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3S級舶用機関整備士指導書

 事業名 舶用機関整備士の資格検定事業
 団体名 日本舶用機関整備協会 注目度注目度5


2.8 点火装置
 ガソリンエンジンにおいては、シリンダ内の圧縮された混合気に点火するために、スパークプラグの電極間に外部より約10〜25kVの高電圧を印加して放電させ、そのエネルギが熱源となり火炎核を生成させる装置が必要である。高電圧を発生させるには、イグニションコイルの一次側に通電している電流を遮断して、イグニションコイルの鉄心内に急激な磁束変化を起こさせ、二次側に高電圧を誘起させるなどの方法が用いられる。
 点火装置はシリンダヘッドに設けられたスパークプラグに、適切な時期に電気火花を飛ばし、混合気に点火して燃焼させるためのもので、2・187図に示すように、電源にバッテリを用いた点火方式が小型を除き一般に採用されており、スパークプラグ、ディストリビュータ、イグニションコイル、ハイテンションコード、配線などで構成されている。
 
2・187図
 
1)概要
(1)要求電圧
 スパークプラグの電極間に火花放電を行うには、圧縮された混合気を絶縁破壊させるまで高電圧を印加する必要がある。放電が始まる電圧を要求電圧と呼び、スパークプラグ電極の形状、ギャップの長さ、電極温度、混合気の圧力や種類によって変わってくる。一般に、通常運転時で8〜15kV、条件の厳しい始動時や加速時では15〜25kV程度が必要である。
(2)点火火花
 スパークプラグの火花放電により、電極間の混合気温度が瞬間的に上昇して火炎核が生成される。火花放電の持続時間は0.1〜1ms(ミリ秒)である。放電の初期は主にイグニションコイルの二次側の内部静電容量に蓄えられた電荷が、続いてイグニションコイル内の電磁誘導エネルギが放出される。2・188図に示すように前者を容量放電といい、エネルギ密度は高いが放電時間は極めて短い。後者を誘導放電といい、エネルギ密度は低いが放電の持続時間は長い。このように、火花放電は複合火花であり、点火装置によって放電特性が異なる。特に希薄混合気への点火には長い誘導放電であることが要求される。
(3)点火時期
 エンジン出力が常に最大となる点火時期を設定する必要がある。しかし、混合気に点火して火炎核が生成されるまでの時間とその後の火花伝播速度は、負荷、回転速度及び混合比(空燃比)などで異なる。従って、点火時期はこれらの運転条件に応じて制御される。
 
2・188図 電極間の電圧、電流波形
 
2・189図 進角特性の例
 
 点火時期制御は機関回転速度に対しては、錘の遠心力とバネの張力によるバランスで点火進角を決める遠心式ガバナ機構が、また、機関の負荷状態に対しては吸気管内の圧力と大気圧との差圧に比例した進角量を得るダイヤフラム機構が一般に用いられ2・189図に示すような特性が得られる。トランジスタ点火装置やCDIのように、点火時期検出用の信号発生器として小型磁石発電機を用いている場合は、回転速度が高まるに従って出力電圧の波形が変化する特徴を利用して点火時期を進角する波形制御方式が広く用いられている。最近は、排気ガス規制の強化や燃費及び運転性の改善のため、マイクロコンピュータや各種半導体センサなどの電子技術を応用した三次元マップ方式による最適点火時期制御が使われている。2・190図に電子制御装置の点火系統図の一例を示す。
 
(拡大画面:41KB)
2・190図 電子制御装置の点火系統図の例
 
(4)点火の基礎
i)相互誘導作用及び自己誘導作用
 2・191図に示すように一つの鉄心に2個のコイルを巻き、コイル1に交流電流を流すと、コイル2には、2個のコイルの巻数比に比例した電圧が誘起される。このように、2個のコイルの一方に流す電流の大きさや方向を変化させることによって、鉄心の磁化される強さや方向に変化を与えると他方のコイルに電圧が誘起される。この現象をコイルの相互誘導作用という。
 
2・191図 コイルの相互誘導作用
 
 また、2・192図(1)に示すように鉄心に巻いたコイルに電流(I)を流すと、鉄、心は磁化されるが、磁化される瞬間は図(2)に示すようにコイルの中に磁化されるのを妨げようとする方向に、電流(i)を流そうとする電圧が誘起される。
 逆に、2・193図(1)に示すように流れている電流(I)をスイッチを開いて急に遮断すると、今度は図(2)に示すように消滅しようとする磁力を何時までも持続させようとする方向に、電流(i)を流そうとする電圧がコイルの中に誘起される。このように、電流が流れたり遮断されたりして、コイルの磁力線が増加又は減少すると、その変化を妨げる方向に電流を流そうとする電圧が誘起される。この現象をコイルの自己誘導作用という。
 
2・192図 コイルの自己誘導作用(1)
 
2・193図 コイルの自己誘導作用(2)
 
ii)高電圧の発生
 高電圧の発生は、コイルの自己誘導作用と相互誘導作用の原理を応用したものである。今、2個のコイルを1個の鉄心に巻き、一次コイルに、2・194図(1)に示すような方向に電流を流し、鉄心を磁化した状態にする。次に図(2)に示すように急にスイッチを開くと、鉄心の磁化は消滅しようとするが、これを妨げようとする起電力(e1)が自己誘導作用により一次コイルに誘起され、同時に、二次コイルには起電力(e2)が相互誘導作用により誘起される。この起電力(e1)の大きさは、一次コイルの電流の減少する割合が大きいほど大きく、起電力(e2)は2個のコイルの巻数比(二次コイルの巻数/一次コイルの巻数)が大きいほど大きくなり、一次コイルに流れる電流と一次電流が変化する割合に比例する。一般に二次コイルには、15000〜35000Vの電圧が誘起される。
 イグニションコイルでは、これらの原理を応用して二次側に高電圧を発生させている。
 
2・194図 高電圧発生の原理







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