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2)ピストンリング
 ピストンリングは数本の圧縮リングと、1〜2本のオイルリングで構成され、圧縮リングは高温高圧の燃焼ガスをライナとピストンとの隙間より逃がさないように気密を保つとともに、ピストンが受けた熱をシリンダに逃がす役目をしている。
 ピストンリングの本数は、ピストンの往復運動に伴う摩擦損失を低減するため、最近の高速エンジンでは圧縮リング2本オイルリング1本の組み合わせが一般的となっている。
 ピストンリングには、耐摩耗性に優れた特殊鋳鉄が使用され、リングの1カ所を切り、張力を持たすように作られており、常に自己の張力でシリンダ壁に密着しているが、2・67図に示す如く燃焼行程及び圧縮行程では更に燃焼ガスの圧力及び圧縮時の圧力がリングの上面と背面に加わるため、いっそう強くシリンダ壁に密着してガス漏れや圧縮漏れを防ぐと共に、オイル上がりを防ぐ役目もしている。
 オイルリングはライナスカート部にはねかけられた潤滑油を、クランクケース側にかき落として余分な潤滑油が燃焼室に入るのを防ぐとともに、ライナ表面に適度な油膜を作り焼き付き防止の働きをしている。リングの表面には通常パーカライジング処理が施されているが中にはリングの摺動面や上下面に耐摩耗性のある硬質クロームメッキを施したもの或いは、初期なじみをよくするために摺動面に軟質メッキを施したものが作られている。
 リングの断面形状及び、合い口形状には多くの種類のものがあり、機関メーカでは、機関の仕様に合わせて独自の組み合わせで使用している。代表的なものを2・68図2・69図及び2・70図に示す。
 
2・67図 ピストンリングの作動
 
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2・68図 ピストンリングの合い口形状
 
2・69図 オイルリングの断面形状
 
2・70図 圧縮リングの断面形状
 
3)ピストンピン
 ピストンピンは、ピストン頂面で受けた燃焼ガスの圧力を受け、これを連接棒を介してクランク軸に伝える働きをしている。このためピストンピンは、曲げと高い軸受け圧力を受けるので、表面硬度が高くでき且つ強靱な材料が要求される。一般には中空の肌焼鋼あるいは特殊鋼を表面焼き入れして使用している。
 ピストンへの取り付け方法には、固定式と、浮動式があり、固定式は2・72図Aに示す如くピストンピンをピストンピン穴に一定の締め代を持って押し込み、キー及びボルト或いはテーパピンで固定し動かないようにしている。
 又浮動式は、運転中ピストンピンが自由に回転出来るよう何処にも固定せず同図B、Cに示す如くピストンボス両端にサークリップ又は押さえ板を取り付けて抜け出しを防止している。
 
2・71図 浮動式ピストンピンの形状
 
2・72図 ピストンピンの取付け方法







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