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第1章 ディーゼル機関の基礎
 
 
1. 常用用語・単位・関係式
 ディーゼルエンジンを理解するために、是非知っておかなければならない用語とその意味、および用語に使用する単位、関係式について述べる。
 
1.1 SI単位について
 SIとは国際単位系の公式略称で、国際標準化機構では1971年(昭和46年)より使用している。
 日本では昭和49年からJIS規格の中でSI単位での換算値をかっこ書きで併記するなどして対応してきているが、最近の状況は下記の通りである。
・昭和61年1月1日以降
 制定又は改正されるJIS規格については、原則としてSI単位による数値を記し、従来単位による換算値も記す場合は、かっこ付きで併記することとなった。
・平成5年11月1日
 新計量法が施行され、法定計量単位がSI単位に統一されることとなった。
(3段階の猶予期間付き)
・平成11年10月1日以降
 SI単位への切り換え猶予期間が9月30日で終了し、原則的にはSI単位一本となった。
 
 計量法はSI単位にできるだけ切り換え、残される一部の非SI単位を限定して使用できるよう構成されているが、同時に計量法以外の各種法令、条例等で使われている非SI単位も計量法に基づいてSI単位に書き換えていく作業が進められている。
 
 SI単位は下記のように7個の基本単位と、2個の補助単位、それにこれらの単位を組合わせた多数の組立単位とで構成されている。尚SI単位の10の整数乗倍を表すために、決まった接頭語を付けることとなっている。
 
 
1)基本単位
 
1・1表 基本単位
単位の名称 単位記号 単位の名称 単位記号
長さ メートル m 温度 ケルビン K
質量 キログラム kg 物質則 モル mol
時間 S 光度 カンデラ cd
電流 アンペア A      
 
2)補助単位
 
1・2表 補助単位
単位の名称 単位記号
平面角 ラジアン rad
立体角 ステラジアン sr
 
3)組立単位
・固有名詞を持つ組立単位:N(ニュートン)、Pa(パスカル)、J(ジュール)、Hz(ヘルツ)、W(ワット)など
・基本単位の組立単位:m2、m/s、g/kW・hなど
 
4)接頭語
 
1・3表 接頭語
名称 記号 単位に乗じる倍数 名称 記号 単位に乗じる倍数
エクサ E 1018 デシ d 10-1
ペタ P 1015 センチ c 10-2
テラ T 1012 ミリ m 10-3
ギガ G 109 マイクロ μ 10-6
メガ M 106 ナノ n 10-9
キロ k 103 ピコ p 10-12
ヘクト h 102 フェムト f 10-15
デカ da 10 アト a 10-18
 
 
1.2 常用用語と単位の換算について
 ディーゼルエンジンでよく使用される用語の意味と、換算を必要とする従来単位とSI単位との関係式を1・4表に示す。
 
1・4表 SI単位と従来単位との比較
用語 SI単位 用語の意味 簡易換算値 従来単位
圧力 MPa 単位面積にかかる力 1MPa≒10.2kgf/cm2
1kgf/cm2≒0.098MPa
kgf/cm2
容量 m3 容積 1m3=1000l 同じ m3、l、cc
吐出量 m3/h 時間当たりの容量(水ポンプ等) 1m3/h=1000l/h l/Hr、
m
3/Hr
回転数
(回転速度)
min-1 1分間当たりの回転数 1min-1=1rpm rpm
速さ m/s 1秒間当たりの動く距離 1m/s=1m/sec m/sec
トルク N・m 回転方向に廻す時に要する力とバーの長さの積 1N・m≒0.102kgf・m
1kgf・m≒9.8N・m
kgf・m
出力 kW 1秒間当たりの仕事量 1kW≒1.36PS
1PS≒0.735kW
馬力:PS
電力:kW
燃料消費量 m3/h 1時間当たりの燃料消費量
(kgで表す場合は比重をかける)
同じ l/Hr、
m
3/Hr
燃料消費率 g/kWh 1時間1kW当たりの燃料消費量 1g/kW・h≒0.735g/PS・Hr
1g/PS・Hr≒1.36g/kW・h
g/PS・Hr
 
 
1.3 主な関係式
1)圧縮比
 ピストンが下死点にあるときのピストン上部の容積(Vc+Vs)とピストンが上死点にある時の燃焼室の容積Vcとの比を圧縮比と云う。なお、Vcには予燃焼室容積など頂部スキマ容積を含む
 
 
内燃機関の圧縮比は一般に次の通りである。
 
機種 ディーゼル機関 ガソリン機関 灯油機関
圧縮比 11〜20 6〜11 4.5〜7
 
 
1・1図 圧縮比
 
2)総排気量
 ピストンが下死点から上死点に移動する間に排出する容積を排気量と云う。これは、シリンダ内に吸い込むことの出来る量でもあるので、エンジンの出力と密接な関係がある。
 シリンダ内径をD、ピストンの行程をSとすれば、1シリンダの排気量は
 
 
 で表され、多気筒のエンジンではすべてのシリンダの排気量を合わせたものをそのエンジンの総排気量と云い、次の式で計算できる。
 
 
D シリンダ内径(cm)
S ピストン行程(cm)
N シリンダ数
 
3)平均ピストンスピード
 エンジンが回転しているときのピストンスピードは、上死点及び下死点でゼロになり、その中間付近で最大となる。従ってピストンのスピードは平均したもので表し、これを平均ピストンスピードと云い次式で表される。クランク軸1回転でピストンは1往復するので2Sだけ移動しn回転では2Snとなる。これを秒速に直すために60で割る。
 なお、平均ピストンスピードを求める時のストロークの単位は(m)なので注意すること。
 
S ストローク(m)
n 回転速度(min-1
 
4)トルク
 トルクは回転させようとする力、即ち回転力で図に示すように
トルク=(力)×(力が作用する腕の半径)
で表され力を(F)半径を(r)であらわすと
トルク(T)=F×rとなる。
 
 T:トルク(N・m)
 F:腕先の力(N)
 r:力が作用する腕の半径(m)
 
 
1・2図 トルク
 
5)燃料消費率
 エンジンの性能を評価するものの一つに燃料消費率がある。これは、エンジンが一定の仕事をするのにどのくらいの量の燃料を消費するかを示す値で、単位としては1kW1時間当たりの消費量をグラム(g)で表したものを用いる。この値が小さいエンジンほど経済性に優れている。実際の計測にあたっては、消費量(V)を容積(cc)で計り、燃料の比重を測定して1時間1kW当りの重量(g)に換算して表す。
 
 
6)燃料消費量
 燃料消費率のわかっているエンジンを、一時間運転した時に使用する燃料の消費量を計算する時に用いる。従ってこれに運転時間をかけると総使用量が計算できる。なお、1000で割っているのはgをkgに換算するためである。
 又燃料の時間当たり使用重量(kg/h)から使用容積(l/h)に換算するには下段の式を使用する。
 







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