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2. 軸系装置
2.1 中間軸およびプロペラ軸の補修
(1)プロペラ軸の補修を行い得る欠陥、傷などは、軸表面に現われた非金属介在物か、欠陥、傷を除去したあとのくぼみの深さが軸径の1%(最大3mm)以下の場合のみである。ただし、修正後の推定軸径は、機関規則による要求軸径より大であること。
(2)欠陥、傷などの補修は、必ずラウンドオフとし、底には、深さの2倍以上の丸味をつけて仕上げなければならない。
(3)補修を行なった部分は、染色浸透探傷または磁粉探傷を行ない、欠陥、傷は完全に除去されたことを確認する。
(4)補修前に欠陥、傷などの見取図を作成して、検査官と協議してから補修工事を施工する必要がある。
 
2.2 プロペラ軸スリーブの腐食、対策
(1)海水潤滑方式の場合、プロペラ軸スリーブの腐食が船尾管軸受の支面材(リグナムバイタ)の位置に当る個所に発生することがある。このプロペラ軸スリーブの腐食は、スリーブ表面にプロペラ翼数または、その倍数で軸方向に長い浸食が現われる。これはプロペラ軸の横振動に起因するスリーブ表面のキャビテーションなどによるものである。
 プロペラ軸スリーブの表面がざらざらになるので、リグナムバイタの摩耗を著しく促進させる。
 この対策として、船尾管内への冷却水量および圧力を増す。
(2)プロペラ軸スリーブの材質がステンレス鋼の場合、停泊時船尾管内への冷却水が流れていなかった為、スリーブ表面に電蝕が発生することがあるので、停泊時は間歇的に冷却水を流し、また就航時は十分冷却水量および圧力を確保する必要がある。
(3)船尾管船首側の封水装置にグランドパッキング方式の採用する場合、プロペラ軸スリーブと船尾管パッキンとの摩耗によりスリーブ表面が深く摩耗することがあるので、プロペラ軸スリーブのパッキンとの摺動部は予めFRPなどでコーティングして保護する必要がある。
 また、端面シール装置の場合、プロペラ軸スリーブが電蝕で腐食することがあるので、端面シール装置のプロペラ軸スリーブ摺動部にFRPなどでコーティングまたは防食ペイントを塗布して保護する必要がある。
 
2.3 プロペラ軸のゴム巻きの補修
 プロペラ軸のゴム巻きの補修に関しては、検査官および船級協会の検査員と十分協議し、補修後第1種軸として使用するか否かも確認する必要がある。
 
1)修理の範囲
 修理可能な範囲は次の通りとし、それ以上のものは補修したとしても第1種軸としては認められない。
(1)あてきず及びあてきずによる切れ
 傷の直径が軸径の半径に相当する円弧上の長さ以内の大きさで深さ6m/m以下のものとする。但し深さはゴム層の厚さの2/3をこえない範囲とする。
(2)自然老化
 製造後9年以上の経過したもので自然老化があるものは、修理をしても第1種軸として認められない。
(3)自然亀裂、あり溝部の接着層のはがれ、またはその他の接着部の浮きは修理を行なっても第1種軸として認められない。
 
2)補修方法
(1)ゴム材
 修理を行なうには次の材料を準備しなければならない。
 ゴム巻本体の材料が天然ゴム(NR)、クロロプレン系(CR)、プタジエン系(SBR)又はニトリル系(NBR)の何れに属する配合ゴムであるかを見分けて加硫ゴムに接着できかつ色相が同じであるように材料を選ばなければならない。
 加熱方法によって相違があるが、ゴム巻き本体のゴムを劣化させないために若干量の加硫(硬化)促進剤を添加して加硫を速める必要がある。
(2)こて塗材又は刷毛塗剤
 修理部分が比較的小さく、かつ深さが浅い場合には適当に配合した糊状又はペースト状のゴムを使用してもよい。この場合ゴム糊が接着剤を兼ねることがあるので加硫ゴムと接着が良いことが必要である。
(3)接着剤
 加硫ゴムに接着し易い、吸水性の少ない接着剤を選ばなければならない。
(4)修理する軸の準備
 軸は修理部分を上向きに充分軸重量に耐える荷台上に静置する。修理部分を鋭利な刃物で断面が台形状になるよう切取り、ザンドペーパを用いて接着面をみがいておく。
 次にこの部分をガソリンなどで拭い脱脂を行なう。脱脂は丁寧に2、3回行なう。
(5)施工
 上の準備が終ったときは次の作業に移る。
(1)配合ゴム板による施工
 予め用意した配合ゴム板を修理部分の大きさおよび厚さに重ね合せ裁断する。
(a)接着剤塗布
 修理部分に接着剤を均一に塗布する。2回塗りを標準とするが2回目の接着剤には新しく充填するゴムにて接着し易すくするために共糊を使用してもよい。2回目の塗布は1回目の接着剤が充分乾燥してから行なうこと。
(b)ゴム充填
 接着剤が充分乾燥してから用意した配合ゴム板を片端から順次ステッチャーロール(ミシンロール)などを用い修理部分に充填、圧着しておく。この場合空気溜、隙間など無いように注意をしなければならない。
(c)加硫(加熱)
 前(4)項において準備した軸の修理部分のゴムが適正加硫を行なえるよう電器、又は赤外線加熱ランプなどの熱源によって加熱硬化させる
 例として
1.電熱による方法
2.蒸気による方法
がある。
(2)こて塗剤又は刷毛塗剤による施行
 前(4)項で準備した修理部分に別に用意したペースト状のゴムを摺込むように充填する。充填した後加熱(加硫)を行なって硬化させる。常温硬化するように適当量の加硫促進剤を添加した場合は加熱しなくともよい。加熱するとき急激に温度上昇を行なうと発泡するので注意が肝要である。
 刷毛塗剤の場合は1回の塗布量が厚さ0.3〜0.6mm位とし充分硬化してから次の塗布を行ない、所要厚さまで積層をつづける。塗布剤には常温硬化するよう加硫(硬化)促進剤を適当量配合しておくこと。
(3)簡単な修理
 きずの深さが1mm以内の場合にはサンドペーパなどで円滑に整形するか、前(2)の方法で充填修理を行なう。
(6)ゴムの物理的性質
(1)修理に使用する配合ゴムは次の性質を保有すること。
・引張強さ 10MPa(102kg/cm2)以上
・伸び 250%以上
・老化後の引張強さおよび伸びの変化率(老化条件±20%70℃96時間空気中)
・加硫済ゴムとの剥離強さ98N(10kg)/25mm以上
・かたさ 70〜80
・吸水率 +15%以下
(2)物理的試験方法
 JIS K 6301に規定した方法による。
(7)仕上げ
 加硫が完了したならば加熱器具を取外し約40℃以下まで冷却をする。冷却後鉄やすり又はサンドペーパで修理部分を平滑に仕上げる。
(8)検査
 仕上後修理部分をテストハンマで軽くたたき打診により剥離又は浮きを検査する。
 
3)補修記録の作成方法
 ゴム巻補修記録用紙を客先の協力を得て確実に作成する。
 記録を残すことにより推進軸の履歴を確実にし、安全な運転を確保することができる。







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