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(3)第三角法と第一角法の比較
 第三角法または第一角法によって、実際の図面を読んだり、画いたりするには、2つの投影法の相異を理解するとともに、判別する要領を会得する必要がある。ここで、(F)図に示すように、一つの立体を、みる方向を共通にして、両投影法による投影画面を設けて、それぞれの画面に投影図を画き、展開して(G)、(H)図および(I)図をつくり、比較をして、両投影法を判別できる相異点を調べてみる。
 (G)図には、第三角法による投影図が、(H)図には、第一角法による投影図が示されている。これらの各投影図を、正面図を対照の中介図にして比較してみると、先ず両投影図の各図形の詳細は同じであること、次に平面図に注目してみると、画かれている位置が正面図に対して相異していることがわかる。すなわち、『平面図は、第三角法では、「みる方向」からみて、正面図(立体が正面図のような姿勢でおいてあると想像する。)の「てまえ側」に、第一角法では、正面図の「むこう側」に、画かれている』ということである。同様なことが、右側面図についてもいえる。
 
(F)図 両投影法の関連図
 
(拡大画面:26KB)
 
 前記の「正面図を対照の中介図にした考え方」と同要領で、正面図に換えて、平面図または右側面図を対象にしても、各投影図の関連性については、全く同じことがいえる。
 このことは、(I)図に示すように、正面図、平面図、右側面図などの投影図の名称には関係なく、「みる方向」と各投影図が画かれている「相互の位置」によって、その投影法が判別できる、ということである。すなわち、投影法の判別要領としては、一つの投影図のところに、その投影図に示されているような姿勢で立体がおかれていると考えて、これを「みる方向」からみた投影図が、「みる方向」からみて、その投影図(立体)の「てまえ側」に画かれている場合は第三角法であり、その投影図(立体)の「むこう側」に画かれている場合は第一角法である。
 この判別要領は、一例として示したに過ぎないが、各自がそれぞれに納得した判別要領を身につけるべきである。
(4)第三角法による投影図のかき方
 第三角法で投影図をかくときは、つぎのようにする。
(イ)立体の特徴をあらわす面を選んで、正面をきめる。
(ロ)はじめに正面図の位置をきめ、これをもとにして、平面図、側面図の位置をきめる。
(ハ)正面図と平面図が同じ図形になる場合は、平面図はかかなくてもよい。また、平面図、側面図のうち、どちらかがなくても、その形や大きさがわかる場合は、いっぽうを省略してもよい。
(ニ)円や対称図形には、中心線をひく。
(ホ)みえる部分の形は外形線で、かくれてみえない部分の形はかくれ線でかく。
(ヘ)かくれ線を多く使うと、図面が読みにくくなるので、できるだけかくれ線を用いないですむように、図示する面を選ぶ。
(5)投影法と尺度の表示および用紙の大きさ
 図面をかくときは、先ず投影法を決める。機械製図では、原則として第三角法を用いる。この場合、図中に「第三角法」と、記入する。なお、適用している投影法がわかっているときは、記入しない場合がある。
 
製図規格の尺度表
 
 次に、「製図規格の尺度表」の中から適当なものを選んで、その値を図中に表示する。心要に応じて、矢視図または断面図などを図中につくる場合がある。このときは、部分的に尺度を変更してもよいが、その値を表示しなければならない。また、画く投影図の大きさによって、用紙の大きさを決めなければならない。
 JIS規格に決められている「紙の仕上り寸法表」を参考に示す。製図用紙には、一般にA列0番〜6番のものが使われる。
 
紙の仕上がり寸法表
 
(6)第三角法による投影図のかき方の参考例
(イ)正面の選び方(フリーハンドによる)
 
 
(J)図 (I)面を正面に選んだ例
(この立体の特徴をよくあらわしている)
 
 
(K)図 (II)面を正面に選んだ例
(この立体の特徴がでていない。)
 
(ロ)第三角法によるかき方の例(フリーハンドによる)
 
(L)図 平面図を省略してもよい例
 
 
(M)図 平面図または側面図のどちらか一方を省略してもよい例
 
 上記の(L)および(M)図は、表現が重複している投影図は、省略してもよい例を参考として示しているが、『一般の機械製図では、投影図は重複してもよいが、寸法は重複して記入してはいけない』ということになっている。したがって、投影図を強いて省略する必要はなく、立体の形をよく理解できるように、必要に応じて断面図、部分的な矢視図、あるいは拡大図などを追加してわかりやすく表示されるべきである。







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