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2.3 工場設備
 整備工場に求められる一般的な設備は、以下のとおりである。
 
1)工場の付帯設備整備
 整備工場の付帯設備としては2・5表に示すものが必要である。なお、一部の工事を外注するような場合は、必ずしもすべての機器を取りそろえる必要はない。
 
2)機械加工設備
 機関の整備には、通常使用しないが、整備完了後の据付工事、あるいは船体関係の工事には下記設備が必要である。
(1)工作機械
(1)旋盤
(2)ボール盤
(3)フライス盤
(4)鋸盤
(5)グラインダ
(6)カッティンググラインダ
(7)セーパ
(8)電気ドリル
(9)電気サンダ
(10)ネジ切り盤
(2)溶接、切断設備
(1)可搬式電気溶接機
(2)ガス溶接、切断機
 
2・5表 工場付帯設備
  品名 用途・容量・その他
(1) 天井クレーン 扱う商品の最大重量のものが吊り上げられる容量のものが望ましい
(2) チェーン・ブロック 小物部品の吊り上げ用
(3) 廃油回収設備 廃油を下水等に流さない様公害防止からも是非必要な設備である。方法としては、多段式水槽或いは廃油回収器等がある。
(4) エアコンプレッサ 部品の洗浄、或は塗装等に使用する
(5) 機関分解組立台 機関の分解、組立用
(6) 一般作業台 整備、修理等の一般作業に使用
(7) バイス台及びバイス 作業時における部品等の固定、保持に使用する
(8) 油圧プレス ブッシュメタル等の圧入、軸等の曲り修正等に使用する
(9) 部品整理台 分解部品の一時保管に使用する
(10) 計測器具保管庫 検査用の計測機具の保管用
(11) 運転設備 整備、修理完了後の機関性能の確認の為の運転用
地下又は庫外に消音設備が必要
<注>試運転は船内で出来るので絶対必要な設備ではないが、無負荷運転のみでも出来る設備を設置することが望ましい
(1)運転用レール
(2)動力計
(3)冷却水槽
(4)燃料設備
(5)排気消音設備
(12) 塗装設備 整備完了機関の塗装用
(13) 充電設備 バッテリ充電用
 
(3)工場設備の保守点検と安全管理
 工場設備のうち、特にガス溶接設備や運搬設備(天井クレーン、チェーン・ブロック)等は、長期間使ったもので保守点検がなされていない場合は、ガスもれ、ワイヤロープの損傷等の発見が遅れ、思わぬ事故となる場合がある。また、旋盤等の工作機械類も、日常の保守点検、ならびに定期整備がなされていない場合には、早期に、その精度が低下し、加工された部品が不良品となることもある。このようなトラブルを未然に防止するためには、日常の保守点検と安全管理を徹底するとともに、工場設備も検査機器と同様に、設備台帳を作成し、定期的に検査を行い、精度不良のものがあれば修理を行い、たえず、一定水準以上の精度を維持させなければならない。なお、設備台帳には下記項目を記入し、個々の設備の来歴(修理内容と精度記録等)が判るようにする必要がある。また、工場には安全管理者を設け、個々の設備の取扱い担当者とともに日常点検および定期的な安全チェックを行うことが事故の未然防止となる。
(1)整理No.
(2)設備名称
(3)機械No.
(4)購入日、購入店
(5)主要目
(6)整備来歴とその内容
 
2.4 洗浄設備
1)洗浄の重要性
 機関を整備または修理する場合、部品の検査とともに、特に注意しなければならないのは部品の洗浄である。部品の洗浄が悪いと外観検査で正しい判断ができないと同時に、寸法計測を行っても正確な寸法を得ることがむずかしい。また、このような洗浄不良の部品を使って機関を組み立てた場合、機関性能が100%発揮されないばかりか、運転中に不具合が発生するケースもある。
 
2)洗浄設備機器
 一般に使用されている洗浄機器とその特長を2・6表に示す。整備工場の規模、扱い台数に応じ、このうちより選定し、設置することが望ましい。
 
2・6表 洗浄設備機器
  品名  用途・容量・その他
1 部品洗浄槽 洗油をポンプで常に循環させ、汚れた油は、こし器で完全に浄化させるエアガン及びエンジンクリーナも接続できる
2 スチームクリーナ 灯油を燃料として、0.4〜0.7MPa(4.1〜7.1kg/cm2)の蒸気を発生させ、これをもって機関外側の汚れを落す
3 高圧洗浄機 軽油を高圧で噴射させ、部品の汚れを落とす
4 超音波洗浄機
高周波洗浄機
超音波又は高周波により洗浄液に入れた部品の汚れを落とす
5 エンジンクリーナ 圧縮空気と洗油の混合液を噴射させ付着した汚れを落す
6 スケール除去液 薬品と混合した水をポンプで循環させ、冷却系統のスケールを落すのに使用する
 
3)洗浄部品の保管
 きれいに洗浄した部品も保管方法が悪ければ、塵挨等が再び付着し洗浄した意味がなくなる。したがって、洗浄の完了した部品は下記事項に十分留意し、機関組立まで保管する必要がある。
(1)短時間の保管でも、ビニール等で覆う等の防塵処置を必ず行うこと。
(2)湿気の多い場所、湿度の高い時期、または長期間保管する場合には、防錆処置を行い、使用前に再洗浄して組立てること。
(3)部品は点検し易く、かつ組立時問題が起きないよう整理、整頓して並べるとともに、部品同志が接触し傷がつかないよう配慮すること。
(4)使用した部品と未使用の補用部品とは、別々に保管すること。
 
2.5 分解組立用工具および備品
 機関の整備、修理を効率よく行うためには作業に適した工具、並びに備品を準備することが大切である。分解組立に必要な工具には、標準工具と商品ごとに設定された専用工具とがある。
 
1)標準工具
 標準工具は一般工具店で販売されており、容易に入手できる工具である。一般には2・7表に示す工具が必要である。
 
2・7表 整備用工具
番号 品名 備考 番号 品名 備考
1 両口スパナ   19 センタポンチ  
2 方口スパナ   20 穴あけ用ポンチ パッキン穴あけ用
3 モンキスパナ   21 スクレーパ  
4 メガネスパナ   22 金切バサミ  
5 ボックススパナ   23 片手ハンマ  
6 ラチェットレンチ   24 大ハンマ  
7 六角レンチ   25 銅ハンマ  
8 ソケットレンチ   26 木ハンマ  
9 T形レンチ   27 プラスチックハンマ  
10 倍力レンチ   28 ギヤプーラ  
11 オイルフィルタレンチ   29 タップ  
12 ドライバ (−)(+)大小 30 ダイス  
13 ショックドライバ   31 タガネ  
14 ペンチ   32 パイプレンチ  
15 ラジオペンチ   33 モンキレンチ  
16 ニッパ   34 サークリッププライヤ 内・外用
17 プライヤ   35 ピストン挿入工具 大・中・小
18 組ヤスリ   36 ピストンリング挿入工具 大・中・小
 
2)専用工具
 機関の整備、修理作業の大半は標準工具で実施できるが、特殊機構を採用している個所等はメーカの指定した専用工具以外では整備できないことがある。この種の部分を専用工具を使用せずに整備すると、完全な整備ができず故障の原因となる。整備、修理に当っては、事前に専用工具の必要の有無を確認し、必要な場合は事前に取り寄せる必要がある。専用工具としては2・8表のようなものがある。
 
2・8表 整備用専門工具
番号 品名 備考
1 過給機、分解工具 メーカ、形式ごとに必要
2 減速逆転機
分解工具
メーカ、形式ごとに必要
3 シリンダライナ
脱着工具
シリンダライナの内径ごとに異なる
4 ピストン挿入工具、
ピストンリング挿入工具
ピストン径ごとに専用のものと一定の範囲で兼用のものとがある
ピストン径により数種類必要
5 油圧締付工具
油圧ばめ工具
締付トルクの高いボルト、ナットの締付用
油圧ばめされた歯車や軸継手の分解組立に必要
6 機関専用工具 燃料弁抜出し工具、燃料ポンプ吐出弁抜出し工具、専用スパナ、ボックス等
7 ピストン加熱機 アルミピストンのピストンピン脱着用
8 バルブシートカッタ 省力化
9 バルブシートグラインダ 省力化
10 オイル交換器 省力化
 
3)整備用備品
 機関の整備、修理には工具以外に、2・9表に示す備品を準備し、正しい手順で効率のよい整備をする必要がある。
 
2・9表 整備用備品
  品名 用途・その他
1 ピストン加熱機 アルミピストンのピストンピン脱着用に使用
2 電気ヒータ 同上、加熱用
3 オイルポンプ 機関、クラッチ等のオイル吸出用、オイルポンプとモータをセットしたものが使用される
4 グリスガン モータ駆動部等のグリスアップに使用
5 ワイヤブラシ 掃除用
6 毛ブラシ 掃除用
7 ガスバーナ 銅パイプ、銅パッキンの焼なまし等
8 洗皿 部品の洗浄時に洗油を入れて洗浄する
9 液体パッキンセット 金属面間の接合の場合、水等の漏洩防止の為、シートパッキンに、液体パッキンを塗布して、金属面間に入れる
10 Oリングセット 液体の漏洩を防ぐ為ゴム、シリコン等で出来たOリングを入れる
 
2.6 部品の在庫管理
 船主が評価するサービスの善し悪しは、技術員(整備士)の対応と部品供給で決まる。すなわち整備または修理の依頼があった時、技術員の対応ができても、部品供給が遅ければ船主の評価は悪くなる。部品の在庫を増せば、充足率はよくなるが、これは経営面からはよいとはいえない。在庫量を少なくし、部品供給をよくすることが最善の方策である。そのためにはメンテナンス部品は扱い機種と扱い台数及び過去の実績をもとに、在庫量と発注基準を決め管理する必要がある。また、定期的な整備に必要な部品は、船主ごとに、次回整備時期に合わせ、前回の部品検査データ及び機関履歴簿を参考にして、必要部品の一覧表を作成し、事前に発注し、準備しておくことが望ましい。







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