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6)ヤンマーアクティブ形排気消音装置
ヤンマーディーゼル株式会社
 
1. はじめに
 船内居住環境については以前より機関の防振支持、吸遮音・制振材などの防音材料、ハイスキュードプロペラなどが採用され改善効果を上げてきている。
 一方、船舶の離着岸時や停泊中における港湾周辺への環境影響については、その主要音源が機関の排気音であることから、改善を図るには極めて大形の排気消音器の搭載が必要で、スペース確保が困難なことから長年の課題とされてきた。
 当社では数年前よりこの課題に取り組み、船内に設置可能な小形・高性能アクティブ形排気消音装置の研究開発(末尾参考文献参照)を実施し、平成10年5月竣工の水産庁海洋調査船「照洋丸」に搭載され、「ブリッジや船外で格段に静かになった」と高い評価をいただいた。
 以下、今後の低騒音船参考資料として、ヤンマーアクティブ形排気消音装置について概要を説明する。
 
照洋丸(水産庁)
 
2. 排気消音器の種類と特性
 消音器にはパッシブ(受動)形とアクティブ(能動)形とがある。
 パッシブ形消音器は従来から一般に用いられており、消音しようとする音波(1次音)自体の反射、干渉、吸収作用を利用して消音するもので、排気消音器としては膨張形、共鳴形、吸音形を組合せ、全体として効率よく排気音を消音するよう構成されている。
 しかしながら、より大きな消音効果を得るには必要消音特性の最大値が増大し、さらにより低い周波数まで消音しなければならず、消音器容積の増大や圧損を考慮した多段接続が必要となり、極めて大形の消音器となる問題がある。
 一方、アクティブ形消音器(一般にはANC:Active Noise Cancellation)は図1のとおり、干渉音波(2次音)を回転パルス信号や排気音圧信号などの電気信号をもとに生成し、増幅してスピーカから放射する方式であるため、さほど大形にならないメリットがある。しかしながら、方式にもよるが一般に下記の制約がある。
・高周波音は排気管内で一様な音波でなくなる為、消音効果はほとんど期待できない。
・干渉部では排気音と逆位相で同一振幅の音圧を発生させなければならないため、スピーカ放射音圧が不足すると消音効果が悪化、さらには消音不可能となる。
・電源が必要である。
(拡大画面:18KB)
図−1 ANCの原理と基本構成







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