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2)油圧湿式摩擦板減速逆転機の構造と作動
(1)油圧湿式単板減速逆転機
(イ)構造
 この逆転機は2・162図に示すように前記の機械式クラッチの機構にあるフローティングプレート(中間板)の操作を油圧で行えるようにしたもので作動油は、クラッチに装備した油ポンプにより、潤滑油を圧送、操作切換弁を経て作動筒内に導くようになっている。作動油の経路は2・163図に示す通りである。作動筒の中立保持は、両側の作動油室内にあるばねで行なっている。このクラッチは、クラッチの切換え操作が容易でワイヤ式、油圧式のリモコン装置が取付けられる。
 
2・162図 油圧湿式単板減速逆転機
(拡大画面:93KB)
 
 
2・163図 油圧単式減速逆転機の作動油の経路
(拡大画面:39KB)
 
(ロ)作動
(a)前進
(1)クラッチ作動油切換弁を前進側へ切換える。
(2)作動油ポンプ(小形機関はエンジンと共用形)から吐出された油は、フィルタを通り作動油圧力調整弁(共用形は第1次調整弁)で規定圧力0.7〜1.4MPa(7〜14kgf/cm2)に調圧され前進油圧通路(前進軸内)に入る。
(3)クラッチハウジング(B)と作動筒の間に圧油が入ると油圧作動筒はエンジン側へ移動する。作動筒に固定された摩擦板押えは同時にエンジン側に移動し前進摩擦板をクラッチハウジング(B)に圧着する。その時油圧作動筒とクラッチハウジング(A)間の油は切換弁を経てクラッチケース油溜にもどる。
(4)クランク軸と直結されたハウジングA、B、Cおよび油圧作動筒はクランク軸と同一回転しているから、これに圧着した摩擦板にクランク軸の回転が伝えられる。
(5)この回転は前進軸、小歯車、推力歯車に伝えられ推力軸はクランク軸と反対方向に回転する。
(6)この時、後進軸は遊転する。
 
(b)中立
(1)クラッチ作動油切換弁を中立にする。
(2)圧力油は切換弁から同時に前進および後進側に入り伺じ圧力で作動筒の両側を押す。
(3)油圧作動筒は復帰バネによって中央位置に復帰する。
(4)摩擦板は中央に戻り、前進軸、後進軸は回転しない。
 
(c)後進
(1)クラッチ切換弁を後進側にする。
(2)圧力油は後進油圧通路を通る。
(3)圧力油は、クラッチハウジング(A)と油圧作動筒の間に入り油圧作動筒を船尾側に移動させる。作動筒に固定された摩擦板押えが後進摩擦板をハウジング(C)に圧着させる。その時ハウジング(B)と作動筒間の油は切換弁を経てクラッチケース油溜に戻る。
(4)クランク軸に直結されて回転しているハウジングは摩擦板を回転させ後進軸を回転させる。
(5)後進軸は後進歯車、中間歯車を介し大歯車(推力軸)を回転させるので推力軸は、クランク軸と同一方向に回転する。
(6)この時、前進軸は遊転する。







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