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(2)清水冷却器及び清水タンク
 清水冷却機関の清水は冷却水ポンプにより各部を循環し、熱を受けるため高温となり、そのままでは蒸発してしまい冷却できなくなるため熱交換器で清水を冷却する必要がある。舶用機関の場合は熱交換器に海水を通して清水を冷却する方法が一般的に用いられている。
 熱交換器の構造は潤滑油冷却器と同じであり、潤滑油の通路が清水の通路となっている。点検整備も全く同様である。熱交換器の故障についてはチューブの腐食による穴あきや拡管部の弛み、ロー付け部のはずれや亀裂などによる清水洩れがある。
 清水冷却式の中高速機関の殆どは熱交換器の上部が清水タンクとなっており、清水回路内にサーモスタットを取り付け常時一定の温度に保っている。又タンクの清水注入口には調圧弁を内蔵したキャップが取り付けられている。なお、清水の補給なしで長時間運転できるように、樹脂製のリザーブタンクが設けてあり、水量の点検はリザーブタンク内の水量を確認するだけでよく、毎日の点検にはタンクのキャップをはずして調べなくても良い構造となっている。万一清水量が減少した場合には、タンク上部に取り付けた水位警報装置が作動し、ランプやブザーで危険を知らせる方式を採用したものもある。
 
2・105図 清水クーラ(清水タンク一体形)
 
(3)加圧弁(ラジエータキャップ)及びリザーブタンク
 清水タンクの清水注入口蓋には加圧弁が取り付けられ、清水系統を密閉すると共に圧力を加えることで、水温が100℃以上になっても沸騰しないようにして気泡の発生を押さえ、冷却効果をよくしている。この加圧弁付蓋は一般にはラジエータキャップと呼ばれプレッシャバルブとバキュームバルブを備えている。冷却水の温度が上昇し体積が膨張してタンク内の圧力が設定圧以上になるとプレッシャバルブが開きタンク内からあふれた水はオーバフローパイプを通ってリザーブタンクに蓄えられる。逆に冷却水温度が低下すると収縮してタンク内が負圧となりバキュームバルブが開いて、リザーブタンク内の水はタンク内に吸い戻される。
 
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2・106図 ラジエータキャップ
 
2・107図 ラジエータキャップのチェック
 
2・108図 リザーブタンク
 
 従ってリザーブタンクの水量は機関停止時より運転時に増加するのが正常であり、水量に変化がない場合は原因を調査せねばならない。
 なお、ラジエータキャップの開弁圧はキャップテスタでチェックし異常があれば交換する。
(4)冷却水温度自動調整弁と水量加減弁
 冷却水の温度は高過ぎても又低過ぎてもいけない。その機関に合った最適温度範囲での運転が必要であり、そのために冷却水温度の調整や監視が必要となる。この目的のために使用されるのが冷却水温度自動調整弁と水量加減弁である。これらの弁は冷え過ぎを自動的に防止すると共に使用環境条件に応じて許容最大出力時に過熱などによるトラブルを起こさない範囲内で水量や温度容量などが設定されている。
 冷却水集合出口の温度は清水冷却式で75〜90℃程度、海水冷却式で35〜50℃程度、の範囲に設定すると共にサーモスタットの開弁温度は清水の場合約75℃、海水では35℃程度としているのが一般的である。
(1)冷却水温度自動調整弁
 一般にサーモスタットと呼ばれるワックスペレット式の弁であり、冷却水集合管の出口付近に設けて、冷却水の温度が設定温度より低く各部の熱膨張が不十分の間は、冷却水をポンプの吸入口に戻して冷却水を循環させ、水温が設定温度まで上がり、主要部が十分に熱膨張して適正なスキマを保持してくると弁が開いて排水又は熱交換器へ流し低温の冷却水を供給し水温を下げる働きをする。これらの動作が自動的に行われるものであり、冷え過ぎや過熱などのトラブルを予防する装置である。
 清水冷却式の場合は一般にサーモスタットと言い、海水冷却式の場合は温調弁などと呼んでいる。
 弁はワックスが熱により急激な体積変化をする性質を利用したもので配合割合により作動温度を自由に変えられるため、種々の設定温度のものがある。従って純正部品を使用すると共に開弁温度の打刻数値を確認して交換する事が重要である。
 又サーモスタットは2・111図に示すような方法で、水の温度を上げ下げして、開弁開始温度、全開温度、全閉温度、弁リフト等を調査し規格をはずれるものは交換する。
 
2・109図 サーモスタット
 
2・110図 サーモスタットの作動
 
2・111図 開弁、全閉温度のチェック
 
(2)水量加減弁
 水量加減弁は、各シリンダヘッドの冷却水出口部に設け、各シリンダ及びシリンダヘッドの冷却水温度のバラツキをなくし均一になるように冷却水温度計を見ながら水量を調整する弁である。
 水量加減弁は2・112図に示す如く先端部が斜めに切欠いてあり、これを回すことにより通路面積を加減し通過水量を調整出来る構造になっている。
 清水冷却機関は高恒温の清水が循環するので、各シリンダ間の冷却水温度のバラツキは殆ど発生しないため使用されていないが、海水冷却機関では単気筒機関を除きほとんどの機関に取り付けられている。
 
2・112図 冷却水量加減弁
 
(5)キングストンコック
 キングストンコックは、別名海水吸入弁又は船底弁と呼ばれ機関の冷却水取入れ口に取り付けられる砲金製の海水弁で必要なときはいつでも海水の流入を止めることが出来るようになっている。
 小型船に用いられるキングストンコックは2・113図に示す如く海水吸入口には多数の小孔を設けてコシキの役目をさせている。取り付け位置はローリングなどにより空気の吸い込みがないよう出来る限り水面より深い位置とし、且つ水が入り易いよう取付け方向及び位置を決める必要がある。
 
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2・113図 キングストンコック
 
(6)海水コシキ
 海水中に浮遊するゴミや木片等を吸い込むと潤滑油冷却器、清水クーラ、空気冷却器等の水路部に詰まり、冷却が十分に行われずそのために焼き付きなどの事故を発生する事がある。これらの事故を防止するためキングストンコックと海水ポンプとの間に設けられるのが海水コシキである。
 海水コシキには、複式のものと単式のものとがあり、複式のものは機関運転中でも1個づつ掃除できる構造となっている。
 
2・114図 単式海水コシキ
 
2・115図 複式海水コシキ







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