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2.4 プロペラ軸のFRP巻きの補修
 プロペラ軸のFRP巻きの損傷が発生した場合、つぎの要領で補修する必要がある。
 ただし、補修前に検査官と協議して、工事を施工する必要がある。
 
1)SKSバインディングの補修方法
(1)部分補修
(1)部分的欠陥が発見されt=1/3T以下の場合は、その部分をサンドペーパ又はグラインダ等で削り落とし、SKSバインディング用の材料を用いて、7・7図の要領で補修を行う。
 
7・7図
(拡大画面:24KB)
 
(2)部分的欠陥が発見されt=1/3Tを超える場合は、その部分をサンドペーパ又はグラインダ等にて7・8図の要領で削り落とした後、全周にわたりグラインダ又は旋盤等で深さ約1mm程度削り落とす。次に、SKSバインディング用の材料を用いて、欠陥部を埋めた後、削り取った全周に樹脂とテープを2回巻きする。
 
7・8図
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(3)軸表面の剥離箇所が発見された場合は、その部分をサンドペーパ又はグラインダ等にて7・9図の要領で削り落とした後、全周にわたりグラインダ又は旋盤等で深さ約1mm程度削り落とす。次に、SKSバインディング用の材料を用いて、欠陥部を埋めた後、削り取った全周に樹脂とテープを2回巻きする。
 
7・9図
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(4)その他の損傷については、検査官と協議検討の上、補修方法を明示し、検査官の指示にもとずいて施工する。
 
2)全面巻替え
 軸表面の剥離箇所が長さ1m内に4箇所以上発見された場合は、その間を全面巻替えとする。
 
3)材料
(1)樹脂
 樹脂は、ハンドレイアップ法に適したSKS−V1及びSKS−P1樹脂とし、社内規格に定めた樹脂選定試験に合格したものを使用する。
 (関検機第88−50号で承認を受けた樹脂を使用する。)
(2)補強材(ガラス繊維)
 補強材はガラス繊維とし、単繊維の太さ9μ以下の無アルカリ(アルカリ含有量0−8%以下)のものとし、表面処理はシラン処理(繊維に油分が含まないようにする。そして樹脂を含有させて透明度を出す)したものでJIS規格に合格するガラスロービングクロス(JIS.R 3417)、チョップドストランドマット(JIS.R 3411)、ガラステープ、(JIS.R 3415)、ガラスロービング(JIS.R 3412)、サーフェイスマット等を用いる。
 (関検機 第88−50号で承認を受けたガラス繊維を使用する。)
(3)SKSバインディングの機械的強度
 
7・1表 SKSバインディングの機械的強度
試験項目 規格値
曲げ強さ N/mm2 216以上
曲げ弾性率 N/mm2 10,000以上
引張強さ N/mm2 137以上
空ドウ率 % 3以下
樹脂含有量 % 49〜57
カタサ(バーコル硬度) 45以上
 
(4)SKSバインディングの金属と樹脂の接着力
 
7・2表 金属と樹脂の接着力
素材 剪断、接着強度(N/cm2 引張、接着強度(N/cm2
SS41(軸材)との接着 980以上 980以上
BC2(スリーブ材)との接着 980以上 980以上
 
2.5 プロペラ軸とプロペラとのはめあい
 プロペラ軸とプロペラとの摺合せ検査は、プロペラ軸のテーパ部にブルーペイントを塗布し、プロペラ軸とプロペラとの共ずり合わせを行う。この時のコーン部の当り面は出来るだけ均等になるよう行う。
 キー付きプロペラの場合テーパ部の当り面は75%以上とし、しかも1インチ面積当り5ヶ所以上当り面があること。
 キーレスプロペラの場合、テーパ部の当り面は75%以上とし、しかも1インチ面積当り3ヶ所以上当り面があること。
 もし、上記の当りが達成出来ない場合は、満足出来る当りが出る迄作業を繰返す。
 この作業はプロペラの押込み作業と共に、プロペラ軸テーパ部のフレッティングコロージョン防止上重要なことであるので、入念に行うこと。
 
2.6 プロペラキーのはめあい
 キー付きプロペラの場合、プロペラ軸にキーを取付け後プロペラ軸とプロペラボスのテーパ合わせと同じにキーのはめあい検査を行う。キー側面とプロペラボスとのサイドクリアランスは一般に0.00〜0.04mmであるが、出来るだけキー側面の当りは均等にし、85%を標準とする。
 
2.7 船尾管軸受
1)海水潤滑軸受
 海水潤滑軸受材としては、リグナムバイタ、ゴム、合成樹脂(フェノール樹脂、ナイロン、テフロン等)が使用される。
 ここでは、リグナムバイタ軸受およびゴム軸受の採用の留意点について記す。
(1)リグナムバイタ軸受
 リグナムバイタは熱帯地方に成育する自然木で、樹脂に満ち、繊維が極めてち密で、自己潤滑性に優れた軸受材である。比重が約1.2で海水に沈み、のこぎりでは容易に切れない堅さを有している。
 リグナムバイタは、海水に浸漬すると、膨張するので、装てん時長手方向に伸びしろを軸受全長の1%程度見込む必要がある。リグナムバイタ片の円周方向の分割数は1片の幅の寸法を考慮して半円周で奇数とし、垂直眞下で合せ目にならないようにする。また上半分の軸受面は板目、下半分は変形がきわめてすくない木口面とするようにリグナムバイタ片を採取する。軸受長手方向は千鳥形状になるように配列する。軸受面に設ける長手方向の海水冷却みぞの形状は、摩耗により、通過面積の急激な減少をさけるため、UV形を使用する。
 リグナムバイタの軸受性能の維持が、軸受摺動面の条件に大きく影響されるので、つぎの事項に注意する必要がある。
(1)プロペラ軸スリーブの材質として、CAC 407(BC 2)+0.5%Niがリグナムバイタとの適合性が最も優れているのでこの材質のスリーブを採用すべきである。
(2)軸受け摺動面への異物侵入を防止するには、艤装時に船尾管用の管系などは酸洗いを行なって、管内の付着部を完全に除去することはもちろんであるが、砂、汚物などが浮遊している港湾、河川などを航行する船舶にあっては、リグナムバイタの摩耗がいちじるしく促進されるので、少なくとも、こし器を通した清浄な海水の強制供給が必要である。また船尾管への送水確認のため、海水冷却管系にサイトクラスあるいは、圧力計の設置が望ましい。
(2)ゴム軸受
 ゴム軸受の軸受間げきは、水中でのゴムの膨潤により軸受間げきが少なくなることがあるので、適正軸受間げきを十分保つ必要がある。
 軸周速度に関しては、ゴム軸受は、軸周速度が速くなるにしたがって摩擦係数が小さくなる傾向にある。軸の始動時、および低回転時には、摩擦係数が大きいので、適正冷却水量を確保する必要がある。一般に、適正冷却水量の目安としてはつぎの式による。
Q=(3〜3.5)Ds
 Q:冷却水量 l/min
 Ds:軸スリーブ外径 cm
 冷却水の供給圧力は、軸心における海水圧+(0.1〜0.15MPa(1.0〜1.5kgf/cm2))程度を確保するのが望ましい。
 冷却水ポンプは、ゴム軸受冷却用の独立ポンプによるか、または、ほかの海水冷却水ポンプから分岐して注水する。
 艤装期間が長い船舶または、停泊期間が長い船舶では、艤装期間中、および係留期間中、ゴム軸受冷却水の通水路にフジツボなどが密生して埋まることがあるので、通水路の保守には、十分留意する必要がある。長期間停泊していた船舶で、冷却水の通水路にフジツボが埋まっていたのに気がつかず、軸を回転したところ、ゴム軸受を焼損した例がある。また、艤装中に水中で長期間軸を回転しないで放置したところゴムが膨潤してしまい、適正軸受間げきに直した例もあるので、ゴムの軸受の膨潤について十分検討する必要がある。
 就航中の事故としては、冷却水管のこし器が目づまりしていたのに気がつかず、軸を回転したところ、ゴム軸受を焼損した例が報告されている。これらの事故の原因は、ゴム軸受への冷却水量の不足に起因するものが多いので、軸の回転中は、適正冷却水量を確保する必要がある。
 ゴム膨潤量については、各メーカおよびゴム質によって異なるが、目安として、ゴムの膨潤量は次の式で表わされる。
ΔT=T・β・Δt
ΔT:膨張量 mm
T:ゴムの厚さ mm
β:体積膨張係数:(20〜30)×10-5
Δt:温度差 ℃







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