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6)主軸受及び主軸受キャップ
 主軸受けはハンガタイプではシリンダブロックの隔壁部に、台板式では台板の隔壁部に、リブで補強したボス部を設け、主軸受キャップと共加工して内にクランク軸のジャーナル部を支える主軸受メタルを納めるハウジングである。
 2・82図に示すように、主軸受部へはいずれもメーンギャラリからドリルで加工された油孔から潤滑油が給油されるようになっている。主軸受キャップとは合せ面がズレないようにノックピンやインロなどで位置決めされると共に主軸受側との組み合わせ番号が打刻してある。ハウジング内面はメタル裏金との密着性を良くするため規定トルクで締め付けた状態で精密な仕上げがなされている。
 
2・82図 主軸受けの構造と注油孔
 
7)主軸受メタル(ジャーナルメタル)およびスラストメタル
 主軸受メタルは主軸受ハウジング内に納められ、内面でクランク軸のジャーナル部を支えクランク軸を回転させるメタルである。メタルは衝撃力に近い大きな力を受けるためこれに耐え、摩耗が少なく、熱伝導の良い材料が要求される。従来はホワイトメタルが使われていたが、最近のエンジンは高出力化により、クランク軸の軸受部を焼入硬化しているため、連接棒大端部メタル同様耐圧荷重が高く耐疲労強度、耐腐食性、に優れたケルメットやアルミの三層メタル(2・75図、2・76図に示すような完成メタル)が多く使用されている。
 スラストメタルはクランク軸が軸方向に移動しようとする力を受ける軸受けである。
 通常はクランク軸には大きなスラスト力は働かないようにしてあるが、機関台の傾斜などによって生ずる小さなスラスト力を受け止めるために設けられている。
 台板式の場合は中心部分に位置する主軸受けを基準とするため、これの両側にスラストメタルが設けられ、ハンガ式の場合はどちらかの軸端ジャーナル部分にスラストメタルを入れスラスト力を受けるようにしている。
 スラストメタルは一般には2・83図に示すように半月形のメタルを上下組み合わせて用いられているが中には主軸受メタルと組み合わせて一体形に造られたものもある。
 
2・83図 スラストメタル
 
8)フライホイール(はずみ車)
 フライホイールはクランク軸端に取り付け、燃焼行程の余分なエネルギをフライホイールに吸収させ、他の行程では、その回転惰力のエネルギを吐き出させクランク軸の回転を円滑にさせる重要な役目を持っており、一般に鋳鉄製で外周リムの断面を有する車輪形状に造られている。
 クランク軸への取り付けは2・84図に示すように、テーパ式又はフランジ式の構造となっている。テーパ式は小形機関に用いられ電気始動機関の場合は駆動用のリングギヤを外周に焼嵌めしている。又フライホイールの外周にはクランク位置やタイミングマーク等が打刻され、位置合せやタイミング合わせに使用している。
 
2・84図 フライホイールの取付け構造
 
9)ダンパ(減衰器)
 ダンパはねじり振動の振幅が一番大きくなる軸端等に取り付け、ダンパの慣性体の動きで、振動エネルギをおさえ、ねじり振動による被害を低減させるものである。
 
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2・85図 ダンパの構造
 
 ダンパには振動エネルギの吸収材として、ゴム、粘性液等を使用しているためある程度の劣化は避けられず定期的な修理、交換により事故を防止する必要がある。
 ダンパにはダイナミック式、固体摩擦式、粘性摩擦式、ゴム内部摩擦式等がある。2・85図にその一例を示す粘性摩擦式では隙間Cに封入されたシリコンオイルの粘性摩擦により又ゴム内部摩擦式ではゴムDのヒステリシスによる内部摩擦によりねじり振動エネルギを吸収している。
10)バランサ装置
 ピストンが往復運動するエンジンでは、クランクピン及び連接棒大端部による回転慣性力の他に、ピストン、ピストンピン、及び連接棒等による上下方向の慣性力が発生し、エンジンを振動させる力として作用しているが、この不釣合慣性力を取り去り、エンジン振動を軽減する機能を持つのがバランサである。バランサにはクランク軸と同回転で回転する一次バランサと、2倍の回転数で回転する二次バランサとがあり、一次バランサは3気筒エンジンに又二次バランサは4気筒のエンジンに多く使用されている。2・86図に二次バランサの一例を示す。
 
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2・86図 二次バランサ







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