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(3)連携・協働メニューを充実、強化していくために
(1)連携・協働に取り組むための地域の環境(気運)づくり
以上のような連携・協働が考えられるメニューを提示してきたが、それを具体的に推進していくためには、連携に取り組もうとする意思の表明が必要であり、またそれは個別の組織による単独のものではなく、関係する組識相互の合意によって行われる必要がある。
連携・協働メニューと同様の形で、環境(気運)づくりに関する内容も提示していくが、それを実施するタイミングやその時に考慮される事業内容の優先度により、どの内容をどの順序によって行っていくかが変るものであり、タイミングと進めようとする事業内容を 整理し、相互の意思を明確かつ確実な形でまとめることが重要である。
 
○首長と大学責任者による包括的な協定の締結
○情報交流の拡大による必要な事案確認と意思の統合化
○大学との共同研究やイベントの開催による交流機会の拡大
○市報による大学情報の提供や大学内での市情報の提供
○授業計画作成時における関係機関との情報交換や協議
 
(2)進携・協働を促進していくための継続的な取組
連携・協働に取り組もうとする地域の環境(気運)が生まれ、育っていく中で、さらにそれを継続的に推進していくためには、連携拡充のスタート時点よりも多くの努力を積み重ねていかなければならない。
連携・協働のスタート時は、お祭り的なにぎわいや高揚があり、ある段階までは円滑な事業を行うことが可能であるが、事業の追加などがなくなってくるとどうしてもマンネリになって、連携・協働が形だけのものになってしまうことも過去の事例にみられる内容である。
このような事態を避け、常に新たな課題をみつけ出しながら、相互が協力した連携・協働を進めていくためには、次のような方策についても当初から検討し、プログラム的にまとめておくことが重要である。
 
○新たな課題が発生した場合の追加的な協定の締結
○行政と大学のトップや部門責任者による定期的な懇談会の開催
○相互の事務局明確化による窓口の統一(情報交流の一本化)
○関係部所による連携・協働課題の検討組織の創設
○モデル的な事業の試行や市民参加のシステムづくり
 
(4)推進にあたっての留意点
(1)県構想・計画との連携・協働をさらに強化していく
 県の生涯学習推進計画「ゆうゆういばらき生きがいプラン」は、生涯学習の推進に関する全県を対象とした計画であるが、本研究の主題である高等教育機関との連携・協働にも多くのメニューとなる要素があり、日立市及び周辺圏域の生涯学習環境の向上につながる施策について、積極的に誘導・連携・協働を図っていくことが求められる。
 なお、県の「ゆうゆういばらき生きがいプラン」の概要と、その中での誘導・連携・協働の可能性などについては、資料集にまとめた。
 
(2)圏域内外の大学との連携・協働組織化も選択肢として確保しておく(再掲)
 特に市内大学などが提供する生涯学習機能に関しては、県北の中核都市としての機能を発揮・充実させていくため、単に周辺自治体から構成する日立市圏域だけではなく、さらに広い利用圏域を想定したメニュー内容や提供人材の確保、圏域内及び圏域外の大学などとの連携・協働、あるいはコンソーシアム的な組織の設立といった戦略なども想定しておくことが求められる。
 
(3)既存資源の活用と新たな資源掘り起こしの仕組み(再掲)
 連携・協働の推進にあたっては、従来からの人材の蓄積を十分に活用していくとともに、新しい視点を持って各種の専門性や技能を持つ有識者や技能者を発掘していくということも同時に求められてくる。この両輪が十分な機能を発揮することにより、大学と地域の総合的な連携・協働となるものであって、これを通して豊かな地域力が蓄えられ、新たな方策を生み、創造していく大きな流れとなり、市民それぞれが自分の能力を生かした、自らまちづくりに主体的に参加する地域活性化の活動を生み、その継続を担保していくことになる。
 
3. まとめ
 以上のように連携・協働のメニューやそのスタート、継続的に実施していく手法などをまとめてきたが、大学にとっても地域にとっても必要な部分で連携・協働を行っていかなくては、社会変化の激しい時代において課題を解決することが今後さらに難しくなっていくものと思われる。
 基本は、それぞれの持つ特性や機能を十分に生かし合いながら、得意とする分野を中心に活動をしていくことであり、ワークシェアリング的な発想で、最小の力により最大の効果を生むように、それぞれの力を引き出し協力関係を育てていかなくてはならない。
 現状の分担や目にみえる機能にこだわるのではなく、解決が必要な課題は何か、それはどこの組織が行うのが一番適切で効果が高いか、どの組織や機能の組み合わせが早く解決できるか、そのような判断のもとに連携・協働を組み立てていくことが大切な視点である。
 最終的にはメニューやシステムの問題よりも、それぞれの組織のトップや担当者の意気込みが全てを決定づけるものであり、その意思を生かし育てていくこととともに、担当者が代っても組織として事業継続していく組織総体の合意形成が重要である。







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