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昭和20年以降の船外機開発
 
 第二次世界大戦中、わが国の軍用の船外機は大量消費とその補給に追われていましたが、日本への空襲が本土に及ぶようになると生産は途絶えるようになり、1945年(昭和20)8月の終戦により生産は全く止まってしまいました。
 
 戦争は大きな痛手を国民に与えました。しかし、一方では機械に対して国民の目を向ける転機にもなり、戦災を受けた建物を復旧し、家庭内の備品を整えると、さらに製品を輸出して外貨を稼ぎ必要な物資の輸入をはかる必要が、あらゆる工業を振興させました。
 
 戦後、いち早く船外機の製作に手をつけたのは「隼」などの軍用飛行機で有名な中島飛行機の後身富士産業(株)大宮工場でした。
 1946年(昭和21)に試作に着手し、1948年(昭和23)には水冷4サイクル2馬力の船外機「タロー」を発売しています。
 続いて1948年(昭和23)には、(株)ミクロ製作所から「ミクロ」が誕生し、以後10年間機種の幅を広げながら製造販売されました。また、伊東平次郎氏も「キヌタ」の生産を再開し、昭和27年の競艇開催に際しては「ミクロ」「ヤマト」(国際競艇興業(株))とともに競艇器材として登録されています。
 その後、昭和30年代初期に向けてトキワ工業(株)の「コロンバイン」、幸洋モーター(株)の「ボートマスター」、(株)野村製作所の「シーマン」、山崎内燃機関研究所の「ブルーバード」、1956年(昭和31)には約20年の間をおいて東京発動機(株)が再び船外機の生産を始め、翌1957年(昭和32)「ヤマハ」が新たに市場に参入しました。しかし、この時期における船外機の国内需要は少なく、競艇用を除いては微々たるもので、生産企業も競艇用の船外機を生産する中小企業メーカーが主体でした。
 
ヤマハP−7
 
2サイクル強制空冷単気筒
最大出力 7馬力
重量 28kg
排気量 123cc
排気方法 水中排気
点火方式 フライホイールマグネット
 
 1958年(昭和33)頃になると、神武景気を契機としてレジャーブームや無動力漁船の動力化等によって需要が増大すると、前記企業を中心として生産が拡大していきます。
 しかし、昭和30年代の半ば頃には、三菱、カワサキ等の大企業の進出もあり、前記の小企業メーカーは、競艇用を作るヤマト発動機(株)(前国際競艇興業(株))を除いて生産を中止するようになります。
 
 1962年(昭和37)4月には「機械工業振興臨時措置法の指定業種」として生産が奨励され、同時に船外機の輸出検査に関わる暫定基準が設定されるようになりました。
 
 その後、1963年(昭和38)に本田技研工業(株)が4サイクルで船外機市場に参入すると、1965年(昭和40)には鈴木自動車(株)が水冷2サイクルニュートラルクラッチ付き水中排気の船外機を発売開始すると、昭和40年代以降はオートバイエンジンや農発エンジンを作るメーカーが生産の中心となりました。
 
 日本を取り巻く過酷な海で鍛えられた日本の船外機は、性能・機能共に大きく進歩し、現在わが国は世界でも有数の船外機の生産国になっています。
 
ホンダGB30
 
4サイクル強制空冷単気筒
最大出力:4馬力
重量:28kg
排気量:171.1cc
排気方法:空中排気
前後進:ループハンドル180°回転方式
 
スズキD55
 
2サイクル水冷単気筒
最大出力:5.5馬力
重量:22kg
排気量:98.2cc
排気方法:水中排気
プロペラ軸:下向傾斜
 
石川工場(アマギ)
 
 
 ギネスブックでは「アマギ」を日本で最初に作られた船外機としています。
 戦前に開催されたモーターボートレースの記録によると、1932年(昭和7)7月3日に行われた第2回船外機艇競争大会に出場していることが記載されています。但し、この大会では不調のため棄権していますが、1934年(昭和9)7月1日の第3回船外機艇マラソンレースでは外国製船外機に混じって走り、好成績を残しています。「アマギ」は市販されることは有りませんでしたが、隅田川河畔尾久の東京モターボート倶楽部の常備艇として活躍しました。
 
主要諸元
全長 全幅 全高 トランサム長
439mm 429mm 595.5mm 不明
重量 エンジン形式 排気量 最大出力
37.49kg 2サイクル 水平対向2気筒 326.17CC 不明
気化方式 吸気方式 掃気方式 点火方式
不明 ピストンバルブ クロスフロー フライホイールマグネット
冷却方式 排気方式 使用燃料 燃料タンク容量
水冷 水中排気 混合ガソリン 約6.83L
 
中西鉄工所製船外機
 
 
 
 この船外機は、2サイクル単気筒の単純な構造ですが、モデル名や年式は不明です。
 
主要諸元
全長 全幅 全高 トランサム長
477mm 355mm 1,018mm 552mm
重量 エンジン形式 排気量 圧縮比
39kg 2サイクル単気筒 133cc 3.2
気化方式 吸気方式 掃気方式 点火方式
キャブレター ピストンバルブ クロスフロー バッテリーレスポイント
冷却方式 排気方式 使用燃料 燃料タンク容量
水冷 空中排気 混合ガソリン 4.4L
資料:舵社 「ボート倶楽部 2001年7月号」より
 
大同商会 旭(流星号)
 
 
 大阪の大同商会が製造していた純国産船外機で、1935年(昭和10)頃から数種類の船外機を製造販売していました。エンジンの形式は、ジョンソンやエビンルードなどのアメリカ製船外機にならった2サイクル水平対向2気筒で当時の国産船外機の多くが採用していた形式です。
 旭船外機は1937年(昭和12)4月30日の日本工業新聞主催国際工業博覧会に出展して表彰を受けています。
 
主要諸元
全長 全幅 全高 トランサム長
400mm 400mm 1,175mm 530mm
重量 エンジン形式 排気量 圧縮比
34kg 2サイクル水平対向2気筒 316cc 約3.1
気化方式 吸気方式 掃気方式 点火方式
キャブレター ピストンバルブ クロスフロー バッテリーポイント
冷却方式 排気方式 使用燃料 燃料タンク容量
水冷 空中排気 混合ガソリン 約5.6L







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