3時間程度で出産が始まる。
・子犬が産まれたら、まず母親の様子を見て面倒を見るようならそのまま母犬にまかせてもよい。
・もし、面倒を見ないようなら子犬を取り上げ、羊膜をそっと破き、子犬をよくしぼったタオルで拭き呼吸をさせる。泣き声をあげない時には鼻に口をつけ羊水を吸い出してやるとよい。
・へそのおがまだつながっている時は、へそのおが切れないようにゆっくりと引っ張って胎盤を出してやる。そして、子犬のお腹から約1cm位の所を糸で縛り、2センチ間をあけてもう一ヶ所しばる。そして、その間を良く切れるハサミで切断する。
・胎盤が出ると母親が食べようとするが、産まれた数だけ食べさせると下痢をすることがあるので、初めの2〜3頭の分だけにしたほうが望ましい。
・子犬の面倒をよくみる母犬は子犬を触られることに神経質になりやすいのでそっとしておいたほうが望ましい。
・体重を量り、性別、毛色、出産時刻をメモし、初乳を飲ませる。
・母親が落ち着いたら、羊水や出血で汚れた所を清潔にする。
・陣痛は30分〜3時間ぐらいの間隔でおこるのが普通です。もし、それ以上時間がかかるようなら、獣医師の診断を仰ぐ。
・陣痛が始まるとウロウロと産箱をうろついたりして落ち着かなくなり、新生児を踏みつけることもあるので、陣痛が始まったら新生児は保温箱に入れる。
 
7.3 出産後期
・胎児を全て出産し胎盤も排出すると出産は終わる。
・母犬は出産で疲れており、新生児を圧死させてしまうことがあるので、注意して新生児の様子を時々みる。
・出産後のおろは、1週間ぐらい続く事があるが、量が多かったり長く続く場合は獣医師の指示を仰ぎ相談する。
・母犬は出産や育児で神経質になるので育児中は家族以外の方に子犬を見せないようにする。
 
7.4 子犬の記録
・出産時の記録として個々の子犬の記録を取る。
(1)子犬が生まれた時間
(2)識別するためいのカラーゴムの色
(3)子犬の毛色
(4)性別
(5)体重
(6)障害の有無
(7)出生の順番
(8)その他必要事項
 
7.5 子犬の育児
1日目 初乳は母体の免疫抗体を受け継ぐ働きを持っているので、必ず飲ませる。
3日目 足を曲げる筋肉が優勢なために新生児はいつも丸まっている。
4日目 まだ皮膚を収縮させることが出来ない。
6日目 まだ体を震わすことが出来ない。
7日目 まだ体温調節が出来ない。
8日目 体重が産まれた時の2倍になる。
10日目 目が開きだす。
16日目 歩き出す。
 
7.6 離 乳
・離乳の時期はおよそ生後30日から始める。
・初めは食器に慣れさせるため浅い皿に少量の犬用ミルクを子犬に与える。
・ミルクに慣れたら、少しずつ離乳食を混ぜたかゆ状の物を与える。
・離乳食を混ぜたものを良く食べるようになったら、ぬるま湯でふやかしたドライタイプのドックフードをミルクに混ぜた物に変えていく。
・生後50日を過ぎたら徐々に母乳の量を減らす。
・生後20日頃と40日頃に検便を実施、必要に応じて駆虫を実施する。
 
・繁殖ボランティアで飼育中に子犬の様子を観察し記録しておく。
・子犬の性格とパピーウォーカーの性格、パピーウォーカーとしての経験を考慮して委託犬を決定する。
・3週間前までに委託の案内状を委託予定のパピーウォーカーヘ送付する。その際事前の説明会についても案内する。
・パピーウォーカーヘ子犬を委託する。
 
 子犬の評価法として“キャンベル・テスト”を例に挙げて説明します。
 これは、今現在多くの盲導犬協会で一部または全項目に付いて子犬に行い、パピーウォーカー宅とのマッチングに使用されています。
 キャンベル・テストは、生後40日から50日目を目安に2度行います。1回目と2回目の実施は1週間の間隔をおきます。
 このテストは静かな環境で行います。(空いている産室を利用)時間は夕方、給餌やトイレ出しを済ませた、落ち着いた環境が好ましいでしょう。
 テストをする人数は3〜4人が適当です。一人が子犬を室内で取り扱い、残りの者が外の窓から様子を観察し、テスト結果を記入します。判断基準が異ならないように同じ人物が同じ手順で行うことが必要でしょう。
 テストは以下に示す5項目あります。
 
9.1 社会生活に対する興味(支配性・従属性)を見るためのテスト(時間:30秒)
 子犬を試験場に連れて行き、室内中央に降ろし、肩越しに犬を見ながら、真正面の方向に少し歩いて離れます。しゃがんで、手を軽く鳴らして犬の注意を引いてください。
 
<採点方法>
子犬が、尾をあげ、すぐやってきて、飛びついたりかみついたりしたら、dd
尾をあげ、すぐやってきたら、d
犬が、尾をさげ、近くに来たとき、横にそれるようなら、s
あおむけになったり、臆病な様子をみせれば、ss
 
9.2 人についてくる性格(独立心)を見るためのテスト
 立ち上がり、犬の周りを歩いてください。この際、声掛けや手を叩くなど、犬の注意を引く行動はとりません。
<採点方法>
ついてきて、足をかむなら、dd
ついてくるだけなら、d
尾をさげて、ついてくるなら、s
ついてきたそうなのだかこないなら、ss
全然来ないなら、i
 
9.3 束縛されたときの支配性を見るためのテスト(時間:約30秒)
 子犬を床上で、完全に仰向けにし、胸部に片手を当てて、動けぬように固定します。(服従の姿勢)
<採点方法>
30秒間ずっと暴れ続けたら、dd
ずっとではないが、暴れたら、d
すぐおとなしくなれば、s
あばれなかったら、ss
 
9.4 社会生活における支配性を見るためのテスト
 子犬を正面に座らせ、背中、首、肩を優しく撫ぜます。
<採点方法>
かんだりうなったりしたら、dd
いやそうな様子をみせたら、d
喜んでなでられたら、s
あおむけになったり、手をなめたら、ss
どこかへいってしまったら、i
 
9.5 持ち上げられたときの支配性を見るためのテスト(時間:約30秒)
 犬の脇に手を入れて抱き上げ、床から50cmの高さの所で、そのままの状態にします。
<採点方法>
子犬が、大騒ぎをしたり、かんだり、うなったりしたら、dd
大騒ぎをするだけなら、d
ちょっと騒ぐが、しずかになるなら、s
さわがなければ、ss
 
<採点結果の考え方>
・「dd」が二つ以上で、他に「d」があったとする
 ⇒この犬は、子供や老人には向かない、取り扱いの難しい犬です。
・三つ以上「dd」があり、一つ「d」が付いている
 ⇒支配性の強い犬。
・三つ以上の「S」
 ⇒全ての家庭に適する。
・二つ以上の「ss」
 ⇒非常に従順な犬なので、たくさん褒めて力づけてあげる必要があります。







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