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4)オーバロード
(1)オーバロード
 過負荷状態で運転している場合は、機関出力に余裕がなく、増速しようとしても回転は上昇しない。
 通常、連続定格出力の110%までを限度として、燃料噴射量の制限をしており、このような過負荷運転は、連続1時間以内に限っての使用に対して、メーカは製品の保証をし、それ以上の連続使用は、常識では考えられないこととしている。
 従ってオーバロードでの使用は万止むを得ない場合に限り、1時間以内での使用に限り認められているのであり、通常は定格出力及び回転速度以下で運転願いたい。
(2)アイドリング回転の下げすぎ
 規定回転速度以下に下げ過ぎた場合は、増速時に追従しないばかりでなく、エンストをする。
 このような倍は600〜650min-1の範囲にアイドリング回転を上げなければならない。
 
5)噴射タイミングの狂い
(1)タイミング調整不良
a)噴射タイミングの調整不良
 噴射タイミングは早過ぎても遅過ぎても燃焼に悪影響を与えて出力低下するので、加速時に回転が追従しなくなる。噴射タイミングを正しく修正しなければならない。
b)バルブタイミングの調整不良
 カム山及びタペットの摩耗により、バルブタイミングが大巾に狂うと、出力が低下して増速時に回転が追従しなくなる。
 カム軸及びタペットを交換又は調整して修復しなければならない。
(2)カム山、タペットの摩耗
 燃料カム山及びタペットが異常摩耗を起こすと、噴射タイミングが大巾に狂い、カムリフト量も大巾減少するので、出力低下して増速時の追従性が悪化する。
 カム軸及びタペットを交換し修復しなければならない。
 
6)フィードポンプの故障
(1)ピストンの摩耗
 フォードポンプのピストンが摩耗すると、吐出性能が低下するので、増速時の追従性が悪化する。ピストンを交換して修復する。
(2)バルブの不良
 バルブ及びシートの気密不良により、もれを生じ吐出量が減少する。バルブを交換して修復する。
(3)リターンスプリング折損
 ピストンを戻すバネであり、折損するとピストンが作動できなくなり、燃料供給が停止する。
(4)燃料カム山の摩耗
 カム山及びタペットが摩耗すると、ポンプリフトが減少して、吐出量が低下する。
 いずれも、フィードポンプの性能が大巾に低下し吐出量が減少するので、直ちに修理しなければならない。
 
7)コントロールラック、リンクの作動不良
(1)ラックの曲がり、引っかかり
 コントロールラックが曲がったり、そのストローク範囲に他との接触や干渉があると、円滑に摺動しなくなるので、増速時にコントロールラックが動かず、追従性がなくなる。
 コントロールラックを手で動かし、円滑に動かぬ時は円滑に動かせるように修正しなければならない。
 ラックの摺動抵抗は規定値以下でなければならない。
(2)ピニオンの変形
 ピニオンの変形、歯車欠損などを起こすと、コントロールラックとの噛合が円滑にできなくなり、作動が不確実となる。ピニオンを交換修復しなければならない。
(3)プランジャのスティック
 プランジャの摺動面が腐食、損傷、焼付きなどを起こして、プランジャがスティックすると、コントロールラックが動かなくなる。プランジャ及びバレルを交換修復しなければならない。
 プランジャの戻しバネが折損した場合は、プランジャが戻らなくなり、ピニオンが円滑に動かなくなるので、コントロールラックも円滑に動かなくなる。
(4)リンクの作動不良
 コントロールラックに連結するリンクや軸などに曲りやこじれを生じると、コントロールレバーの動きがコントロールラックに円滑に伝え難くなり、作動不良となるので、増速時の追従性が悪化する。
(5)左右連結リンク取付不良
 V形機関の場合は、左右のコントロールラックを連結するリンクが取付不良になると、左右シリンダの出力がアンバランスとなり、増速時に回転が円滑に追従しなくなる。
(6)ユニットポンプのリンク取付不良
 シリンダ毎に設けられた噴射ポンプのコントロールラックを連結するリンクや連結桿が曲ったり、こじれたりするとコントロールラックが円滑に作動しなくなるので追従性が悪化する。曲がりやこじれを修正し、円滑に作動するようにしなければならない。
 
8)ガバナ故障
(1)スイベルレバーのネジ調整不良
 ガバナスプリングの張力をネジにより調整してガバナの速度変動率を調節できるようになっている。
 ネジを弛め過ぎるとバネの張力が減少して、増速時の追従性が悪化する。反対に締め過ぎると鋭敏になり過ぎて、回転変動が生じ易くなる。
 このネジによりガバナスプリングの張力を調整した場合は、ガバナ性能が変化するので再調整しなければならない。ネジの調整範囲はガバナにより、異なるので注意しなければならない。
(2)ウエイトバネ力調整不良
 ガバナウエイトの先端に、バネ力調整ネジが設けられており、このネジにより速度変動率を調整する。
 このネジ調整の極端な調整不良によって増速時の追従性が悪化する。ネジの締め過ぎは、速度変動率が鋭敏となり、回転変動を生じ易く、弛めると鈍感になる。
 ネジの調整範囲はガバナにより、異なるので注意しなければならない。
(3)ニードル弁の調整不良
 ウッドワードガバナの場合、ニードル弁を閉じ過ぎると、追従性が悪くなる。通常は、ハンチングするまでニードル弁を開き、混入する空気を完全に抜いてから、ハンチングが止まるまで徐々に締め込む。ニードル弁の開度は、最低限1/4〜1/2回転程度は開けておかなければならない。
(4)パワーピストンの作動不良
 パワーピストンが膠着して、円滑な作動ができなくなると、追従性が悪くなる。分解清掃又はガバナを交換しなければならない。さらに潤滑油濾器も点検清掃又は交換しなければならない。
(5)油圧が低すぎる
 濾器の詰まり、リリーフ弁の膠着、ポンプの摩耗などで油圧が低下し過ぎると、追従性が悪化する。
 その他、ドレン孔や油通路孔が詰まると、同様に追従性が悪化する。
(6)速度ドループの調整不良
 速度ドループピンの位置を、フライウエイト方向へ寄せ過ぎると、追従性は悪化し、パワーピストン側へ移動すれば、速度変動率は鋭敏になり、回転変動が出やすくなる。







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