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1級舶用機関整備士指導書

 事業名 舶用機関整備士の資格検定事業
 団体名 日本舶用機関整備協会 注目度注目度5


第3章 ディーゼル機関各部および付属装置の整備
 近来、ディーゼル機関は、高出力化、高性能化が進むとともに、その品質の向上も著しいものがあり、機関の部品、部材も高品質のものとなり、近代的な品質管理のもとで生産されている。
 こうした背景から、エンジンの整備に対する考え方も整備の方法も変化してきており、整備の作業は、多くの工数を必要とする部品の手直しや現物合せ、すり合せなどは少なくなり、整備の主な作業は「新品部品と交換する」こととなった。
 また、機関は定期的に、メーカの保守点検基準に基づいて点検、整備をすれば、一定の期間は支障なく使用できるようになっている。
 従って、整備にあたっては、予めその機関の来歴ならびに使用状況、使用時間などを充分機関の取扱説明書、整備マニュアル等により把握し、メーカの整備基準に基づいた整備を行う必要がある。
 万一、部品の破損等の事故に対して修理、整備を行う場合は、その原因、対策について詳細にメーカと相談し、適切な処理を行わなければならない。
 
1. 一般的留意事項
1.1 分解整備の準備
(1)機関分解に先立ち、機関の外観をチェックし、水、油漏れ、ガス漏れ等の異常があれば記録しておく(必要な場合はその状況を写真に撮る)。
(2)冷却水、燃料、潤滑油の排出に際しては、その性状に注意し、汚れ、変色等異常のある場合は、サンプルを採っておく。分解後部品に異常が有った場合、その原因究明に役立つことになる。
(3)分解、組立てにあたっては、適正な工具を使用し、取付寸法、スキマ、締付けトルクなどは測定値による作業を行うので、必要な測定器を準備すること。
 
1.2 分解時の留意事項
(1)分解直後に汚れの状態やカーボンの付着状況に異常のある場合は、記録あるいは写真を撮っておき、特に分解中に破損箇所や不具合箇所を発見した場合は、記録とともに客先と打合せを行い、整備修理の方針をはっきりさせて後日のトラブルが発生しないようにすることも必要である。
(2)破損した部品はすぐに廃棄しないで、検討が済むまで現状のまま保存すること。
 これは原因究明と客先とのトラブル防止に役立つ。
 
2. ディーゼル機関の各部の整備
2.1機関本体部
1)シリンダブロックおよび台板
 シリンダブロック、台板は、機関の燃焼圧による変動荷重の支持構造物である。
 この変動荷重によってシリンダヘッド取付ボルト用ねじ穴、ライナ挿入孔角部、クランク室隔壁、リブ等の応力の高い部分が繰返し応力による亀裂発生(疲労破壊)を起こすことがある。
 また、水ジャケット部はキャビテーションによる腐食や電気的腐食(電食)、水質不良による酸化腐食(これらについてはシリンダライナの腐食参照)が発生することもある。
(1)点検および整備
 3・1表 シリンダブロック(台板、オイルパン)の点検、整備による。
 
3・1表 シリンダブロック(台板、オイルパン)の点検、整備
点検計測内容 整備内容
(1)シリンダ本体
(1)シリンダヘッド取付け部植込みボルト用ねじ穴周辺の亀裂の有無点検(カラーチェック) 亀裂あるものは交換
(2)シリンダライナのかん合部挿入孔の鍔部の損傷および亀裂の有無点検(カラーチェック) 軽微な損傷は修正、はなはだしいものは交換、亀裂のあるものは交換
(3)シリンダライナのかん合部挿入孔のパッキン座の損傷腐食の有無点検 修正、水漏れの防止できないものは交換
(4)シリンダライナのかん合部挿入部の腐食、亀裂の有無点検 軽微なものは修正、はなはだしいものは交換
(5)防食亜鉛、防食塗料の損耗状況点検 原形の1/3以上損耗しているものは交換
(6)冷却水ジャケット部、冷却水連絡孔部の腐食の有無 腐食の軽微なものは修正、スケールを落し防錆塗装する
(7)各植込みボルトのゆるみ、ねじ部の損傷がないか点検(台板側も同じ) ゆるみのあるものは締直し、軽微な損傷は修正または交換
(8)各油穴にゴミ、異物がないか、亀裂など生じていないか点検 洗浄掃除
(9)クランク室各隔壁、リブに亀裂がないか点検(カラーチェック) 亀裂のあるものは交換
(2)台板(オイルパン)
(1)シリンダと同様に黒皮面、特にリブおよびその付け根の亀裂の有無を点検する(カラーチェック) 亀裂のあるものは交換
(2)シリンダ、台板との合わせ面の損傷状態を点検 修正
(3)シリンダ、台板の締付けボルトの締付け面の損傷状態を点検 同上
(4)台板の据付け面の損傷点検、チョックライナのゆるみ点検 据付け面は修正、ゆるみはデフレクションを測定しながら据付ける。
 
2)シリンダライナ
 シリンダライナは、シリンダヘッド、ピストン、ピストンリング等とともに燃焼室を形成する部品の1つで、機能の面からも耐久性の面からも非常に重要な部品である。シリンダライナの摩耗は、機関の分解整備間隔を決める大きな要因になるので、シリンダライナに耐摩耗性をもたせることが重要になる。耐摩耗性を向上させる方法としては、
(1)摩耗に強いパーライト鋳鉄やボロン、リンなどを含んだ合金鋳鉄を使用する。
(2)シリンダライナ内周面に多孔性の硬質クロムメッキを施す。
(3)その他の表面処理。
 シリンダライナ内周面は運転状態での気密性を損なわぬよう、真円度、平行度が必要で1例を挙げると、シリンダ内径100mm前後に対し、楕円、テーパともに0.02mm以下が望ましいとされている。
 シリンダライナ内径の摩耗はガスもれによる性能低下、潤滑油の汚損や潤滑油消費量の増加等運転時、不具合を生じてくる。
 一般にライナの摩耗量がシリンダ径の約0.5%以上に達した場合交換する必要がある。
 スリーブレスの場合はオーバサイズに加工し使用する。
(1)点検および整備
 3・2表シリンダライナの点検、整備による。
 
3・2表 シリンダライナの点検、整備
点検計測内容 整備内容
(1)分解したままの状態で点検
(1)冷却水側の腐蝕の状態目視 軽度のものはグラインダで修正
(2)つば部パッキン部の当り状況目視 修正、当り不良はなはだしいものは交換
(3)上部のカーボン堆積状況目視 カーボンの掃除
(2)掃除後の点検
(1)内面のかき傷、摩耗、焼付きの状況、特にクロムメッキをしてある場合は酸食(ミルキスポットの有無)を点検 軽微な場合はサンドペーパまたはオイルストンで修正、はなはだしいものは交換 酸食により段付きはなはだしいものは交換
(2)亀裂発生の有無(カラーチェック) 亀裂あれば交換
(3)シリンダヘッドとの締付け面の当り、気密パッキンの状態 変形、傷は修正、はなはだしいものは交換。パッキンは交換
(4)内径の計測(特にピストン上死点の第1リング位置付近の摩耗) 使用限度以上のものは交換(または研削、オーバサイズピストン使用)
(5)ゴムパッキンはめ込み部の腐食の状態 腐食深さ使用限度以上のものは交換
(6)防食亜鉛の損耗状態 原形の1/3以上の損耗は交換
(7)シリンダブロック(本体)とのかん合部、外周の腐食状況 腐食のはなはだしいものは交換
 
(2)シリンダライナの内径計測(2・21表
(1)測定位置(I)第1リングのTDCにおける位置は必ず測定する。
(2)測定位置(III)第1リングのBDCにおける位置、測定位置(II)はその中間である。
(3)偏摩耗量は、直角方向との寸法差をいう。
(3)シリンダライナの摩耗
(1)摩耗しやすい箇所
 ピストンが上死点にあるときの第1リングの位置が最もひどく摩耗する。
 この理由は次のとおりである。
a. 高圧ガスが、ピストンリングの背面に働いているが、上死点付近は燃焼圧が高く、リングの摺動面圧が高い。
b. ピストン速度が低く、油膜厚さが少なくなる。
c. シリンダ上部ほど潤滑油の回りが悪く、しかも高温にさらされ潤滑油の粘度が下り、潤滑作用も低下している。
 次に摩耗が激しいのは、ピストンが下死点のときの第1リングがあたる部分で、ピストン速度の大きい行程中央は最も摩耗が少ない。
 また、クランク軸方向に比べて、直角の方向が側圧のため摩耗しやすい。
(2)シリンダライナ摩耗の原因と摩耗の方向
 シリンダライナの摩耗は、避けることができないもの(正常摩耗)と設計、製作の不良または取扱い不良によって起こるもの(異常摩耗)の2つに分けることができる。
(正常摩耗)
 摺動面が滑らかで、かき傷もなく、燃焼ガスの吹き抜け(ブローバイ)の跡を認められない状態。
(異常摩耗)
 摺動面のかき傷、スカッフィング、ブローバイによる変色、段付摩耗などで、異常が発生する理由には次のようなものがある。
a. 潤滑油の粘度やグレード(APIサービスグレード)が適当でなく、粘度不足による油膜切れ、グレードが低いことによるオイルの劣化などにより、潤滑不良となり、摺動面のかじり、摩耗の増大となる。
b. 潤滑油の不足、または入れ過ぎ
 潤滑油の不足は当然オイル切れによる焼付きとなるが、多過ぎる場合もスプラッシュによるオイル上りなどにより、リングの固着を招き、燃焼ガスの吹き抜け(ブローバイ)により高温、潤滑不良となり焼付きの原因となる。
c. 使用燃料油の不適、すなわち灰分の多いものは、これがリングとシリンダライナの間にはさまれて摩耗をひどくし、硫黄分の多いものは、これが燃焼して生じた硫酸によりシリンダライナ壁を腐食する。
d. 長時間の過負荷運転をした場合は、高熱のため潤滑作用が悪くなるし、高圧のためリング裏からの張り出しが強くなる。
e. 燃焼不良の場合、カーボンを多く発生し、これがリングとシリンダライナの間にはさまれて摩耗を激しくする。
f. シリンダライナ冷却水温度が不適の場合、すなわち冷却水温度の低過ぎ(過冷却)は燃焼不良や燃料中の硫黄分による硫酸腐食となり、高過ぎは潤滑不良となる。
(3)シリンダライナ摩耗の影響
a. 圧縮漏れのため、圧縮温度が下がり燃焼不良となる。
 特に始動や低速運転が困難となる。
b. 燃焼ガスが漏れるため、平均有効圧が下がり出力の低下とともに、クランク室の潤滑油が早く劣化する。
c. 高圧ガスの吹き抜けのため、ピストンリングの固着や折損を生じやすく、シリンダライナの摩耗はさらに激しくなる。
(4)硬質クロムメッキライナについて
 シリンダライナ内面の耐摩耗性を向上するため、硬質クロムメッキを施したシリンダライナも一般的に使われている。メッキ層の表面は潤滑油の保持性が悪いため、ポーラス度を高めたチャンネルタイプやポケットタイプの硬質クロムメッキがシリンダライナ内面に用いられる。一方メッキの密着度が悪かったり、ポーラス孔が下地まで貫通している場合はメッキ層の剥離を生じ易く、燃料中の硫黄分が多く潤滑油のアルカリ度が不足する場合は白斑(ミルキスポット)現象(酸食)を生じることがある。またメッキライナにはピストンリングのライナ摺動面にメッキされたリングを用いるとメッキ同士が溶着するため、メッキリングは絶対に使用してはならない。







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