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8)バランサ装置
(1)構造と機能
 近年、エンジンの高速化、船体のFRP化により要求される性能としては出力性能はもちろんのこと、低振動・低騒音であること、すなわち乗り心地の良いことが重要なポイントとなってきている。この市場の要求に応えて、比較的振動の大きい3シリンダエンジンに1次バランサを、4シリンダエンジンに2次バランサを取付けて振動・騒音の低減を図っている。
(イ)1次バランサ
 往復運動部重量による慣性偶力を消去するため、バランスウェイトにより1/2の偶力を、残りの1/2の偶力は、クランク軸と同じ速さで反対方向に回転するバランサ軸により生じさせる。このようにすることで、1次の慣性偶力は完全に消去される。2・47図にその概要を示す。
 
2・47図 1次バランサ
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(ロ)2次バランサ
 往復運動部重量による慣性力を消去するため、クランク軸の2倍(2次)の速さで回転するバランサ軸を2本、しかも互いに逆方向に回転させることにより上下方向の慣性力を消去することができる。2・48図にその概要を示す。
 
2・48図 2次バランサ
(拡大画面:16KB)
 
(2)点検と整備
 バランサ軸の曲り、軸受部分の摩耗損傷を点検すると共に軸受ブッシュの内径をシリンダゲージで測定し使用限度を越えるものはブッシュを交換する。
 バランサ軸や中間歯車のスラストスキマならびにバックラッシュを点検修正する。
 
9)ダンパ(減衰器)
(1)構造と機能
 クランク軸に発生するトルクは、クラッチ軸、減速軸、中間軸、プロペラ軸を通じてプロペラに伝達され、船の推進力となる。このように比較的細長い軸系に、バランスウエイト、フライホイール、プロペラなど多くの慣性体が付属した場合、軸系に加えられる変動によって、軸系全体にねじり振動が発生する。ねじり振動によるねじり応力は、付加応力となり、伝達トルクによる応力に加わり、これが軸の許容応力を越えると疲労破損を越こす。
 また、軸系にはタイミング歯車、減速歯車などがあるが、ねじり振動による振巾が、ある限度をこえると、これら歯車の噛合部がたたきあい、騒音源となったり、歯面を損傷する。このような場合、ダンパを使用する。
 ダンパは、ねじり振動の振巾がもっとも大きくなる軸端などに装着し、ダンパの慣性体の動きで、振動エネルギをおさえ、ねじり振動による被害を低減させる。
 
2・49図 粘性摩擦式ダンパ
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2・50図 ゴム内部摩擦式ダンパ
 
 ダンパには、ダイナミック式、固体摩擦式、粘性摩擦式、ゴム内部摩擦式などがあるが、一般に使用されるダンパの例として2・49図に粘性摩擦式、2・50図にゴム内部摩擦式の構造例を示す。
 粘性摩擦式(2・49図)では、慣性体Aが振動することにより、クランク軸に固定された摩擦板Bとの間に相対運動をおこし、隙間に封入したシリコンオイルCの粘性摩擦により、振動エネルギを吸収する。
 ゴム内部摩擦式(2・50図)では、慣性体Eが振動することにより、クランク軸に固定した支持板Fとの間にはさんだゴム材Gを変形させ、ゴムのヒステリシスによる内部摩擦により、ねじり振動エネルギを吸収する。
 ダンパは通常、クランク軸前端に固定して使用する。
(2)点検と整備
 ダンパは通常、ゴム、粘性液などを、振動エネルギの吸収材に使用しているため、ある程度の劣化は避けられず、定期的な点検による不具合の早期発見とメーカの指定した使用時間に達した場合は必ず交換し、クランク軸等のねじり振動による折損事故を未然に防止する必要がある。







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