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2級舶用機関整備士指導書

 事業名 舶用機関整備士の資格検定事業
 団体名 日本舶用機関整備協会 注目度注目度5


4. 潤滑油、燃料油、冷却水
 整備士として必要なことを説明する。
 
4.1 潤滑油
1)ディーゼルエンジンの潤滑油の作用
(1)潤滑作用
 互いに接触し摺動する金属面の間に油膜を形成し、金属同士が接触しないようにして摩擦を防ぎ、摩耗を減少させる。もちろん高い荷重面においては焼き付きの防止も兼ねている。
(2)冷却作用
 “潤滑とは冷却なり”と言われるほど重要な役目があり軸受等で発生した摩擦熱を運び去ると同時に、ピストン内部ではピストンが燃焼面から受ける熱やピストンリングの熱を取り去り焼割れや、摩耗の防止をする。
(3)密封作用
 ピストンリングとシリンダライナの間で油膜を形成し、燃焼ガスや圧縮空気の漏れを防止する。
(4)清浄、分散作用
 クランク室内に落下した燃焼生成物や潤滑油自身の劣化により生ずるスラッジなどを分散し洗い流す清浄作用をする。
(5)防錆作用
 金属面に油膜を作り酸化作用を防止する。
(6)応力分散作用
 軸受面に油膜を形成し、集中的に加わる応力や衝撃を油膜を介して分散させる。
 
2)潤滑油の消費
 潤滑油は使用することによって、酸の中和や燃焼生成物の油中への分散等により徐々に汚れ、粘度が増加してアルカリ価が低下する。このため適度の消費による消費分を補給することは、潤滑油の性能維持のために必要である。
 また、ピストンとシリンダライナの間を通して燃焼して消費もするが、この消費はピストン、ピストンリングとシリンダライナの潤滑を促進し、ピストンリング溝の堆積物を清浄する作用も兼ね機関の耐久性向上のためにも必要なことである。
 なお、潤滑油の消費量が多いと思われたり、消費がないときは機関メーカヘ相談されたい。
 
3)分類
 一般に、潤滑油は2・13表に示すようにJIS、慣用呼称やAPIサービス分類で分けられている。
 
2・13表 潤滑油の分類
JIS規格 慣用呼称添加剤の作用 APIサービス分類 用途
JIS2215 1種 3号
(2、4、5号もある)
ストレート(S) CA 超軽負荷用システム油
JIS2215 2種 3号
(2、4、5号もある)
プレミアム(PM)
酸化防止性が改善されている
CB 軽負荷用システム油
JIS2215 3種 3号
(4、5号もある)
ヘビーデューテイ(HD)
酸化防止性と清浄性が改善されている
CC 中負荷用システム,シリンダ共用油
JIS2215 4種 3号
(4、5号もある)
スーパ ヘビーデューテイ(SHD)
酸化防止性が与えられ清浄性が高度に改善されている
CD 重負荷用 主としてシリンダ油
 
4)潤滑油に求められる性質
(1)粘度が適正で粘度指数が高いこと。
 粘度が高すぎると潤滑油自身の抵抗によって発熱し、軸受温度の上昇や動力の損失を招く。逆に粘度が低すぎると油膜が破れ金属接触を起こす恐れがある。
 また、機関内部の温度は始動時と運転時或いは海水温度の違い等で大きな変化があるので温度変化の影響を受けにくい粘度指数の高いものを選ぶ。
(2)清浄分散性に優れていること。
 潤滑油中に混合した燃焼生成物や自身が酸化して生じたスラッジを油中に凝縮させず、微細な分子として分散させ、ピストンリング、リング溝やピストンヘッドの内部にそれらの汚れが膠着したり付着するのを防ぐ必要がある。
(3)酸中和性に優れていること。
 燃料油中の硫黄分により生成された硫酸分が油中に入り、各部を腐食させる恐れがある。
 特に海水が混入した場合、硫酸は海水中の塩分と反応して更に腐食性の強い塩酸を生成する。この極めて有害な腐食を防ぐために強力な酸中和性が要求される。
(4)酸化安定性に優れていること。
 潤滑油は空気中の酸素と結びついて酸化反応を起こし変質して行く。また、潤滑油の温度自身が高いと、これに水や金属粉が混入するとそれらが触媒となって酸化が促進される。
 酸化が進むと粘度が上がり色相も悪くなり、スラッジが出て付着沈積し、機関に被害を与える。この酸化をくいとめるために酸化防止剤を添加する。
(5)熱安定性に優れていること。
 潤滑油が高温にさらされると熱分解をしてカーボンを発生する。特にピストン冷却をしている場合は高温にさらされるので熱安定性の優れたものが要求される。
(6)錆止め性に優れていること。
 機関の開放時等に誤って潤滑油に水が混入する心配があるので、錆止め性が要求される。
(7)水分離性に優れていること。
 油中に水が混入した場合、直ちに水と油を分離して除去する必要がある。
(8)消泡性に優れていること。
 泡立ちしにくい性質が必要であり、油中に泡の発生が多くなると軸受等の損傷の原因となる。
 
5)潤滑油の選定
(1)選定基準
 最近はHDタイプを使用することが当り前となり、前述の求められる性質を満足する添加剤が含まれている。よって、選定基準としては
(1) ピストン冷却の有無。
(2) 使用燃料油の種類とシリンダ注油の有無(アルカリ価)。
(3) 航海区域の温度条件(粘度)。
(4) 外国に行く場合は日本のメーカと業務提携している潤滑油が簡単に入手できるか。
(5) 運転条件が過酷であるか、比較的楽であるか。
(2)粘度およびアルカリ価
(1) 粘度
 通常、SAE30〜40が使用されるが、寒冷地で運転される場合はSAE30ないしSAE10W/30が望ましい。
(2)アルカリ価
 基本的には燃料油中に含まれる硫黄分によって決められるが、常に一定の硫黄分の燃料油が入手できると限らないので慎重に決定する。なお、最近はアッシュレスタイプが当り前で高アルカリの被害はあまり心配しなくて良い。
 以上を基準に機関メーカかオイルメーカと相談して決める。
 
6)潤滑油の更油
(1)更油時期
(1)更油時期の基準としては潤滑油の汚れによる色相や機関内部の汚れ、機関の使用時間等で判断してきたが、清浄分散剤が添加された潤滑油は色相による判断は不適当になってきた。
(2)機関が高過給化、高出力となり、燃料油も低質化してきている現在、使用潤滑油の性状に関係なく時間のみで管理することは不適当である。
(3)最適な方法としては定期的に使用潤滑油をメーカに出して性状分析してもらい継続使用の判断をしてもらうのがよい。
(4)試料油は通常サンプル缶(1リットル)に一杯あればよく、清潔な缶に常に一定の場所から取る。できるだけコシ器のエア抜き等から取り油溜まりの底から取らないこと。
(5)各性状の評価として以下のことに注意して調査すると良い。
(イ)引火点
 引火点の低下は燃料油混入による希釈が考えられる。
(ロ)粘度
 粘度低下の原因としては、燃料油の混入、粘度の低い油の混合が考えられる。
 粘度は一般に上昇するが、酸化の進行、粘度の高い油(シリンダ注油等)の混合および水分の混入によっても粘度が上がることがあるので注意を要する。
(ハ)水分または塩分
 水分または塩分の混入は清水の場合はジャケットの亀裂、排気弁のOリングやパッキン不良、過給機ケーシングの亀裂および、停泊中に雨水が煙突から混入、また、塩分の反応がある場合は海水の混入であり潤滑油冷却器のチューブが破損していることが考えられる。
(ニ)アルカリ価
 低下は酸中和性、清浄分散性の低下であり、更油の重要な基準となる。
(2)使用限界に対する各性状の評価
 潤滑油の劣化の度合いは、種々の条件によって異なるので管理基準も一概に決めることは実情に即していないが、一応その基準を2・14表に示す。
 
2・14表 潤滑油の管理基準
試験項目 粘度 全酸価 アルカリ価 強酸価 水分
トランクタイプ 0.1 +1.5mgKOH/gr 1.5〜5.0mgKOH/gr 検出されない 0.2%以下
 
 更油は一項目のみで判定するのでなく総合的に決めることが重要である。
 アルカリ価はHDタイプの場合使用油により違いがあるので幅を持たせた。
 粘度はシリンダ注油のあるものは+50%とする。
 簡易的な判定法としては各オイルメーカの提示するスポットテストによることもある。テストの方法、試薬、判定基準はメーカによって異なるので、よくメーカに相談すること。
 
7)潤滑油更油時の注意
(1)基本的には同一メーカの同種類(アルカリ価、粘度は違っても良い)の油を入れる。
 ただしオイルメーカの許可があれば変えても構わない。
 油中には多種の添加剤が入っているのでそれらが反応して乳化や沈澱物を作ることがある。またベースオイルが違うこともあるので注意する。
(2)出来る限り油溜りや機関内部をきれいに掃除をする。
 残油があったり内部が汚れていると、新油の清浄性によってスラッジが洗い出されパイプやコシ器を閉塞させるばかりか、折角の新油の性能が短期間で低下してしまう。
(3)不純物やボロ切れが入らぬよう注意する。







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