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(3)自然的特性
ア 気象
 本村は、夏期は沿岸部に比べてしのぎやすく、冬期は寒さが厳しい。ただし、フェーン現象により、最高気温の極地は高い値を示す。
 宮崎県は、日本有数の多雨地域であるが、村の年降水量も、大河内で3,455ミリと多く、県内第2位の値となっている。特に6月から8月にかけては、梅雨前線と台風の影響で降水量が多く、上椎葉で平均450ミリ以上、大河内で平均600ミリ以上の降水がある。
 また、本村は山間部なため、沿岸部に比べると日照時間が短い。
 
図表1−2 年間雨量及び気温(平成11〜13年、3年平均値)
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(注)
資料:
気温観測地:間柏原発電所、雨量観測地:上椎葉
資料:
気象庁アメダス月別値より作成
 
図表1−3 主な気象現象
台風 上陸回数は平均年2回だが、台風の影響で前線が長く停滞し、大雨を降らせ、集中豪雨になる場合も多い。これによる土砂災害で道路や河川の寸断、住宅や農地への被害も発生している。
11月から4月上旬に発生し、農作物へ被害をもたらすことがある。
降雪 12月から3月にかけて見られ、降雪日数は上椎葉で12日、大河内で20日となっている。また、冬季は道路の凍結により交通規制が敷かれることもある。
 
イ 地形
 村の面積の96%は山林で、1,000mを越える山が62峰、内1,500mを越える山が18峰あり、九州中央山地の主要部を形成している。
 村の西側の熊本県境には、国見岳(1,739m、県内第2位)を最高峰とする、1,500mから1,700m級の山々が連なっている。南部は市房山(1,721m、県内第3位)などの山々が米良山地へと続き、北部には、霧立越の向坂山(1,684m)、白岩山(1,646m)、扇山(1,661m)などが南北に連なっている。
 村内で最も標高の高い国見岳山頂(1,739m)と、最も低い耳川沿岸の佐土の谷(236m)との高低差は約1,500mあり、上椎葉地区にある村役場(380m)とも1,300m以上の高低差がある。
 
図表1−4 椎葉村の山地・河川
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資料:椎葉村「椎葉村史」
 
ウ 河川
 本村は、太平洋に注ぐ3つの河川の源流地帯で、村の中央を耳川が東西に流れ、南部には一ツ瀬川、南東部には小丸川が流れている。
 山地が北東〜南西方向に走行しているのに対し、河川はこれとは逆の南東方向に向かっており、山地を分断・浸食したため、険しいV字渓谷を形成している。
 これらの河川により供給される豊富な水を利用して、上椎葉ダム、岩屋戸ダムなどの水力発電所が設けられ、日向椎葉湖などのダム湖を形成している。
 
エ 植物
 村の西北部の椎矢峠、西部の御池、南東部の大河内一帯には、落葉広葉樹の原生林が広がっており、その一部は、九州大学の演習林としても利用されている。
 村の山林の約75%、約40,000haは民有林であり、その約6割は人工林で、多くはスギやヒノキなどの針葉樹となっている。一方、民有林の4割近くが天然林で、その多くはクヌギを中心とした広葉樹となっている。
 村内には巨木がいくつかみられ、八村スギ、大久保のヒノキは国の天然記念物に、松尾大イチョウは県の天然記念物に、それぞれ指定されている。
 村の北部の扇山や白岩山などには、山地独特の植物相を形成している。椎矢峠や御池の原生林、国見岳、白岩山、扇山、日向椎葉湖を含む地域、及び、南部の市房山、石堂山を含む地域は、九州中央山地国定公園に指定されている。
 
図表1−5 民有林の内訳
資料:椎葉村
 
図表1−6 植物相の形成状況
区分 植物相
扇山 山頂付近の4haに及ぶツクシシャクナゲの群生地が広がる。
白岩山 九州で最も標高の高い石灰岩峰で、その地形と地質により森の中では生息できないイワギクやホタルサイコなどの珍しい植物群落が形成されている。これらは、県指定天然記念物として保存されている。
資料:椎葉村
 
オ 動物
 村内の森には、キュウシュウノウサギ、ニホンリス、キュウシュウムササビ、ヤマネなど、人々に親しまれる動物がみられるほか、ニホンカモシカやニホンイノシシなど、比較的大型な動物も生息している。
 ニホンカモシカは、国見岳、市房山周辺に多く生息している。萱原山(大河内地区)でもカモシカの生息が確認されている。
 村内の渓流や湖には淡水魚が生息しており、渓流には地元では「エノハ」と呼ばれるヤマメや、サクラマスなどが、日向椎葉湖にはコイやヘラブナなどがみられる。
 
図表1−7 主な植物の分布
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