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3.14 船外機の据付及び点検
1)船外機の取付高さ
 船外機の取付高さは船外機に取り付けられているプロペラが船体のどの位置にくるようにエンジンを取り付けるかと言うことがポイントになる。
ボート、船外機ともに「トランサム高さ」というものが設定されている。
 船外機のトランサム高さは2・413図に示すように、ボートに取り付けるブラケットの内面からプロペラ上部のキャビテーションプレートまでの距離(A)で表す。船外機のトランサム高さには5種類あって、S、L、Y、X、Uの略号で表す。また、それぞれの寸法にも範囲があって、機種によって少しずつ異なる。ボートのトランサム高さは2・413図に示すように船外機を取り付けるトランサムボードの高さを垂直に測った高さ(B)である。
 
 
トランサム高さ 代表的機種の実寸法 左記のインチ表示
S 417mm〜444mm 16.0〜17.5インチ
L 516mm〜582mm 20.5〜23.0インチ
Y 586mm〜598mm 23.0〜23.5インチ
X 641mm〜664mm 24.5〜26.0インチ
U 709mm 28.0インチ
 
2・413図 トランサム高さ
 
(1)トランサム高さを選択して決める方法
 基本的にはトランサムSのボートにはSの船外機、LのボートにはLの船外機という風に選択すれば標準的な取付高さになるようになっている。従って、一般的にはこの方法によって取り付けられる。
・標準的高さ:プロペラシャフトを船底に平行にした状態で船外機のキャビテーションプレートが船底と同じ高さまたは船底よりやや低めになる高さ。(2・414図
(2)船外機の取付高さを実測して決める方法
 ボート及び船外機のトランサム表示が不明な時や、故意に高さを調整したい時にはキャビテーションプレートの位置が船底に対しどのような位置にくるか実測しながら取り付ける。(2・415図
 高さはボートのトランサムボードの上端に継ぎ足したり取ったりして調整する。
 
2・414図 標準的高さ
 
2・415図 実測
 
(3)トランサム高さが合っていない場合
 船外機の取付高さ(トランサム高さ)は非常に重要である。
i)取付高さが低すぎる場合
 プロペラが水面に出難く、キャビテーションが起こり難かったり、冷却水ポンプが冷却水を確実に汲み上げるなど良い点がある反面次のようなマイナス面もある。
・ロワーケース部分からスプレが出やすくなる。(2・416図
・水没部分の水抵抗が増加し、スピードが低下する。
・水底との距離が近くなり衝突の可能性が増す。(2・417図
 
2・416図
 
2・417図
 
ii)取付高さが高すぎる場合
 スピードが出やすくなったり、水底との衝突の可能性が減少する等良い点もあるがマイナス面も大きい。
・冷却水の汲み上げが不十分になり、オーバヒートの可能性が高くなる。
・トリムタブはステアリングトルクの調整用としての効果が無くなる。
 (2・418図
・制動力、後進性能が低下する。
・特に重いボートの場合、プレーニングに入り難くなる。
・急旋回時にエアドローが発生しやすくなる。
・船外機を2機掛けにして旋回すると、外側の船外機が高く持ち上がりエアドローが更に発生しやすくなる。
 
2・418図 トリムタブ
 
2)船外機の取付位置
 船外機は2・419図に示すようにトランサムボードの中心線上に取り付けるのが基本である。普通のV船型ボートで船外機をボートの中心から外して取り付けると、船外機がずれている方向と反対に旋回した場合、プロペラが水中より出る状況となりキャビテーション発生の原因となる。(2・420図
 
2・419図 取付位置
 
2・420図
 
3)プロペラの選択
 船外機の性能はプロペラの選定によって大きく影響を受ける。不適切なプロペラは性能が引き出せないばかりでなく、重大な故障の原因にもなる。エンジン回転速度はプロペラのサイズやボートの状態によって変わってくる。エンジンの回転速度が高すぎたり、低すぎたりした場合エンジンに悪影響を及ぼす。エンジンにはそれぞれ全速回転範囲が指定されており、その範囲に入るようにプロペラを選択する必要がある。つまり、重負荷にはより小さいピッチのプロペラを使って全速回転範囲に入るようにする。逆に軽負荷には大きなピッチのプロペラを使用する。
・ボート満載状態で、スロットル全開時に2・421図に示すように指定された全速回転範囲の中間または中間よりやや上になるようなプロペラを選ぶことが大切である。
 
2・421図 プロペラの選定基準
 
4)船外機の定期点検
 定期点検項目及びその実施時期は船外機の型式ごとに、使用環境条件や取扱方などにより異なるが、次に記載の基本的な点検項目を定期的に実施することにより、船外機の故障を防止でき、寿命を延ばすことにつながる。一般的な使用条件に対応した定期点検一覧表を2・1表に示す。また、定期給油項目一覧表を2・2表に示す。
 
2・1表 定期点検項目一覧表
点検項目 点検内容 初期の運転時間 その後運転時間毎に
10 50 100 100 オフ
シーズン
フュエルタンク 清掃/洗浄
フュエルホース
(フュエルタンク側)
ホースに亀裂、漏れがないか点検して必要ならば交換  
フュエルフィルター 清掃/洗浄
フュエルホース
(エンジン側)
ホースに亀裂、漏れがないか点検して必要ならば交換  
キャブレター 作動を点検して必要ならば調整  
スパークプラグ 点検/清掃と調整/必要ならば交換  
シリンダーヘッド ヘッドボルトの弛みがないか点検/必要ならば規定トルクで増締
  燃焼室内のカーボン除去  
点火時期 点検して必要ならば調整  
点火時期とスロットル連動機構 点火時期とスロットル連動機構の作動を点検し必要ならば調整  
スロットル機構 スロットル機構の作動を点検して必要ならば調整  
冷却系統 パイロットの噴出状態を点検し、必要ならばウォーターポンプと冷却系路を点検
アノード 電蝕防止効果を点検 50時間運転毎
プロペラ 翼部を点検して必要ならば交換
コッターピン
(プロペラナット)
損傷を点検して必要ならば交換
オイルインジェクションポンプ オイルの流失を点検して必要ならば交換 6ヶ月毎
  ポンプのエア抜き 6ヶ月毎
 
2・2表 定期給油項目一覧表
給油箇所 給油方法 潤滑剤 初期の運転時間 その後運転時間毎に
10 50 100 100 オフ
シーズン
スロットルリンク グリースを薄く塗布 耐水性グリース
(YAMAHAグリースA)
点検  
トップカウリング
クランプレバーハウジング
グリースを充分に塗布  
シフトレバーハウジング  
スロットルワイヤーハウジング グリースを薄く塗布  
シフト機構 点検  
ステアリングピボットシャフト グリースを充分に塗布
クランプボルト グリースを薄く塗布 100時間運転毎
チルト機構  
ロワーケーシング オイル交換 パイポイドギヤオイル♯90 点検
プロペラシャフト グリースを薄く塗布 耐水性グリース
(YAMAHAグリースD)
 
電動モーターアーマチュアシャフト 耐水性グリース
(YAMAHAグリースC)
組立作業時
ドライブシャフト 耐水性グリース
(YAMAHAグリースA)
パワートリム&チルト オイル交換 オートマチックトランスミッションフルード(ATF)







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